『リーグ・オブ・レジェンド』中国での就労ビザ取得問題が韓国で急浮上。合法就労が困難な韓国人プロ選手の中国事情


韓国のe-SportsメディアであるDaily eSportsは8月31日、中国で『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』のチームに所属する韓国人選手は就労ビザを取得していないというニュースを報じた。初めて韓国人選手が中国チームに移籍した2014年以来、中国の公認トップリーグであるLPL、ならびに二部リーグであるLSPLでは、60人超の韓国人選手がプレイしている。

e-Sports選手が中国での就労ビザを取得できない理由は、中国のビザ制度にある。中国においては、短期滞在であろうと長期滞在であろうと「Zビザ」と呼ばれる就労ビザが要求される。Zビザの発行条件のひとつには「雇用証明」が必要になる。しかし中国チームは企業ではなく個人事業者が運営していることが多く、所属選手(従業員)に対して雇用証明を行うことが難しいという。

報道では、中国でプレイする『LoL』韓国人選手のほとんどが旅行用ビザで中国に滞在しているとされている。

就労ビザがない場合の問題点

旅行用ビザで中国に滞在してプロのe-Sports選手としての活動を行う場合、まず就労そのものが違法行為となってしまう。e-Sports選手は大会出場や配信によって収入を得ており、所属チームからの給料も支払われる。こういった活動はまぎれもなく「就労」に当てはまり、違法なのだ。そして、チームが外国人選手との雇用関係を証明できないということは、雇用にまつわるトラブルが起こった時、チームが雇用関係を否定してしまえば選手側が法に訴えることができないということでもある。

また中国では、Zビザがなければ海外送金についての支障が生じる。中国でプレイする韓国人選手たちは、非常に高額な契約金・年俸・業績に応じたボーナスを受け取っている。中国での配信を通して得られる収入は莫大なものだ。中国で働く外国人労働者がこういった収入を母国へ送金するには、通常は中国内の銀行に口座を開設して、中国政府が定める制限の中で国外送金手続きを行うことになる。しかし、この口座開設にもZビザが必要となるのだ。韓国側でも「1万ドル以上の外貨を5回以上国内に持ち込む場合は税関への申告が必要」という制度がある。法を守って送金を行わなければ、中国における脱税や、韓国における外貨密輸などの罪に該当するだろう。

他地域に比べると法整備の遅い中国

アメリカ合衆国ではRiot Gamesの働きかけによりスポーツ選手・芸術家・芸能人に適用される「P-1ビザ」が2013年から『LoL』プロ選手に発行されるようになり、現在ではアマチュアである二部リーグの選手にまで発行範囲が広がっている。ヨーロッパではアメリカほどスムーズな手続きとは行かないようだが、労力と時間をかければ同様の就労ビザをe-Sports選手に発行できるようだ。こういった他地域での動きを見て日本でも今年3月より、外国人のe-Sports選手が「アスリートビザ」の発行を受けられるようになった。

中国では昨年1月にビザ規定が改められ、90日以内の滞在であっても就労を行うのであればZビザの取得が求められるようになった。これに違反すると収監や、国外退去の上で入国禁止処分など、厳しい刑が下されるようだ。

さまざまな国・地域で大きな成長を遂げつつあるe-Sports。その中で大きなファンベースを誇る『LoL』はプロシーンが始まって6年目を迎えており、地域間の選手移籍も盛んに行われている。特に『LoL』最強地域として名高い韓国では、国内のトッププロの数が限られる中で若いうちに一財産を稼ぐため、他地域のチームへと移籍する選手が近年急増している。中でも中国は地理的に韓国に近いこともあり、多くの韓国人選手が移籍先にしているため、この問題が急浮上した格好となる。多くの地域で外国人選手を受け入れるためのシステムが整備されつつあるが、中国では依然として外国人選手が闇の中に取り残されているようだ。