『StarCraft 2』韓国プロシーンでまたも八百長発覚、計11人が逮捕起訴された組織犯罪の真相とは

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韓国のチャンウォン地方検察局は、『StarCraft 2』の公式大会において八百長試合および違法賭博に関与したとして、プロチームに所属するヘッドコーチとプロゲーマー2名を含む、計11人を逮捕・起訴したと発表した。韓国では、過去にも前作『StarCraft』のプロシーンにおいて同様の事件が業界を騒がせており、『StarCraft 2』における八百長疑惑にも検察当局は早くから睨みをきかせていた。一連の逮捕劇により、e-Sports先進国の最前線にうごめいていた闇が再度明るみに出ただけでなく、背後で暗躍する犯罪組織を芋づる式に垣間見る結果となったようだ。有名プレイヤー数名が永久追放されるに至った真相に迫る。

 

メッカを覆う不正の闇

Team Liquid公式フォーラムによると、検察特捜部の捜査でプロチームの現役ヘッドコーチ、現役および元プロゲーマー、ブローカーを含む12人の関与が浮上した。うち、9人が逮捕・起訴され、2人が起訴、1名は現在も逃亡中とのこと。その内、実名が公表されたのは、チーム「PRIME」のヘッドコーチを務める“Gerrard”ことPark Wae-Sik氏、2名のプロ選手“YoDa”ことChoi Byeong-Heon氏と“BBoongBBoong”ことChoi Jong-Hyuk氏、そして元プロゲーマーでe-Sportsジャーナリストの“Enough”ことSeong Jun-mo氏。

Gerrard氏、YoDa氏、BBoongBBoong氏の3名は、今年1月から6月にかけて「GSL」と「Proleague」の4大会、計5試合で八百長を参画し、多額の不正資金を受け取ったとされている。また、Enough氏は、プロゲーマーやジャーナリスト、番組ホストとしてのキャリアを利用してGerrard氏とYoDa氏に接触。財政支援役の人間から報酬を受け渡すブローカーの役割を担っていた。同氏を含む4人のブローカーはそれぞれ異なるアプローチで「PRIME」に接近しており、中には運営資金の援助を申し出るスポンサーを装って信望を集めた後、八百長を持ちかけたケースもあったという。さらに、ブローカーに資金を供給していた2人の人間は犯罪組織の構成員であったことが判明している。

「PRIME」のヘッドコーチGerrard氏は、八百長試合を仲介した罪に問われている。今年1月の「SPL 2015」でFlash選手との試合に挑んだBBoongBBoong氏に故意に負けるよう支持。その報酬として、匿名のブローカーから500万ウォンを受け渡していた。その後、YoDa氏にも接触。2月の「Code S Ro16 Season 1」において、Life選手もしくはTY選手(どちらの試合についての罪状かは明らかになっていない)との試合で八百長を仲介した。さらに、5月の「Code S Ro32 Season 2」では、Bbyong選手もしくはSymbol選手(どちらの試合についての罪状かは明らかになっていない)との試合を、Enough氏をブローカーとして操作。YoDa氏に報酬1000万ウォンを渡していた。Gerrard氏はこのほかにも、昨年12月から今年3月までの間に、違法賭博サイトで5700万ウォンを使った罪で告発されている。

韓国の業界メディアFomosによると、同氏は多額の借金を背負っており、「PRIME」を運営する上での財政難から犯行に及んだのではないかと伝えられている。また、韓国サイトInvenによると、チームの資金繰りをめぐっては所属選手への給与の未払いも問題視されていたという。匿名の元メンバー複数人による暴露が報じられている。中には、新スポンサーが見つかった暁には定額の給料を支払うと約束しておいて、その4か月後には差し止められたケースもあったようだ。

Team Liquidが翻訳した相関図
Team Liquidが翻訳した相関図

現役トッププレイヤーYoDa氏は、前述したGerrard氏仲介による試合のほかに、4月の「Code A Ro48 Season 2」における対DRG選手戦、6月の「SPL 2015」での対HerO選手戦で、2人のブローカーからの要請を受けてわざと負けている。なお、同氏は計4回の八百長の内2回で3000万ウォンの見返りを得たが、残りの2回はブラックメールを受けた結果無償で無気力試合を働いたとされている。

Gerrard氏、YoDa氏、BBoongBBoong氏、Enough氏を含む、これら9名が逮捕および起訴された今回の事件。このほかに、違法賭博のメンバーを募集していた2名のリクルーターは、起訴されるものの逮捕には至っていない。なお、共犯者1名は今も逃亡中とのこと。

一連の八百長騒動を受け、韓国e-Sports協会(以下、KeSPA=Korea e-Sports Association)は声明を発表。Gerrard氏、YoDa氏、BBoongBBoong氏の3名を永久追放に処したと告知した。KeSPAは、以前からGerrard氏とYoDa氏の八百長についてひそかに情報を得ており、検察当局が動き出す前から独自の調査を進めていたとのこと。また、今回の不正により被った損害について、すでに告訴されている刑事責任に加えて民事訴訟も辞さないとしている。

韓国ではプロゲーマーのメッカといっても過言ではないほどe-Sportsが盛んに勤しまれている。中でも『StarCraft』シリーズにおいて右に出る国はないといわれており、世界中の大会で韓国人プレイヤーが上位を総なめにしているほどだ。その盛況ぶりは欧州と並んで、まさにe-Sports先進国といえる。しかし、多額の資金が動く背景には必ず不正の疑惑と犯罪組織がついてまわるのが常。今回の逮捕劇は、単にトップアスリートを誘う闇を暴いただけにとどまらず、背後にうごめく強大で枉惑な力を芋づる式に明るみへ出した良い例となっただろう。

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