22年前に発売できなかった欧米版スーパーファミコン向けゲーム、時を経て2016年にPCでリリースへ

 

Piko Interactiveは10月31日、同社が手がける『Dorke and Ymp』を、インディー作品の販売を投票で決めるSteam Greenlightに登録した。発売時期は2016年1月を予定している。『Dorke and Ymp』は、かなりレトロな横スクロールのアクションゲームのように見える。それもそのはずで、実はこのゲーム、当初は1990年初頭に欧米版スーパーファミコン(以下、SNES)向けに開発されていたのだ。1993年に発売をアナウンスしていたものの頓挫した本作は、紆余曲折を経て今年8月にSNES向けに発売。そして今回PCでのリリースも目処が立ったとみられる。

『Dorke and Ymp』は、緑のゴブリン「Dorke」と、赤いインプの「Ymp」が、主人のウィザードのために呪文の材料を集めることを目的に冒険するアクションゲームだ。Dorkeは素早い身のこなしとジャンプでステージを走りまわる。Ympは口から緑のボールのようなものを吐き出して敵を攻撃し、ときにはDorkeのフードを引っ張り(よくみるとDorkeは首元をおさえかなり苦しそうにしているが)空を飛べるようサポートしている。特徴的な頭身、スピードやモーションなど、どこか『ソニックザヘッジホッグ3』を思い出すようなゲームデザインであり、1990年代初頭の流行が感じられる。

 

苦難を乗り越え発売へ

『Dorke and Ymp』は、もともと『Dorque & Imp』という名前で、1990年代初頭にスウェーデンにあったデベロッパーNorseが開発していた。Norseに所属するPeter Waher氏を中心に、SNES向けに非ライセンスのキットを使うことで開発していたようだ。しかし、最終的にはパブリッシャーを見つけることができず日の目を見ることはなかった。Piko Interactiveは、その状態から最終的な発売までこぎつけたわけだが、その道のりは困難をきわめたようで、公式ブログにてその過程が語られている

1990年初頭に『Dorque & Imp』として開発していたころの映像。

開発中止から長い年月が経ち、Piko Interactiveは新たなプロジェクトを探していた。そんな中、『Dorque & Imp』に白羽の矢が立ち、Piko InteractiveはPeter Waher氏とコンタクトをとることに成功。Piko InteractiveはPeter Waher氏が持っているソフトのソースコードを入手したが、ソースコードは最新のバージョンではなくバックアップのための古いバージョンであったことや、開発をするためのツールが不足していたことから、開発が難航した。

Piko Interactiveは、当時のスタッフとともに一年以上にもわたりこのゲームの開発を続け、ゲームの基本的な骨組みの増強をはじめとした大幅な手直しを行った。また、100個以上のバグの修正をはじめ、新ワールドやステージ、新たなカットシーン、パスワードを入力することで再開できる機能、4つのボスなど、多くの新要素の追加に成功した。しかし、2014年4月に悲劇が起きる。『Dorque & Imp』のストーリーやデザインを手がけていたJim Studt氏の突然の死。42歳だった。Studt氏は最後のメールで “このゲームは『Dorke&Ymp』という名前にしてくれ” という願いを託していたようだ。Piko Interactiveと当時のスタッフは悲しみを乗り越え『Dorke and Ymp』を完成させた。

『Dorke and Ymp』の映像。『Dorque & Imp』と比べると全体的にスピード感があり、アクションゲームとしての成熟が見受けられる。Greenlightのページでは、かなり手強い難易度であるとうたわれており、コアゲーマーにも楽しめるものになっているようだ。

なお、Piko Interactiveの公式ストアでは、SNES用のカートリッジ版『Dorke and Ymp』が購入できる。カートリッジ版にはカラーの説明書などもついてくるようだが、内容はSteam版と同様であり、新要素が追加される前のオリジナルバージョンではないので注意したい。また、Piko Interactivは『Dorke and Ymp』以外にも、NES用ソフトGenesis用ソフトなども販売している。


国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)