BitSummit 2014 作品ピックアップ by FoL.ExE 『N++』

 

3月はサンフランシスコで開催される Game Developers Conference にてハードウェアやソフト開発技術の最新情報の展開、そして著名な開発者による講義が開かれるため、1年のゲーム情報の大半が集まるたいへん濃厚な月とい えるでしょう。私も一度は参加してみたいと思っておりますが、なにぶん遠いし入場料も高いし言葉の壁もあるしで、ハードルは低くありません。

だからというわけでもありませんが、電車圏内でかつ入場料も安く、さらには日本語も使ってくれる BitSummit 2014 の様子を見てきました。制作発表段階のものから開発中のもの、そしてすでにリリースされ同人誌即売会で入手できるものがあり、さらにはUnity や Unreal Engine による開発環境の展示まで。いうなればプレスイベントと見本市、即売会の要素を含むゲームイベントの玉手箱・ 悪くいえばまとまりのないイベントとなっておりましたが、この混沌感は嫌いではありません。

国内外問わず様々なインディーゲームが並ぶ会場の熱気に感化されたまますべてお伝えしたいところですが、今回は前から気になっていたゲームが展示されておりましたのでそれをご紹介します。

 

フランスのメディアも取材で来日していました。 インタビューの内容はフランス語ローカライズについて。 どこの国も事情は同じなのかもしれません。
フランスのメディアも取材で来日していました。

インタビューの内容はフランス語ローカライズについて。

どこの国も事情は同じなのかもしれません。

 


『N++』 まずはPS4

 

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『N – The way of the Ninja』の最終作と昨年のGDCでほのめかされた『N++』。そのプレイアブルデモがついにお披露目となりました。恐るべき精度を必要とする心地良い疾走感、そして懲罰的な難度といったゲーム性はそのままに、新たなトラップが追加されたニンジャアクションゲームが帰ってきたのです。

ゲームそのものは無料のFlash版(ver.2.0)が公開されていますのでそちらをプレイしていただければすぐに体感できますし、過去作品にあたる『N+』がXbox 360 をはじめ様々なハードですでにリリースされていますので、名前だけでも耳にしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ゲームのルールで特徴的なのは「プレイヤーはニンジャとなりスイッチを押しドアに入る」というところ。根幹の部分はシンプルなジャンプアクション ゲームです。ステージ内には機雷や誘導ミサイルやガードロボット、レーザーやレールガンなどのトラップがあり、それらに触れると爆発四散してしまいます。 ちなみに黄色の四角は金塊で、取るとニンジャは嬉しさのあまり寿命がのびます(マニュアル公式の記述です)。壁キックや坂加速で得た慣性をコントロールし 超人的な体さばきでトラップを避けつつ金塊を集めスイッチを押しドアに飛び込んだときの達成感と開放感は、多くのプレイヤーを魅了していたようです。

今作『N++』では1000を超えるステージに、2人 / 4人協力プレイ / 4人対戦モード(レース、デスマッチ)とマルチプレイも搭載し、まさに最終作と名乗るにふさわしいものとなりそうです。ここまでの話はすでにアナウンスされている通りで、会場に展示されたプレイアブルデモはシングルプレイの数面(15面ほど)のみでした。

気になる方もいらっしゃるに違いないのがリリースされるハードです。ブースにいらっしゃった開発者に質問してみたところ、現時点では PlayStation 4 のみでのリリース予定とのこと。Xbox One や PC への展開については「いつかは」とのコメント。他ハードへの展開がどうなのか分からずやきもきしていただけに、実際に開発者から状況を聞くことで希望がつ ながった思いです。

もし会場に足を運んでなかったら「PS4専売か?」と誤解を周囲に振りまいていたかもしれません。開発者に直接質問を投げかけられるイベントがあるのはありがたい話です。

 

『N++』公式グッズ。
『N++』公式グッズ。

 


インディーゲームファンにも変化が求められる

 

 

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BitSummit はインディーゲームの祭典という名目のイベントです。しかし、会場に展示されていたのは比較的マイナーな個人のものや同人スタジオ・企業が制作したもの以外にも、ご存知 PLAYISM とタッグを組みクラウドファンディングに成功した『LA-MULANA 2』 やソニー名義で展示されていた作品など、つまり大御所も同じように並んでいたのです。そんな状況もあり、一部のタイトルからは露骨な資本力の差が感じられ ました。すべてが同じ会場内で並べられている光景を目にした方はおそらくこう感じたことでしょう。「これはインディーに含めてしまってもよいのか?」

その感情は、常に進化し続けるインディーゲームが従来の「小規模・少資本によるゲーム」という定義をはみ出してしまった戸惑いそのものといえるでしょう。では、何をもってしてインディーゲームと定めるのでしょうか?

私は、インディーゲームならではの魅力の源泉とも言える「開発者が思い通りに好きなだけ作りこんだゲーム」に注目しました。つまりそれが許される環 境、換言すれば「出資者やパブリッシャーなどの支配的影響力を受けない独立した開発環境で開発されたゲーム」をインディーゲームと定めるのが適切なのでは ないかと強く感じたのです。

 

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一例をあげましょう。今夏 3DS でダウンロード販売予定の『蒼き雷霆ガンヴォルト』 のブースにいらっしゃったインティ・クリエイツ取締役副社長の津田氏にインディ開発への意気込みをうか がったところ「大手メーカーからの受託開発が主でしたが、独自 IP でもゲームを創りたかったのです。ダウンロード販売により流通面での敷居が下がったこともチャレンジにいたった一因です」とのこと。環境の変化によりパブ リッシャの影響を受けづらいゲーム開発が以前より容易になったようです。

また、PLAYISM が事実上のパブリッシャーとなっている『LA-MULANA 2』や、PS4ブースに並んでいた『Don’t Starve』『Octodad』『Contrast』 の日本語版など、外部企業からバックアップがえられたゲーム、いわば従来の「小規模・少資本によるゲーム」という定義では分類外となるゲームも会場に並ん でいました。それらは上記のような”狭義”の定義からははずれるものではあります。しかし、それらのゲームがインディー的な開発環境を維持しているなら ば、「こだわりぬいて開発した作品」という魅力を損なうことはなく、しかるにインディゲームとよべるでしょう。

 

 

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クラウドファンディングによる資金調達やダウンロード販売という流通、そして外部企業によるバックアップと、インディゲームの環境がこの数年で変化 したことは認知していましたが、それを肌で体感できたのは大きな収穫でした。BitSummit がメディアやプロモーターふくむインディーゲームファンに良い変化をもたらすことを期待します。開発者が思い通りに好きなだけゲームを創りこめる環境が理 想的なのです。

 

The Behemoth の物販ブース。 会場でグッズを購入できて喜ばないファンもいないでしょう。
The Behemoth の物販ブース。

会場でグッズを購入できて喜ばないファンもいないでしょう。