『リーグ・オブ・レジェンド』課金コンテンツによる大会賞金総額上乗せ制度を導入。プレイヤーとプロチームを結びつけつつ収益を確保する新施策

今年の世界大会を記念して限定販売される「Championship Zed(王者ゼド)」スキン。

【UPDATE 2016/10/11 12:00】 Riot Gamesは10月10日、世界大会グループステージ終了後に現時点の賞金総額を発表。当初の賞金総額213万ドルに「王者ゼド」および「チャンピオンシップワード」の売り上げの25%を加算し、現在は414万5000ドル(約4億2700万円)まで上がっているとした。王者ゼドとチャンピオンシップワードの販売期間はまだ続くため、最終的な賞金総額はまだ確定していない。決勝戦前日に再度、賞金総額が更新される予定。同時に賞金配分も発表され、優勝チームは最終的な賞金総額の40%を手にすることが明らかになった。

 

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『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』を開発・運営するRiot Gamesは9月23日、今月末から開催される世界大会より、国際大会の賞金総額に対してゲーム内課金コンテンツの収益をプラスする制度の導入を発表した。世界大会の優勝チームをテーマに作られる特別スキンについても、今後は売上の一部をチームに還元する計画であるという。

発表によれば、世界大会の時期になると2012年以来毎年発売されている「Championship(王者)」スキンおよび「Championship Ward(チャンピオンシップワード)」スキンの収益から25%を、世界大会の賞金総額に加えるとのこと。2012年以降、世界大会の総賞金額は約200万ドルからほとんど変わらず、優勝チームはその中から約50%の100万ドルを獲得していた。現時点で発表されている今年の世界大会の総賞金額は213万ドルと例年どおり。ただし昨年も今年と同様にChampionship skinの収益の25%を総賞金額に加えていた場合には、総賞金額は2倍になっていたというから、スキンの収益の莫大さがうかがえる。

スキンはゲーム内の外見を変更する課金コンテンツであり、チャンピオンのスキンはプレイヤーが操るキャラクターの外見を、ワードスキンはマップ上の視界を確保するアイテム「ワード」の見た目を変更する。スキンはキャラクターやアイテムの性能を変えるものではないが、基本プレイ無料の『LoL』はこのような外見カスタマイズ課金アイテムによって収益を上げている。今年のChampionship skinとしては「Championship Zed(王者ゼド)」が既に予告されており、過去に販売されたシリーズスキンの再販と合わせて、期間限定販売が行われる見込みだ。

世界大会だけでなく、春夏間のオフシーズンに行われる国際大会「Mid-Season Invitational」においても、同様の総賞金額アップが行われるとのこと。こちらには、毎年のシーズン開幕時に限定販売される「Challenger(チャレンジャー)」スキンの収益の25%が充てられる。

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今年の1月には「チャレンジャーニダリー」、昨年の1月には「チャレンジャーアーリ」がそれぞれ期間限定販売された。

また、世界大会を優勝したチームをテーマとして毎年作られている「Team Championship skin」についても、今年以降は発売時にセット販売された収益の25%を、題材となった選手やチーム、彼らを育てた地域リーグに還元すると発表されている。過去の世界大会優勝記念スキンについても、同様に収益の還元が行われるようだ。世界大会優勝記念スキンは、優勝チームの選手に取材し、選手の細かな希望なども採用して作られる特別なもののため、逆にこれまで収益の還元がなかったのが不思議なくらいである。

さらに来年からは、ゲーム内でチームのプロモーションとなるアイテムをさらに販売するとも述べられている。これまでゲーム内課金コンテンツを用いたプロチームへの収益還元は、チームロゴをあしらったサモナーアイコン(ゲーム内プロフィールアイコン)が競技シーズン開始時に限定販売されるのみだったが、さらなる拡充がなされるようだ。このチームロゴや地域リーグロゴのサモナーアイコンについても収益還元率を増やすとのこと。こうしたプロモーションアイテムの販売は2017年より行われるが、初めてのことでありチーム間に大きな収益の差が生じる可能性があるため、地域によって最低還元額が定められる。例として上げられているのはEU LCSで、1シーズンにフル参加した場合の最低還元額は10万ユーロとなり、この半分は選手の給料として支払うよう定められているとのことである。

賞金クラウドファンディングの世界

今回『LoL』が導入した大会賞金総額のクラウドファンディングは、e-Sportsの世界では珍しいことではない。Valve社が運営する『Dota 2』の世界大会では、大会の観戦チケットや特定のゲーム内課金アイテムを購入することで、収益の一部が賞金総額が上乗せされるシステムを以前から採用している。今年の世界大会「The International 2016」では賞金総額が2000万ドルを突破した。まぎれもなく世界最高額のe-Sportsシーンであろう。

一方で賞金クラウドファンディングの活用法を模索する動きもある。マルチプラットフォームで展開するMOBAタイトル『SMITE』は、2015年の世界大会で同様のクラウドファンディングを実施し、賞金総額が216万ドル超にまで達した。そのうち半分である130万ドルが優勝チームのものとなったわけだが、大会後に開発運営会社Hi-Rez Studiosは『SMITE』プロシーン関係者にヒアリングを実施。このような高額賞金が一括で手に入る大会が存在することはスポーツとして健全な状況ではなく、長期的視野からシーンの発展を目指すためにはできる限り多くのプレイヤーが競技シーンにいられることが重要だとし、2016年世界大会の賞金総額を上限100万ドルにすると発表している。賞金クラウドファンディングは続けるものの、それによって増えた賞金額を複数の大会に分散し、競技シーンの全体的な活性化を狙う戦略だ。

『LoL』の世界大会でも、発表にあるとおり昨年同様のスキン収益が賞金総額にプラスされれば、その額は400万ドルを超える。『Dota 2』にはおよばないまでも『SMITE』超えは確実であり、優勝チームへの賞金は総額の半分である200万ドルと予想される。十分以上に高額な賞金大会といえよう。

 

新施策はプロチームの救世主となるか?

Riot Games創業者のひとりMarc “Tryndamere” Merill氏と、北米古参プロチームオーナーのAndy “Reginald” Dinh氏との間の議論に端を発する「Riot Gamesはプロチームに競技シーンで得た利益を還元すべき」という論調はつい先月に巻き起こったものであり、記憶に新しい。業界人の反応からは、プロチームと運営会社の関わりについてさまざまな面を見ることができる。

元LCSチームオーナーMonteCristo氏は、今回の施策を「最初の一歩」と評価。賞金クラウドファンディングについて、限られた大会の優勝チームがほとんどの収益を持っていってしまうのではなく、全てのプロチームに利益を配分すべきだと発言している。また彼は、今回の施策が公の場での検討を経ないまま発表されたことについても非難している。

ゲーム内課金コンテンツの収益性に疑問を呈するのは、e-Sports専門の弁護士であるBryce Blum氏。ゲーム内コンテンツである以上、チームにとっての収益はRiot Gamesの取り分を超えることはないだろう。

EU LCS参加チーム「FC Schalke 04 Esports」に所属するMarcel “dexter” Feldkamp選手は、新施策によってプロ選手とプロチームがかえって損害を受ける可能性を指摘する。新施策はチーム運営の助けになるものではなく、ただ「特権」を与えるのみであり、トップリーグに参加するリスクはそのままなのではないか、という問題提起だ。

賞金クラウドファンディングの導入は『LoL』競技シーンにどのような影響をおよぼすだろうか。今回の発表は今年の世界大会目前であるため、すぐに大きな影響は出ないと考えられる。だが、世界大会が終わって賞金クラウドファンディングの成果額が確定すれば、『LoL』競技シーンという巨大なパイの全容がつかめることになる。オフシーズンの選手移籍状況に影響が出るのはそれからだろう。新しいゲーム内チームプロモーションアイテムの販売も、プロチームの経営に与える影響を推測することしか現時点ではできない。Riot Gamesがプロシーンのさらなる発展を望んでいることはまちがいないが、少なくとも来年までは慎重な舵取りが要求される状況となるだろう。

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