『PAYDAY 2』に振り下ろされるコミュニティ怒りの鉄槌、不義理のマイクロトランザクションが開発とユーザーの決裂招く

 

『PAYDAY 2』は現在、10月15日から10月25日まで続く巨大イベント「Crimefest 2015」を開催中だ。このイベントは発売から3周年を迎える『PAYDAY 2』を祝すためのイベントであり、9月末から前座イベントである「Road to Crimefest」が開かれるなど、かなり大掛かりのものとなっていた。だが初日に実施されたアップデートを皮切りにプレイヤーたちは不満を爆発させており、各所フォーラムで開発スタジオへ“Fワード”混じりの罵声を浴びせるなど、3周年を祝うイベントは地獄の様相を帯び始めている。いったいなぜこうなってしまったのだろうか。

不義理のマイクロトランザクション

『PAYDAY 2』は、2013年8月にリリースされたクライムアクションFPSだ。開発はOVERKILL Softwareが、販売は505 Gamesが担当。プレイヤーは他プレイヤーと共に4人の犯罪チームを組み、銀行強盗や薬物精製などの様々な犯罪ミッションに挑む。発売から3年が経過した現在でも1日のプレイヤー数は平均で1万人強を記録しており、色々意見はあるかもしれないが『PAYDAY 2』は国内外で根強い人気を誇るCo-op FPSである。

ただ根強い人気を持つ一方で、OVERKILLによる『PAYDAY 2』の舵取りは常に称賛されてきたわけではない。有名俳優を起用するような派手なプロモーションに見合わない有料DLCやアップデートコンテンツの粗製濫造な内容などについては、プレイヤー側も不満をつのらせていた。開発とコミュニティの亀裂は徐々に広がりつつあり、その亀裂をさらに広げるように1発目にねじ込まれたのが、「Crimefest 2015」イベント初日の「Black Market」アップデートである。

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発端となった「Black Market」アップデート

この「Black Market」アップデートは、『Team Fortress 2』や『Counter-Strike: Global Offensive』で見られる「箱と鍵」スタイルのマイクロトランザクションを導入するものだ。プレイヤーはプレイ中にランダムで「Safe(金庫)」を獲得し、それを2.49ドルで購入できるドリルで開封することができる。金庫からはランダムで武器スキンがドロップされ、そのスキンは他プレイヤーとトレードしたり、売却することも可能という仕様だ。

この「Black Market」で特に問題とされているのが、武器スキンが武器の性能を強化するという点である。前述した『TF2』や『CS:GO』でも同様のランダムドロップはあるが、単純に武器やキャラクターの性能を強化するようなアイテムやスキンは存在しない。

ゲーマーが特に嫌悪感を示すマネタイズを導入した結果、OVERKILLには“Pay-2-Day(Pay-to-Win)”の声が一斉に投げかけられ、海外フォーラムRedditの『PAYDAY 2』サブレディットのヘッダー画像は「PAYDAY 2 Global Offensive」へと置き換えられることとなった。また「Crimefestの全コンテンツは無料で全ユーザーに提供される」といった前提が崩壊し、さらにAlmir Listoプロデューサーによる「いかなる場合でも『PAYDAY 2』にマイクロトランザクションは間違いなく導入しない(そう思っていないのなら恥ずべきだね!)」といった過去の発言掘り返され、初日から各所フォーラムは大荒れとなっていく。「くたばれOVERKILL」のスレッドには1200件以上のコメントと6000回以上のアップボートが投票。Steamでは数百時間から数千時間プレイしたユーザーたちが怒りの低評価レビューを何件も叩きつけており、それは現在も続いている。

過去へと戻る犯罪者たち

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有志ファンサイト「PD2Stats」は、OVERKILLが約束を反故しPD2Statsに似たサイト「FBIFile」を開設したと訴えている。「PD2Stats」側からの問いかけに、OVERKILLは数か月にわたり無言を貫いているという

この「Black Market」アップデートの発表を皮切りに、「Crimefest」は3周年を祝すどころか、3年間溜めてきたOVERKILLへのヘイトを燃料に『PAYDAY 2』を消し炭にするイベントへと変貌していっている。初日には「Black Market」に加え極端な武器調整アップデートが入り、セカンダリ武器が強化されアサルトライフルなどが大幅に弱体化し、過去の有料DLCで提供された一部の武器も例外なく、使いものにならないただの電子データと化した。2日目には、OVERKILLが開設した「FBIFile」とのいざこざを匂わせつつコミュニティサイト「PD2Stats」が閉鎖する。またOVERKILLの創設者で現在は別スタジオに所属するUlf Andersson氏が、同作の人気キャラクター「Wolf」役からの引退を表明するという残念なニュースも舞い込む。

3日目になると、「Crimefest」に嫌気が差したプレイヤーたちは、徐々にゲームのバージョンを以前のものへと巻き戻すロールバックを実行していると報告するようになった。「Crimefest」前の『PAYDAY 2』を遊ぶためにファンがデータを弄るのは、「Crimefest」もといOVERKILLへの明確な拒絶意思である。

前述した前座イベント「Road to Crimefest」は、コミュニティ全体でチャレンジに挑戦すれば「Crimefest」で報酬が解禁されるという内容で、そのコミュニティの努力に報わないコンテンツ(2日目のマスク5枚や4日目のCrime.netフィルター追加など)しか登場していないのも、現在の騒動をより大きくしているといってよいだろう。OVERKILLは4日目のアップデートで「Black Market」の問題については認知しており、「Crimefest」が終ってから取り組むことを明らかにしている。いま必要なのは怒りの炎を消すことができる素晴らしいコンテンツだが、はたしてOVERKILLは残り数日のフェスで、目を血走らせた犯罪者たちをなだめることができるのだろうか。