アクションRPG『CrossCode』、開発者の知らぬ間にバンドルに入る。ユーザーの苦情により事態が発覚


安価なデジタルゲームを語る上で、ゲームバンドルは無視できないだろう。一定額を払えば複数のタイトルが手に入るバンドルは、通常よりもはるかに安い価格でゲームを購入でき、ユーザーの懐にとってありがたい存在だ。最大手であるHumble Bundleを中心に、いまや多くのサイトがゲームバンドルを提供している。そんなユーザーフレンドリーといわれるバンドルであるが、今回開発者の承諾なしでゲームがバンドル入りし、ユーザーをも巻き込むトラブルがあったようだ。

トラブルに巻き込まれたのはRadical Fish Gamesが開発し、Deck13 Interactiveが販売する『CrossCode』。このスーパーファミコンを彷彿とするアクションRPGは、遠い未来の架空のMMOを舞台とするSi-Fiもののようだ。発売前から期待も高く、クラウンドファンディングIndiegogoで8000ユーロを目標としていたところ、9000ユーロに到達して見事キャンペーンを成功させていた。その前評判に劣らず、懐かしくも耳に残るキャッチーなBGM、軽快なアクション、壮大なストーリーなど、どのパートも評判がよく、早期アクセス中ではあるがSteamレビューは99%好評という盤石の評価を得ている。

しかし、あるユーザーのTwitterの投稿によって、開発者はショックを受けることとなった。

 

突然のバンドル入り

“『CrossCode』はもうバンドルに入っているの?どう思えばいいかわからないよ……。そもそも、まだ正式リリースもされていないのに……。”

Twitterユーザー名MkayIndianaJones氏は、バンドルサイトBundle Starsの「Killer Bundle 6」を見て『CrossCode』がバンドル入りしていることに気付いたようだ。Killer Bundle 6では『CrossCode』のほかにも9タイトルが入っており、これらを4.9ドルで全て手に入れることができるバンドルだ。もともと『CrossCode』は19ドルというインディーゲームとしては比較的に高価な値段で販売されており、ユーザーにとってショックだったようだ。Twitterに投稿をしたユーザーは文の最後に@RadicalFishGameをつけ、開発元のRadical Fish Games公式アカウントにも内容が届くような投稿をしていた。そして、たちまちRadical Fish Games公式はこの話を聞きつけて「私達もどう思えばいいかわからない。どういう経緯でこのバンドルに入ったんだろうか。」と返信している。

どうやらこのバンドル入りの話は開発者には届いていなかったようだ。MkayIndianaJones氏はすぐさまこの返信に反応し「大体はこういうバンドル入りはパブリッシャーがするんですか?ならばDeck13 Interactiveがこの決断をしたということになりますが……」と質問をする。

そこでたまらず会話に加わってきたのは噂の渦中にあったDeck13 Interactiveの公式アカウントだ。Deck13 Interactiveはこの騒動を収束するために「やあ君たち!このバンドル入りの決定は僕らパブリッシャーがしたんだ。アーリーアクセスに加わったファンのフィードバックをする形でね!」と説明している。

この混乱はTwitterのみならずSteamコミュニティでも発生していた。Deck13 Interactiveの説明の1日後、Radical Fish Gamesの創設者のひとりFelix Klein氏はSteamコミュニティで苦しみを滲ませながら弁明した。

“Deck13 Interactiveがこのバンドル入りを決断した。彼らは事前に僕に報告していたんだけど、どうやら見逃していたようだ(今まで見逃したメールで最悪のメールだね)。Deck13 Interactiveは事細かく説明し私達を納得させてくれたよ。プロジェクトを長く運用させるために必要な判断だってね。もっともっと多くのプレイヤーに遊んでもらう必要があるんだ。”

Deck13 InteractiveがTwitterで説明してから、Radical Fish Gamesの間にどのような会話があったかは明らかでないが、パブリッシャーとデベロッパーのコミュニケーション不足が原因だったようだ。開発元であるRadical Fish Gamesは納得した姿勢を見せているが、怒りだしたのはバンドル入りしたことを知ったユーザーたちだ。

「バンドルに入ったことでゲームの価値を著しく落としたことを理解していますか?こういうことしていると定価で売れなくなりますよ」という抗議や「バンドルに入ったせいでG2Aにキーが流れ転売され始めている」という警告など、バンドル入りの決断に対して厳しい言葉を投げかけるユーザーが相次いだ。これらの批判に対してDeck13 Interactive公式は、バンドル入りによる値下がりに関しては、自分たちには過去こういうケースの扱いに手馴れていると述べているが、G2Aに関しては自分たちがそういった転売にできるすべは何もないと白旗をあげている。最初にバンドル入りを報告したMkayIndianaJones氏も「それでも恥ずべきことだ。それならば今回のセールでもっともっと値下げして売るべきだった」と嘆いている。

 

バンドル入りによって信用を失うことも

気になっていたゲームがバンドル入りすることで喜ぶユーザーは多いだろう。しかしそれはあくまでその段階まで購入していなかったユーザーだ。開発者はリスクを背負うとともに安価で販売することになるし、ゲームを既に持っているユーザーは自分の持っているゲームが更に安価で手に入る機会が生まれ、値打ちが下がってしまうことに失望してしまうことも考えられる。また、ゲームが発売されてから短期間でバンドル入りを繰り返すタイトルは買い控えの対象にもなる。

Radical Fish Gamesは騒動の後も何もなかったかのように『CrossCode』の開発報告を進めているが、心中は定かではない。今回のバンドル入りによって多くのユーザーが新たに『CrossCode』のユーザーになったことは間違いないが、Deck13 Interactiveはそれによってまた新たな何かを失ったかもしれない。