クラウドソーシング上で「Steamの代行レビュー」が依頼される、国内のゲーム開発スタジオが関与か

【2016年2月27日 0:45】: 現在、今回の記事にて紹介したクラウドワークスの仕事依頼が非公開にされている。

先日、多種多様な仕事を依頼・検索できるクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」に、Steamタイトルのレビューゲームの紹介記事の執筆者を募集する仕事の依頼が投稿された。近年、こうしたレビューや口コミの代行依頼は、アプリ業界を筆頭にステルスマーケティング(通称、ステマ)の手法の一つとして広まりつつある。国やサービスごとに法律や規約は異なるが、Steamにおけるレビュー代行は運営元のValve Corporation(以下、Valve)が明確に禁止している。販売促進が目的の企業広告とは違い、ユーザーレビューには賛否に関係なく純粋な消費者の声が反映されることから、購入時の判断基準にする者は少なくない。ステルスマーケティングの影と口コミ代行ビジネスについて考える。

 

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依頼主は国内のゲームデベロッパーか

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今年1月、「クラウドワークス」に、「Steamでの評価レビューが行える方」という仕事依頼が投稿された。その内容は、Steamの利用経験がある人を対象に、特定のゲームに対するレビューを英語で執筆してもらうというもの。依頼主の名やレビュー対象となるゲームタイトルは伏せられているが、昨年12月にSteamでリリースされたビジュアルノベル作品『WAS -The Hourglass of Lepidoptera-』の開発元S.R.L(通称、時空調査研究所)と依頼主が様々な情報において一致している。クライアント名が、同社のTwitter公式アカウントと一致することに加えて、ホームページ制作リニューアルブログ・SNSの更新代行を依頼した過去の募集ページに、メーカーサイトとTwiterやFacebookのSNSページが記載されている。またゲームの紹介記事の仕事では、Sekai Projectの作品を紹介する記事のみが例として取り上げられているが、Steamで配信された『WAS – The Hourglass of Lepidoptera-』のパブリッシングを担当したのもSekai Projectである。なお現在、同作のSteam商品ページには16件のレビューが投稿されており、その内15件が“おすすめ”と絶賛しているが、Steamレビュー代行の依頼ページの相談・応募状況は0人のまま期限を迎えていることから、実際に代行によるレビューが投稿されたかどうかは定かではない。

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『Epic Quest of the 4 Crystals』

ValveはSteamにおけるレビュー代行による印象操作を利用規約で堅く禁止している。昨年9月、アドベンチャーゲーム『Epic Quest of the 4 Crystals』を販売するAldorlea Gamesと開発元RosePortal Gamesが、レビューを投稿する見返りとしてユーザーにゲームキーを無料で配布していた際には、明らかにSteamの規約違反に該当するとして、Valveの運営スタッフが公式フォーラムのスレッドに警告文を投稿している。どのレビューが恣意的に書かれたものなのかは断定できないため、全てのレビューが一旦削除された。こうしたステルスマーケティングは、多くの国において広告に関する法律に抵触しかねない行為とみなされている。ユーザーがメーカーから商品の提供を受けてレビューを依頼された場合、執筆者は見返りを得ていることをレビュー内に明示しなければならない。

 

商品について何も知らないエアレビューも

日本では、ステルスマーケティングは、不当景品類及び不当表示防止法第4条1項(商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの〔ママ〕)に抵触する可能性があるとされている。通常、企業広告は販売促進を目的としているため、ネガティブな情報は一切記載されない。広告と分かっているからこそ、消費者側はその事実を踏まえた上で判断できるのだ。一方で、口コミを装った代行によるレビューは、恣意的な印象操作で本来の客観性を隠蔽してしまう。背信行為として批判されるだけでなく、場合によっては不当表示とみなされてしまうというわけだ。そのため、新聞をはじめ多くのメディアでは、企業から依頼を受けたプロモーション記事を掲載する際には、見出しに「広告」や「PR」と明記されている。

しかし、レビュー代行によって報酬を受け取るネットビジネスが、スマートフォン向けアプリの評価やウェブサイトのSEO(Search Engine Optimization=検索エンジン最適化)対策においてまかり通っているのが現実だ。実際、知識やスキルを売買できるオンラインマーケットサービス「ココナラ」には、「代行してレビューや口コミを書きます」と銘打ったスマートフォンアプリのレビュー代行業務が出品されている。特筆すべきは、商品を購入してレビューするという手間のかかる依頼は受け付けないと注記している点だ。つまり、有料アプリや商品購入依頼で追加報酬を受け取る場合を除いて、基本的にはアプリを実際に使用することなく、当たり障りのない肯定的なレビューだけを投稿していることになる。これは明らかに口コミを装った恣意的な印象操作に該当する。こうした不当表示が直ちに犯罪となることはないが、ステマを信用して商品を購入した消費者が、期待どおりの内容でなかったことを理由に損害賠償を求めた場合、民法第709条の規定に基づいて賠償義務が生じる可能性がある。

このように、レビュー代行ビジネスのみならず、芸能人を起用したブログでの口コミ偽装や、情報サイトの企画記事と見せかけた巧妙なPR記事など、国内におけるステルスマーケティングは、ゲーム業界のみならず様々な場面で横行している。報道の自由に対する意識の低さや、情報の偽装といった隠蔽体質が国際的に問題視される中、国内でも広告や宣伝のあり方についてあらためて見つめなおす必要があるのではないだろうか。AUTOMATONは現在、S.R.Lに質問状を送っており、本件に関するコメントを待っている。

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