『ウィッチャー』原作者が、ゲームを手がけるCDPRに約18億円のロイヤリティを要求。今までの支払いは不当に低いとして


ポーランドのパブリッシャーCD PROJEKT RED(以下、CDPR)は、ワルシャワ証券取引所を通じて、『The Witcher(以下、ウィッチャー)』シリーズの原作者であるAndrzej Sapkowski氏の弁護士から、同シリーズのさらなるロイヤリティを要求されていることを明かした。EUの法的規則に基づき情報を開示したとのこと。CDPRは、同氏と契約を結び『ウィッチャー』シリーズのゲーム化を手がけ、大きな成功を収めている。Sapkowski氏は、このゲームのロイヤリティをさらに要求しているわけだ。

『ウィッチャー』シリーズは、2017年3月時点で累計販売本数が2500万本を超える人気タイトル。原作者には大きな利益が転がり込んでいると見られがちであるが、Sapkowski氏は『ウィッチャー』が大きな成功を収めるとは予期しておらず、CDPRと契約を結ぶ際、利益の割合からのロイヤリティではなく即金の報酬を求めていたという失敗談が、本人によって語られている(Eurogamer)。前CDPRのCEOであるSebastian Zieliński氏によると、その額は1万5000ポーランド・ズロチと2万ポーランド・ズロチの2回払いで、合計3万5000ポーランド・ズロチ。つまり、たったの100万円程度であったとされている(DualShockers)。2016年3月時点で、シリーズの総収益が10億ポーランド・ズロチ(約284億円)であったことを考えると、あまりにも痛すぎる判断だったといえる。このロイヤリティの低さに耐えきれなくなったのか、ついにCDPRを相手取り追加報酬の要求を開始した。

まずSapkowski氏は、CDPRとは契約を結んでいるとしながらも、そのロイヤリティはあまりにも低すぎると批判。ヨーロッパにおける著作権及び関連する権利に関する法律の44条に基づき、さらなる請求ができることを主張している。複数の判例をあげ、著作者の得られる利益が通常の半分以下の場合、補償金を請求できるとしSapkowski氏のケースはそれにまさしくあてはまるとも主張した。一般的に原作者に支払われるロイヤリティは5~15%程度であるとしながら、今回のケースでは低く見積もっても6%分の補償が必要であり、『ウィッチャー3』の本編と拡張パックの売上込みで計算しても、60,000,000.00 PLN(約18億円)を得られる権利があるとしている。

さらにSapkowski氏は、契約書を見直してみると、氏とCDPRの契約はゲームシリーズの第一作のみ有効であったとし、その後に続く関連作品の販売は不当なものであると批判している。Sapkowski氏は自身の要求が控えめであることが強調しており、さらにCDPRとは友好な関係を続けていきたいとも語っている。今回の話がまとまらなかった場合は、上場しているCDPRにも悪いイメージがつくだろうとの警告じみたメッセージもこめている。

もう片方のCDPRはというと、結んでいた契約は正当なものであり、氏の意見や見積額は根拠がないと退ける。一方で、CDPRは原作者であるSapkowski氏と友好的な関係を維持していきたいとも主張。良好な関係を築けていけるように尽力していくと誓っている。

前述したように、Sapkowski氏の『ウィッチャー』シリーズのロイヤリティをめぐる失敗談は、ファンにとって多く知れ渡っていたが、原作者としてさらなる利益を得るために動き出した形だ。ゲームの『ウィッチャー』シリーズの成功が、原作小説のさらなる成功を呼び込み、Netflixによるドラマ化(小説ベース)を呼び込んだことを踏まえると、いまでは氏に潤沢な利益が転がり込んでいると推測できる。ただ、即金を優先した自身の判断だったとはいえ、どれだけゲームが売れようとも、ロイヤリティが入らないことにはフラストレーションがたまるのかもしれない。CDPRとしても、柱ともいえるシリーズの原作者と泥沼化していくことは避けたいはず。『ウィッチャー』をめぐる乱闘は、どのように収束していくのだろうか。