Crytekの次なる狙いは映画産業か。次世代映像エンジン「Film Engine」を発表、CryENGINEのノウハウを生かしたツールを目指す

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『Crysis』シリーズなどを手がけたCrytekは、新たに映像制作ツールを開発する会社を設立するとともに、映像エンジンを発表した。会社名と映像エンジンの名前はともに「Film Engine」となる。Film Engineは主に映像作品の制作をサポートするツールとして開発されているようだ。

Film Engineは、Crytekの誇るグラフィックエンジン「CryENGINE」をベースとしており、リアルタイム描写速度など同社がこれまで研究してきたゲームエンジン技術が遺憾なく発揮されるのだという。ひとつのカットシーンのみならず作品制作を最初から最後までサポートし、“より豊か”にかつ“より効率的に”するようなツールを目指して作られている。対象も大きなスタジオのみならず小さなスタジオでも使用できるツールになるといい、コマーシャルやテレビ番組、映画、アニメやVRなど多岐にわたっての使用を想定して開発されている。また、モーションキャプチャーやカメラトラッキングといった分野もカバーしているようだ。

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Crytekは突然映像産業に参入したというわけではない。Crytekではゲームエンジンのみならず、もともと映像制作にかんする研究も長く続けられていた。すでに「Crytek’s Cinebox」という名のソフトウェアが開発されており、業界でも一定の評価を集め「猿の惑星: 新世紀」や「メイズ・ランナー」シリーズといった実際の映画でも使用されている。しかし、開発チームは制作者のためにツールを最適化する必要性を感じており、同社がゲーム分野へ専念する流れになったため、映像制作のチームのために新たな会社を設立。それにあわせてCineboxをより実用的にするために作られた新たなる映像エンジンがFilm Engineというわけだ。

開発スタッフも映画に用いられる映像処理とゲームの処理についての親和性に手応えを感じていたようでCryENGINEのクリエイティブディレクターである Frank Vitz氏はその想いを語っている。

“CryENGINEは描写速度、スケーラビリティ、性能、3Dレンダリングのパワーといった点から映像作品を作る上での骨組みに適していることは証明してきた。リアルタイム処理は次世代のデジタルコンテンツの製作の核になりつつある。そういった分野に優れたCryENGINEが新たな領域を切り開くことに興奮しているよ。”

このFilm Engineの中でも特に力が入っているのがVRだ。VR制作にかんしてもさまざまな点でサポートを用意しているといい、YouTubeで公開しているCodename: Sky Harborのような映像をつくり上げることも可能であるとアピールしている。Crytekは3月にもCryENGINE Vを発表しており、その中でもVRへの特化を公言していた。映像とゲームで異なる点はあれど、同社のVRへの並々ならぬ意欲を感じる。

これらのほかにもCrytekはAmazonと提携した無料ゲームエンジンLumberyardを2月に発表している。こういった精力的な動きを見せる同社だが、今回の映像エンジンへの傾倒に対し海外メディアは「double-down(ギャンブルの倍賭け)」と揶揄しており、大きなリスクを負ったチャレンジを心配する声も少なくない。2014年には財政難によってIPの売却などがおこなわれた過去もあるが、新たなビジネスは成功するのだろうか。

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