非公式の改造スマブラ「Project M」の開発停止が発表される。著作権違反の作品ながらも一部層で人気、海外では格ゲー大会の種目に採用も


『大乱闘スマッシュブラザーズX』を非公式に改造したファンメイドプロジェクト「Project M」の公式サイトにて、同作の開発停止が発表された。現時点で本家公式サイトからダウンロードリンクへは到達できないようになっており、日本版の公式サイトへアクセスすると404エラーが表示されるようになっている。開発チームの「PMDev」は一から作り上げる新規プロジェクトへ集中するとのことだ。

コアゲーマー向け『スマブラ』を求めて6年

『大乱闘スマッシュブラザーズX』にはファンによる非公式の改造プロジェクトが複数存在しており、「Project M」はその中でもっとも人気がある作品だ。この作品は当初はファルコンの調整を目的に2010年初期から開発されていたが、後に『スマブラX』をスピーディかつテクニカルにオーバーホールするプロジェクトへと発展していった。「Project M」が生まれた背景には、プレイヤーたちが「着地キャンセル」など独自のテクニックを開発したシリーズ2作目の『スマブラDX』に対し、数年ぶりにリリースされた3作目『スマブラX』がより幅広い層が楽しめるような調整であったため、前作のファンらが大きな不満を抱いていたという流れがある。

「Project M」は『スマブラX』のディスクを挿入したWiiに改造データ入りのSDカードを挿入することでプレイできる。任天堂の著作権を違反していることは言うに及ばないが、2015年時点でまでに60万ダウンロードを達成し、『スマブラ』トーナメント大会「APEX」や「CEO」など海外の大小様々な格闘ゲーム大会でも種目として採用されてきた歴史がある。任天堂も知ってか知らずか現在まで黙認する姿勢を貫いており、著作権違反の作品としては異例とも呼べる人気が一部層であった。

よりスピーディでテクニカルな『スマブラ』を目指した「Project M」。全体的なバランス調整や一部テクニックやキャラクターの追加、ゲームフィジクスの調整などもほどこされており、かなり大型のオーバーホール作品であると言える

とはいえやはり著作権を違反する作品であることに変わりはない。PCゲームのModというよりは家庭用ゲームのROMハックに近いスタイルであるため、人気と相反して批判の声が現在まで挙がってきたのも事実だ。前述の「APEX」では2013年度と2014年度に大会種目として採用されたが、「APEX 2015」では運営組織がプレイヤーたちからの批判を受け止め採用種目からは除外された。「CEO」でも同様に2014年度に種目として採用されたが、2015年度には除外されている。今回の報道が伝えられた海外フォーラムNeoGAFのスレッドでは、著作権違反を犯していた「Project M」が開発停止となった喜びの声と、コアゲーマー向けの『スマブラ』を追い求め続けた「Project M」が終了する悲しみの声が交錯する様子を確認できる。

今回の開発停止の発表に関して、開発チームは「Project M」が記した6年間の軌跡をたたえつつも、開発中止の決断にいたったと明らかにしている。任天堂から圧力を受けたという素振りは見せておらず、むしろ冒頭で述べた新規プロジェクトへと集中するために「Project M」の開発を停止する決断に至ったことを強調している。「要約すると、完全に新しいベンチャーへと集中するため、我々は「Project M」の開発を停止しこれ以降リリースもしないということだ」。「Project M」に関する問い合わせ窓口も残しており、今後はビデオゲームの法律に詳しい経営コンサルタントRyan Morrison氏が対応することになるという。