データ収集サイト「Steam Spy」の影響力がゲーム会社を悩ませる。“非公式データ統計サイト”はアリかナシか?

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データ収集サイト「Steam Spy」が存在感を増している。Steam Spyは昨年4月に始動した、Steam上のプレイ人数や価格、売上といったデータを独自の手法で収集し公表するサイトだ。ウクライナのプログラマーSergey Galyonkin氏が開始したこのサービスは、時間を追うごとに影響力を強めている。

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ゲームのセールスを非公式に取り扱ったものといえば、これまでは「VG chartz」が有名だった。しかしVG chartzは実際のデータとかけ離れているという例が多々あった。加えて市場調査会社大手NPDグループでさえ月ごとのデータしか提示できないのに対して、VG chartzは週ごとの売上を提示し、さらにそのデータ元を明かさないなどいくつもの点で信ぴょう性に欠くものがあり一部のユーザーからは「VG占い」と揶揄されていた。

Steam Spyの強みは一定の信ぴょう性だ。収集するデータは必ずしも正確ではないとGalyonkin氏自身も認めるものの、『Stardew Valley』の売上が100万本を突破したことはSteam Spyの指摘によりChucklefish Gamesが認める形となっていた。ほかにも、同じくSteamのデータを収集する非公式データベースサイトSteamDBへデータを提供したり、多くのメディアの情報ソースとされるなど、着実にその地位を固めている。

こういったSteam Spyの情報公開により、各ゲームの動向が見えるようになり、時に大型セール前の値上げが判明するなど、ユーザーにとってはいくらか恩恵がある。一方で、ゲーム会社にとってはあまり喜ばしいことではないようだ。『No Man’s Sky』のユーザー数の減少がSteam Spyによって判明したのは記憶に新しく、開発会社としては見せたくない情報が明るみになってしまうリスクがある。こうした動きを嫌ってか、『Dying Light』などを手がけたTechlandや、シミュレーションゲームでおなじみのParadox Interactiveは、Steam Spyに自社タイトルのデータ公開の取りやめを要請し、一時は非公開となった。しかし、Galyonkin氏は「すべてのタイトルのデータが掲載されることに意味がある」と考え、要請があったパブリッシャーのタイトルを再度掲載し始めた。

Paradox Interactiveは、「データに誤りがある」という理由で、以前からグループ全体でSteam Spyに反対の姿勢を表明している。マネージャーであるShams Jorjani氏は今年7月に「Steam Spyからヒントを得た穴だらけのビジネス計画を提案してくる開発者がどれだけ多いことか。」と不快感を示している。

またPC Gamerは、治安の良くない発展途上国に拠点を構えるデベロッパーなどは、Steam Spyによって利益の流れが計測でき、開発スタジオが襲撃される可能性を指摘している。さすがにこういった批判はやや飛躍している部分があるが、もはやSteam Spyはあまりの影響力を持つゆえに、情報が正しかったとしても「ゲーム会社にとってセンシティブなデータを勝手に公開する存在」を批難され、誤っていると「デマカセだ」と批判を受ける状態となっている。

こうした開発者の姿勢に対しGalyonkin氏は「うちは商用サイトではなく、個人でおこなっている世論調査のようなものだ。」とPolygonに語っており、PC Gamerには「Steam Spyはデベロッパーを助けるだけでなく、パブリッシャーの悪事を止めることもできると信じている。」と話している。

NPDグループは今月29日、ビデオゲーム市場調査会社「EEDAR」を買収し、同市場の調査において着々と力をつけつつある。一方で、個人の活動とはいえ、Steam Spyの存在も無視できない。Steamのデータをめぐるヒートアップは今後も熾烈化が予想されるが、いずれにせよ、すべての鍵を握るのがSteamを運用するValveであることは間違いない。

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