スカンジナビアの海を旅する。ひげもじゃ3兄弟のふしぎな冒険『Burly Men at Sea』リリース


夫婦二人のゲームデベロッパーBrain&Brainは、民話風アドベンチャー『Burly Men at Sea』をリリースした。対象プラットフォームはPC(Steam/Humble Store/itch.io)およびAndroid/iOS

本作では20世紀初頭のスカンジナビアを舞台に、絵本・民話風のショートストーリーがミニマルなアートスタイルで描かれる。主人公は「しっかり屋」「せっかち屋」「いさまし屋」と名づけられた、ひげもじゃ漁師の3兄弟。ある日、3人は網にかかった海図入りのボトルをひきあげる。海図に示されているのは、漁師が住む島と周辺の海だけ。これをきっかけに3人は航海をはじめ、フォークロアの世界から飛び出したような未知の生命体と遭遇していく。性格の異なる3兄弟のユーモラスなやりとりが冒険に愛らしさを加えてくれる。

ニンフとの談話
ニンフとの談話

航海中、いくつかの分岐点によりストーリーは枝分かれしていく。1回の航海は10分ほど。モバイル版が発売されていることもあり、スキマ時間を使ったり、ベッドで寝る前にリラックスしながらプレイするのに向いているだろう。とくにスカンジナビアの海をイメージしたという音楽は、就寝前に安らぎのひとときを与えてくれる。ときには陽気な船乗りのような曲が流れ、ちいさな笑みを誘う。ゲーム中の効果音は多くが口真似になっており、コーヒーを注ぐ音、鍛冶屋が鉄を叩く「カチン」という音、それにカモメの鳴き声まで人の声で演じている。とにかくゆるく、肩の力を抜いて楽しめる作品だ。日本語訳もすばらしく、絵本や寓話の世界観を維持している。

 

夫婦ならではの愛らしさ

かわいらしいアートワークは、図形を点で結ばれた線であらわすベクタグラフィックスで描かれたもの。炎も半円で表現したりと、ミニマルなデザインにおさえているが、画面上で何が起きているか一目でわかるよう工夫されている。絵はグラフィックデザイナーであるBrooke Condolora氏がスカンジナビアの漁村、民話、絵本をサンプルにしたという。パステルカラーで統一されたパレットも、現代の北欧デザインやイラストレーションから着想を得ている。また、民話のような雰囲気を出すため、プレイヤーはキャラクターを直接操作するのではなく、語り部のポジションとして画面をドラッグ&クリックで動かしていく。

炎すらデフォルメ
炎すらデフォルメ

Brooke Condolora氏の夫David Condolora氏は、もとはPixar Animation StudiosやWalt Disney Animation Studiosで映像エディターだった人物。本作ではプログラミングとサウンドデザインを担当している。Condolora夫妻はひとつの場所に定住しないノマド生活を送り、パート働きで農業をしながらゲームを開発している。未知の海へ航海に出るひげもじゃ3兄弟と、ふたりのライフスタイルにはどこかシンクロするものを感じる。David Condolora氏いわく、本作で描かれるのは「冒険のための冒険」。ゲーム内でも「価値ある冒険は未知から始まるものだ」というセリフがふくまれているように、明確な目的地が存在しないことで生じるワクワク感を大事にしている。

夫婦で開発したゲームといえば『Driftmoon』や、当サイトでも紹介した『Missileman』などかわいらしい作風のものが目立つ。本作も生活を共にする2人ならではの愛情がこもった作品といえるだろう。Condolora夫妻の前作『Doggins』もAndroid/iOS/Kindle Fire向けに販売中だ。