LoL国内リーグがいよいよ開幕 日本唯一の専属キャスターeyesインタビュー(前編)

 

AUTOMATONが送るLoL特集「Super LoL Rocket!」、記念すべきインタビュー第1弾は、日本で2年目を迎えたプロリーグ「LEAGUE OF LEGENDS JAPAN LEAGUE」(以下LJL)の専属キャスターであるeyes(アイズ)氏。eyes氏はLJLが2014年に配信したすべての試合で実況を務め、LJLの試合中継においてeyes氏の声はなくてはならない存在となった。滑舌の鋭さ、シャウトの熱さ、内容の的確さと、まさに彼自身もプロフェッショナルであり、プロプレイヤー同士の5対5の真剣勝負に立ち会う、11人目の選手と言えるだろう。2015年のシーズン開幕戦、1月24日を直後に控えたタイミングでeyes氏が語る、LJLの魅力とは。

 

LJL専属キャスターのeyes氏。自身もLoL実況のプロとして2年目のシーズンに挑む。
LJL専属キャスターのeyes氏。自身もLoL実況のプロとして2年目のシーズンに挑む。

 


――いよいよ1月24日にLJLが2年目の開幕戦を迎えます。心境はいかがですか?

正直めちゃくちゃ楽しみですね。LJLの1年目って本当に何もないところからのスタートだったんです。配信はするとしても、会場であるe-sports SQUAREにお客さんが来てくれるのかという心配がまずありましたし、そもそも全チームちゃんと1年間戦ってくれるのかな? みたいな感じだったんですね。

――1年目の開幕戦は大雪の日だったことをよく覚えています。

そうでしたね。電車も止まっちゃうぐらいの大雪だったんですが、都内だけでなく遠くからもたくさん見に来てくださったのは僕も思い出深いです。最終的には1年間、冬、春、夏という3シーズンを戦い抜いて、ファンも着実に増えました。僕が1年間実況をやっていて嬉しかったのが選手以上にファンの成長でしたね。

――具体的には?

最初の冬のシーズンでは集団戦と勝敗が決まるときだけ盛り上がっていた感じだったんですが、9月の東京ゲームショウで開催した最終戦(Grand Championship)では、ドラゴンやタワーを取っただけでも拍手や歓声が起こるようになった。要は試合の重要なポイントが客席側も共有できるようになったんです。そういう客席側との一体感、LoLの観戦を楽しむファンの目線を1年間かけて作ることができたのは大きな収穫でした。LJLというリーグの質はファンが育ててくれていると思っていますし、2年目はその見守るファンの蓄積があるところからのスタートになるので、さらに盛り上がる場になるんじゃないかなと思います。

――LJLというリーグの特色はどこだと考えていますか?

これはLJLに限った話ではないんですが、LoLってチャンピオンと呼ばれる使用キャラクターが120体以上いて、対戦するチームはそこから5体ずつ選んで試合に臨むので、戦略や戦術がものすごく多彩なんですね。そういう無数の選択肢があるなかで、6チームは1年間かけて相手チームへの対策や発見、新しい戦術の導入などを常に行いながら戦う必要がある。相手のとくに強い選手に対策を絞るのか、あるいは正攻法で確実に攻めるのか。個人の腕を磨くだけではなくて、そういう戦略も1年間かけて作り上げていくのが、LoLのプロリーグの醍醐味と言えるんじゃないでしょうか。LoL自体もアップデートの多いゲームですし、LJLは常に最新のバージョンで試合を行うルールなので、プロはすぐそれに対応できなくてはいけない。

――今回の特集は、LoLのプロ試合を観戦したことがない人にも向けたものなんですが、どこに注目するとより楽しめますか?

まずは試合前のピック(チャンピオン選択)ですね。プロの試合でよく使われるチャンピオンと、個人がソロでランク戦を回すときに向いたチャンピオンは微妙に違うんですが、それでも「いまどのチャンピオンが強いのか?」というのは、LoLを始めた人なら誰でも気になる点なので、そこはまず参考になると思います。もうひとつは試合中のカメラワークかな。通常の観戦モードはオートカメラでダメージの変動が起こったレーンを追うので独特のクセがあるんですが、LJLのカメラワークは僕が直接操作しているんです。

――実況しながら?

そうなりますね。まあ、本当は海外のようにLoLに精通したカメラスイッチング専門のスタッフがいると僕もありがたいんですが(笑)、6チームのプレイスタイルごとに注目ポイントもやっぱりそれぞれ違うので、だったら手動でそれに合わせたカメラワークをしようということですね。

――確かに通常のオートカメラだと、奇襲を狙うジャングラーの動きやワーディング(視界確保)までは追ってくれないですね。

そうですね。そういうレーン戦や集団戦以外での細かいプロの立ち回りは、初心者の人が見ていても参考になるんじゃないかと思います。こちらもなるべく注目するべきシーンを見せたいなと思ってカメラワークを調整しているので、そこにも注目してもらえると嬉しいです。あとは試合前にこの選手とこの選手の対決が楽しみだとか、チャンピオンの相性ではどちらが有利かみたいな話は解説のRevolさんといつもしているので、全部わからなくても、その辺を目安にしてもらえれば。

――試合中にどちらが優勢かという目安は?

キル/デス差よりは、獲得したゴールド差ですね。試合状況も10分経過、20分経過という時点でできるだけお伝えするようにしています。

――2年目のLJLでの新たな試みは?

今シーズンからは新たに英語実況が入ります。2014年の春のシーズンで僕の相方を務めてくれた、KAZU634さんが実況を担当して、Twitchで配信する予定です。それと今シーズンからは試合中の選手の声も録音する予定です。各チームから使用許可もいただいたので、後日振り返る際に試合中のチームの会話も混ぜて流したりとか、いろいろ試せるといいなと考えています。

 

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――なるほど。では今シーズンのLJLを戦う6チームの印象をいただけますか? 率直なところ優勝候補は?

まずは開幕戦のカードでもある、昨シーズンのグランドチャンピオンのDetnatioN FMと準優勝のCROOZ Rascal Jester、この2チームがどんな戦いを見せてくれるのかは非常に楽しみです。6チーム全体を見渡してもFMが本命、RJが対抗と考えていいですね。

――では昨シーズンから継続して戦う3チーム、DetnatioN FM(以下FM)、CROOZ Rascal Jester(以下RJ)、Ozone Rampage(以下Rampage)の注目ポイントは?

FMの最大の強みでもあり、プレイヤーとしても一番注目してほしいのは、MIDのCeros選手です。使えるチャンピオンの幅が広くて、どんな戦況にも対応できてしまう。ミスも少ないし、魅せるプレイも多いので、活躍を見ているだけでも楽しいですね。先日インタビューをする機会があったんですが「Zedで対面をボコボコにしたい」と言っていました(笑)。日本では彼が実質最強のMIDプレイヤーでしょう。FMの中国遠征でも現地のプロたちから注目されたようです。スコア的にはもちろんADCのYutaproid選手も素晴らしいですが、Ceros選手がMIDレーンで負けないからこそ、ADCが輝ける時間帯まで試合を持ち込めるんですね。なので優勝候補のFMはまずMIDレーンに要注目です。

CROOZとパートナーシップを結んでゲーミングハウスを作ったRJは、今シーズンに入ってロール(選手ごとのポジション)を大きく変えてきました。以前MIDだったapaMEN選手がJUNGLEになって、昨シーズンでは控えだったScotty選手が代わりにMID、JUNGLEだったRain選手は控えに回りました。LoLは最新のメタ(対抗戦術)がどんどん変わっていくゲームなので、この変更には注目したいところです。その一方で、BOTレーンのふたりは同じなので安定感は変わらないでしょうね。RJはBOTレーンからのゲームメイクで昨シーズンを戦い抜いたチームなので、ADCのRkp選手と、SUPPORTのLillebelt選手に要注目です。あとみなさんが楽しみにしているオフィシャル写真にもぜひ注目してください(笑)。

RampageはマネージャーのRussianさんが日本にいてチームをまとめているときはものすごくポテンシャルを発揮するんですけど、開幕時点では彼が日本にいないので、その点がちょっと気がかりですね。あとRampageは日本国内の大会以上に世界への道筋に重きを置いているのが特徴のチームです。いまのところサーバのない日本からは直接世界大会への出場権が得られないので、今後世界への道が開けた瞬間に急激に登ってくる予感がします。とは言えRampageは安定して強いんですけどね。昨年もシーズン優勝こそありませんでしたが、4チームのなかで一番安定した成績を出したので、今シーズンも強豪チームとして戦い抜いてくれそうです。

 

 

――今シーズンから初参戦の3チームDetnatioN RFSalvage Javelin7th heavenについてはいかがですか?

初参戦の3チームで、一番チーム歴が長いのがDetnatioN RF(以下RF)ですね。DetnatioN FMの姉妹チームなんですが、兄貴分のFMに対するライバル心はかなり熱いようです。RFは昨シーズンのチャレンジャートーナメント(LJL最下位チームとの入れ替え戦)にずっと出場していたチームで、3回すべて決勝まで残って、決勝の入れ替え戦で毎回勝ち上がれなかったという苦渋を味わいました。このチームのTOPを務めるMoyashi選手は日本一のTOPという定評が高いです。ただ彼らは本番に弱くてですね(笑)、ADC以外の4人は観客の前で戦うオフライン戦で手が震えるそうなので、プロのプレッシャーを1年間でどう克服して成長していくのか、見守っていきたいところです。

Salvage Javelin(以下SJ)は「こんなことやるんだ!?」という意外な戦略が持ち味ですね。それがうまくいって格上のチームを簡単に倒しちゃうこともあれば、いきなりやった作戦のせいで負けちゃったりという、試合ごとのトライアンドエラーが見どころのチームです。BOTレーンにはかなり自信があると聞いていますし、TOPのAero選手は元RJのTOPを務めていた選手なので、RJとの因縁の対決には注目したいですね。ちなみにSJのマネージャーは本職が塾の先生だそうで、その30代のマネージャーが若い選手たちと一緒に歩いていると引率の先生と生徒っぽいというか(笑)、そういうLoL学校みたいな独特な雰囲気も特徴と言えそうです。

7th heaven(以下7th)は、ニコニコ生放送の人気LoL実況プレイヤーでもあるClockday選手が所属しているチームです。7thはラッパー気質というかですね……(笑)。本人たちは試合だけでなく、ファンや視聴者との交流もふくめた新しいエンターテインメントとしてLJLに旋風を巻き起こしたいと言っていますね。試合外でも一番面白いことを見せてくれそうなチームです。観客の前で戦うオフライン戦では会場にしかわからないパフォーマンスをやってくれそうな気もしますし、いい意味で一番やんちゃしてくれるんじゃないでしょうか。もちろん彼らもチャレンジャートーナメントを勝ち上がってきたチームなので、実力は折り紙つきです。

――本命のFM、対抗のRJ、安定感のRampage、FM打倒に燃えるRF、意外性のSJ、エンターテイナーの7thと、6チームそれぞれ個性が見えてきました。

そうですね。6チームの情報はLJL公式サイトにも掲載しているので、ぜひチェックしてみてください。

 

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――LJLから少し話題を広げますが、現状日本と海外の差はどのぐらいあると考えていますか?

まだ相当あると思いますね。RJがゲーミングハウスを立ち上げましたが、それでも日本はまだ本当の意味でプロゲーマーが生活できる環境ってないんですよ。賞金の規模も違いますし、そもそも学生のプレイヤーがプロになるにあたって、両親を説得できるのかという話ですからね。まだLoLだけに専念できないのでどうしても差ができてしまう。かたや海外でLoLの試合だけで生活しているプロはやっぱり甘えがないし、自分の成績がそのままお給料にもつながるので、とにかく徹底している。

――海外のプロは人生を賭けていますよね。その賛否はもちろんあるでしょうが。

そうなんですよね。あと日本のトッププレイヤーたちにまだ大きく欠けているのは、試合展開のなかでの危機管理能力。海外のプロは、仮にBOTレーンでいきなり相手チームのプッシュが始まったとしたら、その動きだけでまだ見えていないジャングラーの位置を予測し始めるんです。しかもそれはほぼ当たっているんですよ。

――まず一手指したあとの試合展開のデータベースが、選手個人の経験として膨大にある?

そうです。だからもし日本が小手先の奇襲をかけたとしても、まず通用しないでしょう。プロとしての試合量も圧倒的に違いますから。

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――ものすごく乱暴な例えですが、仮にサッカーのワールドカップのような形式の世界大会がLoLにあったとして、日本は本戦の32チームに残れると思いますか?

正直いまだと厳しいと思います。いまの日本のレベルがどれぐらいかと言うと、LoL強豪国の韓国にNLB(NiceGameTV League of Legends Battle)という下位リーグがあるんですが、そのNLBに昨年日本のチームが挑んで1勝もできなかったぐらい世界との差があります。ほかにも北米にLCS(League of Legends Championship Series)という上位プロリーグがあるんですが、仮に日本のチームがそこに出場したとして1勝できたらいいな、ぐらいの力量差がありますね。海外のプロでoceloteという有名選手がいるんですが、彼は2012年の世界大会に「俺たちは強いからゲーミングハウスなんていらない」と言って出場したんですが途中で負けてしまった。その瞬間にoceloteは「まず俺たちはゲーミングハウスを作る必要がある」と考えを改めたという逸話があるぐらいなんです。日本はその環境すらないなかで、なんとか勝とうというのは相当厳しい。

――個人の努力だけでどうにもならない世界の壁がある。

現状はそうですね。ただ日本はもともとゲーム大国なので、環境が整ってプレイヤー人口も増えた瞬間に急激に成長すると思います。実際これだけ環境が整っていない現状でもそこそこ強い。自国にLoLのサーバがない国のなかでは強いほうだと言われています。

――どうしてもプロスポーツを例に考えてしまいますが、1993年にサッカーのJリーグが発足した当時に近いのかもしれませんね。当時はまだ日本のワールドカップへの出場すら夢でした。

そうかもしれないですね。もちろん当時のJリーグと比べても、LJLの規模や世間での認知度はまだまだ小さいですが、まずは国内リーグを充実させて、そこで戦いを重ねることで世界に通用する選手を育てていくという意味では近い部分もあるかと思います。

――2015年のLJLをどう盛り上げていきたいと考えていますか?

いまの繰り返しになりますが、現時点のLJLのひとつの目標は世界に通用するチームを排出することなので、そのために何が必要かと考えると、結局国内でプロ同士で競える場が必要なんですよね。まずは国内のレベルを上げないと世界に通じない。昨シーズン4チームだったLJLへの貴重な意見として「LJLに出ている4チームと、出ていない他チームとの力量差が激しい」というものがあったんです。プロとしての試合の数が違いすぎて、圧倒的に実力差が出てしまう。選手自身の露出度も全然違うじゃないですか。選手はプロとして顔を出して、ファンや企業に名前を覚えてもらえる。そのおかげでRJはCROOZという大きな企業とパートナーシップを結べましたし、FMも1年間でものすごくスポンサーが増えました。RampageもOzoneがスポンサーにつきましたからね。今シーズンはそこが4チームから6チームに増えたので、まずはおたがい徹底的に凌ぎ合ってほしい。そこで勝ち上がったチームがもし世界に挑戦する機会があればみんなで応援したい。そういうリーグになればいいなと僕個人は思っています。

――4チームから6チームというプロの人数の増加がシーン全体の底上げにもつながるだろうと。

昨シーズンの最初の頃って、出てる選手も子供だったんです。それが1年間で本当に成長したんですよね。たぶんマネージャーやスポンサーから大人の目線で怒られることもあったんでしょうし、ファンからの声も決して暖かい声援ばかりではなかったと思うんです。試合外でもそんな経験を経て、プロの厳しさに揉まれるなかで6チームがさらに大きく成長していくといいなと思います。やっぱりプロとしてファンの期待には応えてほしいし、ファンが望まない方向には進んでほしくない。LJL自体もプレイヤーとファンの間が風通しのいいリーグであってほしいですね。そのために僕も1年間がんばりたいと思います。

 


1月24日に開幕するLJLは、ニコニコ生放送TwitchAfreecaTVにて中継を予定。開幕戦は会場となる東京・秋葉原のe-sports SQUAREに6チームの選手全員が集い、オフライン形式で全3試合を行う。12時30分開場で観戦は無料だが、混雑状況によっては入場制限の可能性もあるとのこと。今後のスケジュールなど詳しくはLJL公式サイトをチェックしてほしい。後半のインタビューでは、日本初のLoLキャスターというeyes氏のパーソナリティによりクローズアップしていく。

 

[取材・構成: 野口 智弘]

[写真: Mon Gonzalez]

 

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[2015年1月22日 午前9時0分 追記] インタビューのなかにて、「ちなみにSJのマネージャーは本職が中学校の英語の先生だそうで」との会話があり、本文中に記載しましたが、正しくは「塾の先生」でした。訂正しお詫び申し上げます。