『MGS V: TPP』発売数時間でSteamレビュー欄が“A Hideo Kojima Game”であふれる事態に、開花したメタルギアの遺伝子


本日、満を持して海外で発売日を迎えたメタルギアサーガ空白の1ページを綴る最新章『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』。国内では9月2日の正式リリースを予定しているが、SteamではすでにPC向けに解禁されており、多くのメタルギアファンが待ちに待ったゲーム体験を開始している。その反響は発売からわずか数時間で500件近いレビューが投稿されるほど顕著。レビュー一覧が“A Hideo Kojima Game”のフレーズで埋め尽くされるというアンビリバボーな現象が巻き起こっている。まさに、世界に根付いたメタルギアの遺伝子が一斉に開花した瞬間といえるだろう。

A Hideo Kojima Game

“Hideo Kojima Game”というフレーズは、小島プロダクションが手がけるメタルギアシリーズ作品にこれまで表記されてきた伝統だ。しかし、今年3月、コナミデジタルエンタテインメントにより発表された小島秀夫氏の役員解任と小島プロダクションの解体、そして将来のメタルギアフランチャイズに関する方針転換により事態は一変。それまで『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』のボックスアートに刻まれていた“Hideo Kojima Game”の表記は突如姿を消した。

メタルギアシリーズと小島監督をこよなく愛するファンが世界中で悲しみに暮れる中、一部の熱い信奉者たちはこれに反旗を翻す。オーストラリア最大手のエンターテインメント小売業者JB Hi-Fiのとある店舗は、『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』用の陳列棚に“A HIDEO KOJIMA GAME”と表記した自作バナーを設置。自分たちが販売するゲームは小島秀夫の作品であることを主張し続けた。また、表記が削除されたことを深く遺憾に思った『Goat Simulator』のゲームデザイナーは、ダウンロードコンテンツ「GoatZ」のクレジットになぜか小島監督の名前を加えるという奇行にて同氏への愛を示している。はたまた、海外メディアEurogamerにいたっては、「gamescom 2015」の会場パネルに無断で“A HIDEO KOJIMA GAME”の張り紙を残して立ち去るという暴挙に出ている。

小島秀夫というクリエイターの存在は有名人を通り越して一部では“ゴッド”と崇められるほど。彼の行く末には世界が注目しており、先月にはRiot GamesやEpic Gamesを傘下に置く中国の大企業Tencentがヘッドハントに乗り出したというが報じられた。映画プロデューサーにして監督・脚本家も務めるアメリカのクリエイターJ.J. Abrams氏に天才と言わしめる感性と創造力は、国境を越えたレジェンドといえるだろう。これまで『スナッチャー』をはじめ、『ポリスノーツ』や『ボクらの太陽』『ZONE OF THE ENDERS』シリーズを手がけゲーム業界を牽引してきたが、ファンにとってはやはり小島秀夫イコール“メタルギア”。一連の“A Hideo Kojima Game”ムーブメントと今回の出来事がそれを物語っている。

最新作『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』は、激動の時代を駆け抜けたビッグボスの軌跡を綴っている。初代スネークとして祖国への忠を貫いた彼がどのような道を歩んで第1作の主人公ソリッド・スネークと対峙するに至ったのか。空白の1ページを補完するメタルギアサーガの最新章だ。母国アメリカから出奔し、国境なき軍隊の創設へと旅立ったビッグボスの物語は、奇しくも小島監督が小島プロダクションを率いて制作する最後の作品となってしまった。しかし、彼の残したメタルギアという遺伝子は人々の心から消えることはない。今こそ、「人間は消滅しない。ぼくらは、それを語る者のなかに流れ続ける川のようなものだ。人という存在はすべて、物理的肉体であると同時に語り継がれる物語でもある」という伊藤計劃氏の言葉が最もふさわしい瞬間だろう。