格闘ゲームなカードゲームがさらに逆輸入され格闘ゲームへ、『Fantasy Strike』の正式クラウドファンディングが開始


自身が格闘ゲーマーであり『Super Street FighterⅡturbo HD Remix』のリードデザイナーでもあるDavid Sirlin氏が製作した、格闘ゲームのエッセンスを詰め込んだ対戦格闘風カードゲーム『Yomi』。その『Yomi』をさらに格闘ゲームへと逆輸入した『Fantasy Strike』のトレイラーが公開された。公式サイト上では基礎となるゲームシステム、基本理念などが発表。すでに始まっている「Patreon」上でのクラウドファンディングの幅広い支援を求めている。

https://youtu.be/W9JVjsft0Dg

そもそも『Yomi』は、「格闘ゲーム風カードゲーム」というよりは、むしろ「格闘ゲームをカードゲームでどこまで表現しきれるか」に挑戦したゲームといった方がより正確だろう。基本カードが「打撃」「投げ」「ガード」の基本的な三すくみ+「回避」の4種類あり、たとえば「打撃」が「打撃」でかち合った場合はカードごとに設定された数字(発生フレーム)の小さい方が勝つ。打撃で勝った場合、そこにコンボ始動技の属性があればコンボ攻撃の開始となる。無論「打撃」は「投げ」に一方的に勝つし、「投げ」は「ガード」に一方的に勝つ。よく例えられる格闘ゲームのジャンケンをそのままカードゲームに輸入したゲームである。『Yomi』が日本語の「読み」をそのまま使っている所からもそのマインドは感じ取れる。現在は実際のカード版だけでなくSteam版、iOS版がリリースされており、一部で熱狂的な人気を保っている。

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『Yomi』と『Fantasy Strike』

そしてその『Yomi』のキャラクターを本物の格闘ゲームに逆輸入したのが『Fantasy Strike』だ。現在はプリアルファバージョンが出資者向けに稼動しており、今回そのゲームシステムも発表された。本ゲームの根幹を成すコンセプトは、「とにかく操作の煩雑さを可能な限り削ぎ落とすことによって、プレイヤーが読み合いに集中することを容易にする」ことである。

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「Fantasy Strike」の操作

上記が「Fantasy Strike」の操作のすべてである。まず移動は左右しかなく、しゃがみ状態は存在しない。ジャンプはジャンプボタンが設定されており、通常攻撃はAボタン。投げは方向+Aボタン。BボタンとCボタンはそれぞれ必殺技が各キャラクターごとに設定されており、BとCの同時押しで超必殺技の発動となる。あまりのシンプルさに格闘ゲームとして成立するのか疑問の余地はあるが、「余計なものを削ぎ落とす」という基本コンセプトは非常によく表れている。

ただ、既存の格闘ゲームの約束事から大きく逸脱した挑戦的なシステムも搭載されている。
「Yomi Counter」と名づけられたこのシステムのもっともユニークな点は、格闘ゲームの攻防の中に「何もしない」という選択肢を与えるという部分だろう。「何もしない」状態が敵の「投げ」に対して「強力な投げ返し」として機能する。簡単にいえば敵が自分を投げようとした場合に、まったくボタンを触っていない状態であるなら自動的にカウンター技が発動する。これは、ほとんどの格闘ゲームで硬直した相手に対して非常に有効な攻撃手段である「投げ」に強いリスクを与えることによって、ゲーム中の各選択肢のリスクリターンをより均等にしていく新しい試みであり、大変興味深い。しかし、対戦中にボタンを一切触らないというのは逆に大変に勇気の必要な選択でもあり、それこそ相手の行動を「読み」合うことをそのゲーム体験の根幹におく「格闘ゲーム」というジャンルの真骨頂ともいえる新しいシステムといえるだろう。

「シンプルな操作性による奥深い攻防」という思想は、「Radiant Entertainment」の『Rising Thunder』も近いコンセプトで制作されていたが、スタジオが後にRiot Gamesにより買収され実現しなかった(参考記事)。本格的なクラウドファンディングが始まった『Fantasy Strike』が今後どう本リリースにこぎつけるのか、その今後を注視したい。

『Rising Thunder』
『Rising Thunder』

なお、オフィシャルサイトでは何故クラウドファンディングに「Kickstarter」ではなく月額課金型ファンディングサービス「Patreon」を選んだのかという内容のコメントもある。そこでは「開発者側で内容のゴールを決めてその約束を果たすより、長期間の開発の中でユーザーとの有機的な繋がりを形成し、フォーラムからのフィードバックを開発の各段階において落とし込んでいった方がより質が高く、満足度の高いゲーム開発が可能である」と伝えられている。確かに月額の課金で開発中のゲームをプレイ可能、フォーラムで内容を議論できる「Patreon」のサービスは、格闘ゲームのような「ゲームバランス」あるいは「キャラクターバランス」がより重視されるタイプのゲームには向いている。「出資者がそのままアルファテスターとして開発に参加する」と、言葉だけで捉えれば開発者と出資者の蜜月を予感させるものではあるが、はたしてそれは機能するのか。格闘ゲームのクラウドファンディングの形式のケーススタディとしても興味深い。

『Fantasy Strike』は発売日は未定だが、現在のところPlaystation4でのリリース予定が発表されており、日本語にも対応する予定とのことだ。

はたして『Fantasy Strike』はどのようなゲームとなるのか
『Fantasy Strike』