「ゲイブ・ニューウェル」というアイドル

 

オーストラリアのゲーム開発スタジオPowerhoofは、自身らが開発するダンジョン探索アクション『Crawl』のシークレットボスとして、Valveの「ゲイブ・ニューウェル」を登場させる意向であると明らかにした。当初、『Crawl』への「ゲイブ」登場は、エイプリルフール中に公開されたgifイメージにて発表されたものだ。その後、多数のメディアがこのイメージを取り上げ、開発スタジオ自身がValveに使用許可を貰うためメールを送る事態に至っている。

 


“ドラゴン・ボール”規格のボスに

 

『Crawl』に登場するゲイブ・ニューウェル
『Crawl』に登場するゲイブ・ニューウェル

『Crawl』は、2014年8月からSteam早期アクセスを通して販売されている、ダンジョンアクションゲームだ。緻密なアニメーションが特徴のほか、ヒーローとゴーストに分かれて最大4人でローカルCo-opモードをプレイすることもできる。開発のPowerhoofは、本作のボスとしてゲイブが登場するコミカルなイメージを4月1日に公開。このイメージを多数の海外メディアが取り上げたほか、ArsTechnicaがValveに確認を取るなどの事態に発展し、開発スタジオ自身もボスとして登場することを認めてもらうためのメールを送っている。

このメールによれば、『Crawl』にてゲイブは畏怖を抱かせるような最強のボスキャラクターとして登場する。ゲイブは戦闘アビリティにて「ドラゴンボール」の”超サイヤ人のように”姿を変え、そのパワーは50倍に膨れ上がるのだという。登場アニメーションや死亡アニメーションについて希望がないか、メールの中でPowerhoofはゲイブに問い合わせている。

 


Valveのアイドル「ゲイブ」

 

画像: Game Festival 2011
画像: Game Festival 2011

『Half-Life』シリーズなどの名作タイトルを生み出し、現在はPCゲーム配信プラットフォームSteamを運営、近年はリビングやVR分野への進出を目指しハードウェア事業も推進している米国の企業Valve。ゲイブ・ニューウェル(Gabe Logan Newell)は同社の設立者だ。それだけでなく、彼は期せずして、Valveという企業の象徴的なアイドルキャラクターとして活動している。インターネット上のSteamユーザーや開発者を中心に、彼は愛される存在となっているのだ。

例えばValveのチーム対戦型FPS『Team Fortress 2』では、コメンタリーモードにゲイブ・ニューウェルが登場する。コメンタリーの中で、ゲイブは自身のメールアドレスが”[email protected]”だと紹介しているが、この”gaben(ゲイベン)”の奇妙な発音がユーザーの注目を集め、多数のマッシュアップ作品を生みだすまでに至った。また彼の肖像はインターネットの海に拡散し、Steamでゲームセールが実施される度に彼を崇めるイメージや映像が登場する。海外フォーラムRedditには、彼の卒業写真とされるイメージが公開され、現在とは異なる容姿が衝撃的だったのか、まるでアイドルのお宝画像かのように扱われた。

 

 

GDC 2012会場周辺に登場したポスター
GDC 2012会場周辺に登場したポスター

ゲームデベロッパー向けカンファレンスGDC 2012にて起きた事件は、彼を崇拝する狂信的なユーザーが実在することを示したと言えるだろう。ロサンゼルスの会場周辺に、突如多数のゲイブのポスターが掲載されたのだ。実行犯であるJonathan Haggard氏は、Valveゲームのファンであり、そしてみなを笑わせたかったと当時説明している。ポスター100枚にかかった費用は、100ドルだったという。

なぜゲイブ・ニューウェルが愛されるのかと言えば、そのキュートな姿だけでなく、巨大に成長し続けるValveとSteamにおいて、現在も彼がユーザーと開発者を大切にしているにほかならない。ゲイブはユーザーからの問い合わせに今でも直接対応する時があり、定期的に「ゲイブが対応してくれた!」とのニュースが報じられる。一般市民の虐殺ゲーム『Hatred』がSteam Greenlightから削除された際も、彼は『Hatred』をリスト上に復活させるように伝え、こうメールで開発スタジオに説明した。「Steamは、コンテンツ製作者と顧客のためのクリエイティブなツールだ」。現在そのSteam Greenlightには、ゲイブを主役とするシミュレーターゲーム『Gabe Newell Simulator』が登場し、1800件以上のコメントが付いている。