『リーグ・オブ・レジェンド』日本シーンのリアルな熱気がここにある。LJL 2016 Summer Split Final会場レポート

 
夏の頂点をめぐって激突するチーム「Rampage」と「DetonatioN FM」のメンバーたち。オープニングではステージに10人が並び、盛大なスモークが噴き出した。

さる2016年8月7日、『リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends、LoL)』の日本公式トップリーグである「LJL(League of Legends Japan League)」夏の決勝戦が行われた。『LoL』日本サービスの稼働は今年3月からであり、日本公式の手による大規模イベントは4月に開催されたLJL Spring Split Finalより数えて2回めとなる。世界各地のトップリーグの頂点決定戦では、そのリーグの覇者を決める試合が行われるのはもちろんだが、ファンとプロ選手の交流や、会場の飾り付け、サブイベントなども大きな楽しみだ。本記事では、試合のネット配信で伝わらない会場の様子をレポートしていきたい。

会場概観

「LJL 2016 Summer Split Final」の会場は品川駅から徒歩圏内の「グランドプリンスホテル新高輪 飛天の間」。当日は夏らしい日差しに満ちた晴天が広がったものの、会場内は空調が行き届き快適そのもの。

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開場前から待つ来場者はまばら。春に行われた「LJL 2016 Spring Split Final」では会場の代々木競技場第二体育館前に長蛇の列ができたようだが、開場から試合開始まで3時間の余裕を取った今回は、開場直後に来ればゆったりと会場そのものを楽しむことができた。

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入場時にスタッフから手渡される「おみやげ袋」。黒い不織布製の簡素なリュックには会場限定のグッズが入っている。LJLパンフレットにはSummer Splitを戦い抜いたチームと選手の紹介が掲載。

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タンブラーは丈夫な作りで、密閉断熱二重構造になっており、会場のフリードリンクを入れてもらうことが可能。タンブラーにはLJL仕様のタオルカバーがついているが、なんとこれは折りたたむとリストバンドとしても使用することができる。
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そして特筆すべきグッズはこの「LJL扇子」! 黒を基調としたデザインで、表面にはLJL参加中のチームロゴがずらりと並び、裏面には『LoL』で人気のマスコットキャラクター「ポロ」がたくさん描かれたイラストがあしらわれている。扇子というチョイスは暑い夏にはピッタリで、日本オリジナル公式グッズとして非常にうれしいグッズだ。
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最後のこの薄い袋は、『LoL』現地応援に欠かせないグッズ「サンダースティック」。付属のストローで空気を入れてふくらませる棒状のバルーンで、1パッケージに赤と白が1本ずつセットされている。スティック内部にはLEDが封入され光るようになっている。このサンダースティックを両手に持ち、試合中に選手のナイスプレイなどに対して席からスティックを掲げて振るというのが世界各地の『LoL』現地観戦で見られるスタイルなのである。

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入場受付ではサブイベント「ティーモの挑戦状」の応募用紙も配布。会場内に配置された看板に書かれた全10問のクイズを解いて提出すると、その場で豪華商品が当たるというミニイベントだ。クイズは全て『LoL』公式試合で使用されるマップ「サモナーズリフト」にちなんだものとなっており、雑学から本格的なゲーム知識まで、まさしく「『LoL』への愛」が問われる内容だった。

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入場受付を通り過ぎると「飛天の間」入口の丸いエントランスホールが広がる。ホール天井から差し込む光で輝くプリズム柱を背に堂々と立つのは、サモナーズリフトのボスモンスター「バロン・ナッシャー」の彫像。今回の会場のコンセプトはサモナーズリフトということだが、突然のボスの出現に、驚きつつも喜ぶ来場者が多く見られた。手前にはバロンに近寄って写真撮影できるスペースも。

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バロン像を通りすぎて奥に進むと、そこはゆったりとくつろげるカフェスペース「サモナーズカフェ」。軽食販売コーナーではフライドポテト・ポップコーン・ホットドッグ・チュロスを販売。フリードリンクコーナーでは、ペットボトルドリンク配布もしくはタンブラーに注ぐ形でドリンクが飲み放題。試合開始前に余裕をもって到着した観客たちがテーブル席でくつろぎ、LJL出場選手と交流する姿も見られた。

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スタッフの服装もFinal仕様。青・赤ミニオンのコスチュームをまとったコンパニオンの姿も華を添える。いたるところに多くのスタッフが配置されており、来場者の中にはライアター(ライアットゲームズ社員)との交流を楽しんだファンもいたようである。

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サモナーズカフェでは床を行き来する「ミニオン」たちの姿も。「ミニオン」はゲーム中でレーンを下って敵ベースを目指し、プレイヤーが操作するチャンピオンに倒されることでゴールドと経験値をくれるおなじみのキャラクターだ。お掃除ロボットの上に載った彼らはサモナーズカフェの床を動きまわり、来場者たちを楽しませていた。ファンたちが寄せた多くのイラストもサモナーズカフェの壁や柱を飾る。商業イラストレーターの名前も見られ、来場者たちは精緻なイラストに見入っていた。

サモナーズカフェを通りすぎて試合会場に向かおうとすると、そこに鎮座するのは大迫力の「ドラゴン」だ。敵対する者を威嚇するポーズを取るドラゴンの前では、多くの来場者たちが写真を撮っていた。コスプレイヤーとドラゴンの共演を楽しんだ来場者も多かったようだ。

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サモナーズカフェを通りすぎてドラゴンを見ると、次に広がるのは「ジャングル」。サモナーズリフトのレーン間に広がるジャングルを模したスペースで、さまざまな木々が繁茂している。

ジャングル内にはニクいアイツも潜んでいて……?
ジャングル内にはニクいアイツも潜んでいて……?
会場の一角に用意されていたメッセージボード。来場者による応援メッセージはもちろん、美麗なイラストまでもが書き込まれていた。
会場の一角に用意されていたメッセージボード。来場者による応援メッセージはもちろん、美麗なイラストまでもが書き込まれていた。

「飛天の間」開場は10時だったが、試合会場への入場が可能となったのは11時。奥へ足を踏み入れると、広大な空間にほんのりとミストが炊かれているようで、ライトアップの効果が増幅され、雰囲気は世界大会配信などで見られる会場そのものである。試合開始までの2時間はDJによる演奏が流され、来場者のテンションを徐々に盛り上げていた。試合開始の13時が近づくと、MCの室川慎也さんと大久保聡美さんがステージに登場。サンダースティックの使い方と応援指南を行っていた。

試合開始前にはレーザーが乱舞する演出も。
試合開始前にはレーザーが乱舞する演出も。

試合中

※試合内容詳細については別途記事を公開予定。

ネット配信画面とはちがい、今回の会場の大画面モニターは幅約35m。この長さを活かし、トップレーン・ミッドレーン・ボットレーンなどの「3箇所のプレイを同時に映し出す」というスタイルで、現地の観客にゲーム画面が提供されていた。ギャンクなどで2つ以上のポジションが1箇所に集まったり、大規模な集団戦が起こったりすると、そういった場面が複数画面に映し出される配慮もあり、非常に快適な観戦環境だった。

メイン3画面+サブ2画面という構成。
メイン3画面+サブ2画面という構成。

プレイしている選手たちはヘッドフォンを装着し、ヘッドフォンからの音しか聞こえないよう配慮がなされているため、実況解説は会場にマイク放送で流されていた。今回の実況解説はLJLレギュラーシーズンでおなじみのeyes氏とRevol氏のコンビで、画面内で行われているプレイを理解するためには必要十分すぎる名解説であった。

試合の流れが動くような素晴らしいプレイには、拍手やサンダースティックを打ち鳴らす音が送られ、観客席も非常に盛り上がる。『LoL』が好きなファンばかりが来場している証でもあろう。

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試合と試合の幕間は、ネット配信では次の試合までの残り時間をカウントダウンするようになっている。しかし現地ではステージ上にMCが登場し、抽選会やグッズの投げ入れを行う「スワッグタイム」が行われていた。

ライアットゲームズの齋藤亮介ディレクターは、「我々ライアットがLJLに直接関わってまだ1年目です。春のシーズンのコンセプトはスポーツらしさを打ち出そうということで、ファイナルを代々木第二体育館で行いました。そしてこの夏はスポーツにもエンターテインメントの要素があるので、そこを切り口に新しい見せ方をやってみようということでこの会場を選びました。この飛天の間は試合会場となるホールだけではなくて、そこに至るスペースも非常に広いですから、ここなら『リーグ・オブ・レジェンド』の世界観を遊び心もふくめて盛り上げていけるという判断ですね。ホールには横に大きく使えるスクリーンがあるので、5分割した画面構成で、それぞれ別の試合状況を映すことにもトライしました。オペレート的には5つの画面を制御するのは大変なんですけど、それにチャレンジしてくれたスタッフには本当に感謝ですね」とコメントし、今回のイベントに大きなチャレンジがあったことを強調した。SNSなどでも来場者の反応は好意的に盛り上がっており、チャレンジの意味は大いにあったといえるだろう。

現地観戦の魅力

普段はネット配信で公式試合を観戦している身からすると、現地観戦は非常に新鮮で、配信にはない魅力が詰まっていると断言できる。たとえば試合配信には映らない「飛天の間」名物の大シャンデリア。ステージ上のチーム席が固定だったため、試合中はこのシャンデリアに赤と青のライティングが施され、赤サイドと青サイドのチームを示すようになっていた。

手前側のRampageが青サイド、奥側のDetonatioN FMが赤サイドであることを示すライティング。
手前側のRampageが青サイド、奥側のDetonatioN FMが赤サイドであることを示すライティング。

何よりも素晴らしかったのは「同じ空間にプロ選手がいて、勝利を求めて戦っている」という臨場感がe-Sportsでも得られたことだ。試合中の選手たちはボイスチャットでコミュニケーションを取っているのだが、最後席に座っていてすら、時折その声が聞こえることがある。「タワー!」「行くよー!」といったいわゆる「ショットコール」がかすかに聞こえ、そのとおりにチームが連携して試合を動かしていくさまは、『LoL』をプレイしたことのある人間であれば、例外なく面白いと思えるだろう。彼らは「自分のプレイを魅せる」プロなのだ。

今後のイベント運営に向けて

LJLが『LoL』日本サービスを運営するライアットゲームズ主導になってから、初めてのシーズンが終わろうとしている。Spring Splitのファイナルは代々木競技場。Summer Splitのファイナルはグランドプリンスホテル新高輪「飛天の間」。イベント規模は確実に大きくなり続けており、来場者数や配信視聴者数も増え続けている。

今回のイベントは、初めて現地観戦した身からは全体的に素晴らしいものだった。一方、配信では選手の紹介がスムーズに行われないなどの進行トラブルも。会場で行われる抽選会やスワッグタイムについても、ドリンクの補充やトイレに行きたい来場者にはチャンスがなかったりと、事前告知に組み入れるなどの配慮をお願いしたいところである。サモナーズカフェの軽食販売も悪いことではなかったが、試合の幕間に長蛇の列が形成されたり、買いに行く機会がないまま提供が終了してしまったりといった面もあった。空腹を抱えた来場者に対しては、ホテルの地下にあるコンビニへの事前案内があればよかったのかもしれないが、来場者のイベント参加ノウハウの蓄積・シェアなども必要なのかもしれない。北米で公式リーグが行われているNA LCSスタジオでは、『LoL』ゲーム内に登場するチャンピオンやアイテムにちなんだメニューの軽食販売が行われている。こういった遊び心はファンにうれしいポイントとなるはずなので、次回以降にさらなる期待をかけていきたい。

第一試合終了後の幕間中、サモナーズカフェの軽食販売は大混雑。トイレにも長蛇の列ができた。
第一試合終了後の幕間中、サモナーズカフェの軽食販売は大混雑。トイレにも長蛇の列ができた。

また日本在住の『LoL』ファンがこういった大規模イベントに期待するものとして、公式グッズの物販がある。春夏のFinalともにそういったコーナーは設けられていなかったが、『LoL』公式グッズは現在日本からの直接購入が不可能だ。公式グッズ物販があれば、ファンがイベントに足を運ぶ理由も増えることになるだろう。こちらに関しても今後の展開を期待したい。

[執筆:Sawako Yamaguchi & Tomohiro Noguchi]
[写真:Shigehiro Okano & Sawako Yamaguchi]
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