押井監督が『Fallout 4』のプレイ状況をお伝えする隔週連載「押井守の『Fallout 4』通信」。第9回に引き続き、DLC「NucaWorld」の世界へ(編集部)。

※本連載は押井守メールマガジン『押井守の「世界の半分を怒らせる」』にて掲載された内容を再編集したものです。

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うろ覚えだけど、たぶんレベル145とかそのくらいでしょう。

やって来ましたDLCの「NucaWorld」です。

ステーション周辺のガンナー先遣部隊を掃滅(そうめつ、と読みます)して乗り込んだ列車内は全く動けなくてガッカリでしたが、到着したホームで漁りまくってストレスを解消。とりあえず記念品を目立つ場所のゴミ箱に放り込んで目的地へ向かいます。

ガントレットはフラグ投げまくって撃ちまくっておしまい。
待望のヌカ・ワールドUSAに踏み込みます。
当初の私の方針は以下の通り。

・レイダーの三大勢力にはどれにも加担せず、時宜を見て掃滅。
・コマーシャルモデルのパワーアーマーを再優先で入手。
・その前提として5つあるエリアは早期にアンロックして解放するが、どの派閥のレイダーにも渡さない。
・カルトは殲滅する。
・レイダーたちを掃滅したら、記念のTシャツを連邦に大量に持ち帰って入植者たちに着せる。
・隠れチャッピー探し、とかメダル集めの類いのキャンペーンには一切参加しない。

と、まあそんな訳で目標2のために5つのエリアはあっさりとクリアしましたが、「荒廃した遊園地」が大好きな私も、あまりに陰惨な園内の雰囲気には正直言って萎えました。レイダーたちの跋扈するUSAの方が活気があるだけ、なんぼかマシです。
まあ、それなりの紆余曲折はありましたが…欲しくて欲しくて欲しくて欲しくて欲しくて堪らなかったヌカ・コーラ仕様のT-51とクウォンタム仕様のX-01をゲットできたからまあいいや。
さて獲るもの獲ったし、ゴミ箱も漁り尽したからレイダーを皆殺しにして、お土産を大量に抱えて連邦に帰ろうかな、という段になってハタと気がつきました。

連邦に帰還しても別にやることがあるでなし。

強いて言うならレイルロードの支援無しにインステュチュートに殴り込んで基地外科学者どもを皆殺し、というヤケクソなイベントくらいですが、そんなもンいつだって出来ます。

もはや大した情熱も持てないし。

それよりも何よりも、こんなに速攻で終わらせてしまったのでは7月末の『DQXI』まで間が持たない。ここは暫くレイダーのクエストを受注して粘ろうか…と考えたのが間違いだったのかもしれません。

「淫血症のディサイプルズ」に「拝金主義者のオペレーター」「動物依存症のパックス」…と、どれもまともに付き合えるような連中じゃありません。パックスはなかなかユニークな集団ですが、あの動物虐待は絶対に許せなひ(怒)。とりあえず三人のボスから受注してみたのですが、オペレーターズとパックスはいきなりの暗殺依頼です。私は連邦ではB.O.S.との個人的戦争で無数の闇討ちを実行しましたが、職業的暗殺者になる気は毛頭ありません。

ゴルゴじゃないんだ、私は。

その点、ディサイプルズのボスであるニシャの依頼はレイダーの取引現場を襲撃、略奪などがメインで、ときに対象者がB.O.S.だったりするケースもあるので気が楽だったこともあり、もっぱらニシャの依頼を受けて連邦に逆上陸、というパターンを繰返します。

ここで意外な展開が…不覚にも、私ともあろうものが、あの淫血症のニシャに情を移してしまったのでした。

「あら早かったのね」
「これは不要かもしれないけど…(報酬)」
「それが聞きたかったのさ」

などと帰還のたびに言葉を交わしているうちに、人間というのは実に不思議なもので、これを「情が移る」と形容してみせた日本語の表現力は実に繊細の一語に尽きます。なにしろ仮面で顔を隠すのがポリシーのディサイプルズですから、素顔は窺い知れませんが、篝火にうっすらと浮かぶ横顔は物憂げでもあり、錆びた手摺に凭れて佇む姿には妙な胸騒ぎを覚えたりします。残念ながら声優さんの声が若すぎることに加えて演技力もかなり残念なレベルなので、これが良子さん(榊原良子)だったら、おそらくニシャの情人に納まってヌカ・ワールドを二人で統治していたかもしれません。いずれ寝首を掻かれることになるのは間違いありませんが。いや、それ以前にケイト姐さんに知られて刺し殺されるでしょう。

「がしかし、ニシャとの蜜月は長くは続きませんでした」(※ここンところは岸田今日子さんのナレーションで)

いつものようにホイホイと砦のラッタルを駆け上がり、ニシャの部屋に顔を出してみれば、新たな依頼で敵対する相手は因縁浅からぬミニッツメンなのでした。ここで依頼を承諾して、連邦との敷居を跨げば敵対関係に突入するのは必至です。考えておく、の一言を遺してラッタルを駆け下り、途中の踊り場で意を決しました。私はミニッツメンと組んで将軍なんぞと呼ばれる気は毫もありませんし、繰返し書いてきたように馬鹿なレイダーが嫌いではありませんが、それはあくまで殺し合う相手として嫌いではない、という意味なのであって、レイダーそのものと化して連邦に逆上陸するなどとは夢にも思わない。

所詮、レイダーの女はレイダーであり、莫連女(ばくれんおんな、と読みます)に情を移した己の不明を恥じるしかないのでしょう。男女の仲は仏さまも知らずとはいえ、ことのケジメは自分の手でつけるしかありません。

せめて静かに死なせてやろう、愛用のPPK(デリバラー)を手に踵を返します。

背後には大正琴と尺八の哀切な一節が、いや鈴木敏夫の好きな東映ヤクザ映画でなく、私の好きなフィルム・ノワールの乾いたピアノソロを静かに流して欲しかった。

「おや、考えを変えたのかえ」

常と変わらぬ冷えた口元を歪ませて、鉄の女が呟きます。

「済まない…ニシャ」

その仮面の下の顔は傷つけまい、とVATSで胸に狙点を絞ります。数えきれぬB.O.S.の血で染まったPPKで三点射。……が、死にません。東映ヤクザ映画もフィルム・ノワールもここまで。女の身とはいえ、さすがはディサイプルズを仕切るボスキャラです。なにすんじゃいこのヤローと即座に真っ赤な敵対関係が発現し、至近距離での乱戦と化して最後は50口径まで待ち出してトドメを刺しました。そのまま自動的にディサイプルズとの殲滅戦が始まり、その余勢を駆ってオペレーターズとパックスも徹底的に殲滅。文字通り死屍累々の荒野と化した園内を、生き残ったチンピラを掃討しつつディサイプルズの砦まで引き返します。もちろん、ニシャの死に顔をこの目に焼き付けるためです。

マーケットを残して無人と化したNucaWorldに、もはや心を遺す何ものもありません。

可搬重量を遥かに超えた記念品を抱えて連邦に帰還しました(※私はStorongBackレベル4をアンロックしているので重量オーバーでもファストトラベルできます)。

さらばNucaWorld。

さらばディサイプルズのニシャ(※ニシャの仮面とコスチュームは今もRRTSのロッカーに収納してあります。さすがにケイト姐さんに着せようとは思いませんが、隠していることがバレたら殺されるでしょう)。

それにしても『Fallout4』のイベントの最期は、どうしていつもこうまで苦い幕切になるのでしょうか。ベスセダさんてば、本当に大人なんだから。

という訳で、NucaWorld篇も目出度くもなく終了。
次は気が重いDLC『Far Harbor』ですが、もはや後がない。

7月末までは持たんだろうな。