『Overwatch』ポルノコンテンツ大量発生に公式が著作権法を適用、大盛況のエロ動画が次々と削除される


海外のアダルト動画共有サイトPornhubに投稿されていた『Overwatch』(オーバーウォッチ)の二次創作ポルノが次々と姿を消している。先日、オープンベータテストの実施を皮切りに、同サイトにおけるキーワード検索率が急上昇したことで、Blizzard Entertainment(以下、Blizzard)が対応に乗り出したものと思われる。実際にPornhubへ作品を投稿していたユーザーが、権利者の申し立てによる削除通知を運営元から受け取ったことを、フォーラムサイトにて明らかにした。この件について、二次創作は決してポルノコンテンツに限ったことではないにも関わらず、Blizzardが特定のジャンルだけを恣意的に削除しているとして、一部のファンから批判が集中している。

 

狙い撃ちは反進歩主義へのアンチテーゼ

『Overwatch』は、6人ずつのチームに分かれて計12人でオンライン対戦が楽しめる一人称視点のMOBA系アクション・シューティング。BlizzardがWindows/PlayStation 4/Xbox One向けにリリースした十数年ぶりの完全新規タイトルとなる。未来の地球を舞台に、多種多様な武器や装備、特殊能力を操るヒーローが登場するのが特徴で、キャラクターによって得意分野や役割分担が大きく異なる。先日、5月24日の発売に先立って実施されたパブリックテストをきっかけに、ポルノサイトにおけるキーワード検索率が通常時の817%に跳ね上がったことが話題になった。それ以前には、お尻を強調した女性キャラクターのポーズに批判の声が寄せられており、自粛するほど“掻き立てられる”コンテンツとして図らずも絶大なプロモーション効果を生み出したと思われた。しかし、公式の見解は少し異なっていたようだ。

Redditに投稿された削除通知
Redditに投稿された削除通知

フォーラムサイトRedditに近況を報告したPornhubユーザーによると、「SFM」(Source Film Makerの略、Valve CorporationがSteamを通して無料で提供している3DCGソフトウェア)で制作した『Overwatch』関連のアダルト動画が、権利者の申し立てにより複数削除されたとのこと。運営元から届いたという通知を公開しており、Blizzardがデジタルミレニアム著作権法(通称、DMCA=Digital Millennium Copyright Act、2000年にアメリカで施行された連邦法)を適用し、対応に乗り出したことを示唆している。また、別の証拠画像では、他のアーティストもTumblrで同様の処分を受けたことを明らかにしている。

続けて、「学校でトレーサーの絵を描いたら、Blizzardが来て取り上げてしまうようなものだ。彼らはユーザーに見て欲しいコンテンツを恣意的に選択している。みんながこれに納得いくんだったら、それも仕方ない。Asari(Mass Effectシリーズに登場する宇宙人)にあんなことやこんなことをする作業に戻るよ。だけど、もしこのタイプの動画やその他のBlizzard関連コンテンツが好きなら、ネットを巡回してまで見て欲しいコンテンツを選定するような取締り行為を止めるよう、Blizzardへ抗議するべきだ」と、全てのファンに呼びかけた。ちなみに、削除されたのは「トレーサー」や「ウィドウメイカー」の“ふたなり”である。キーワード検索率で第3位の人気ジャンルだった。現在、Pornhubでは、『Overwatch』関連のえっちな動画や画像は軒並み削除されているが、一部は業界メディアKotakuが紹介した記事(職場での閲覧注意)で今でも確認できる。

批判的な指摘を受けた勝利ポーズ Image Credit: Blizzplanet
以前、お尻騒動で差し替えられた勝利ポーズ
Image Credit: Blizzplanet

特筆すべきは、Blizzardが全ての二次創作物に対してDMCAを適用しているわけではない点だ。情報を提供したユーザーも、アダルト動画を削除されたこと自体を批判しているわけではなく、Blizzardが特定のジャンルだけを狙い撃ちにしているという事実が問題であると述べている。海外メディアでは、ゲームデータからキャラクターモデルをそのまま抜き出していることが理由ではないかと指摘する報道も見受けられるが、作者はこれを一部否定している。そもそも服を脱がされて破廉恥な格好をさせられている時点で、そのほとんどは動画編集する前に大幅に加工されたものであり、オリジナルとは程遠い存在という言い分だ。また、二次創作が著作権の侵害にあたるという理由で削除するのは至極妥当な判断だが、それならファンアートやトリビュート動画といったポルノ以外の全てのコンテンツにも、同様の申し立てを行うべきではないかと反論している。

確かに、ポルノアーティストの主張も一理あるかもしれないが、Blizzardが女性キャラクターの描写における多様性を尊重していることを鑑みれば、今回の対応にも説明がつく。以前、「トレーサー」のお尻騒動を報じた際にも論じたように、女性観への同社のポリシーは微塵もブレていない。「Gamergate」という思想運動がネットの海に蔓延し、一部で脅迫事件や殺害予告にまで発展していた頃から、Blizzardは進歩主義に歩み寄る姿勢を明確にしていた。レイプをテーマにしたアダルト動画をはじめ、女性キャラクターを性的玩具として扱うポルノコンテンツが決して少なくないように、成人向け二次創作物の存在そのものが反進歩主義と受け取られても仕方がないのではないだろうか。今回の対応もまた、ミソジニーへのアンチテーゼに思えてならない。