3DOというプラットフォームを語る際、避けて通れない独占タイトルがある。それが、1995年に解き放たれた異形の迷作『デイドラス エピソード1 難破船のエイリアン(以下、デイドラス)』だ。

コンシューマとしては、極めて初期のFMV(full motion video、リアルタイムではなく事前収録された映像で進んでいくゲームジャンル)タイトルであり、熱心な3DOファンには、今でも細々と語り継がれている一本だ。本作の珍妙な設定や世界観は決して無視できないものであり、これまでにも熱心なファンがブログなどを通じて紹介し、存在を風化させないように守ってきた。であるならば、筆者も立たねばなるまいと考え、今回筆を取った次第だ。

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まず、『デイドラス』についてサクッと説明しておこう。先にも述べたが、フォーマットとしてはFMVの形であり、近い時期にリリースされた『DEATH MASK』」『RAMPO』『ファンタムズム』『マッドドッグマックリー』などに近い。

舞台は西暦2135年の未来で、主人公は、身体を敵の攻撃によって失いロボットとなってしまった哀れな人物だ。……しかも人型のロボットではなく、小さい円盤のような形状であり、それがオープニングから発覚する。何の冗談かと思ってしまうが、どうやら本当のことらしい。しかも、仲間の女性は最初こそ悲観的だが、一分も経たないうちにまるで他人事。もう一人の仲間である男性は、妙に軽い性格であまりやる気は感じられない。プレイヤーは何に感情移入すればいいのかまったく分からない。

設定こそツッコミどころ満載だが、配役にニヤリとしてしまったのは筆者だけではないはず。男性キャラクターZack役のクリスチャン・ブッチャーはこの作品で初めて知ったが、女性キャラクターのAriを演じているのは、1994年の映画「トゥルーライズ」で女スパイのジュノ・スキナー役を演じたティア・カレル。シュワちゃん映画のファンなら、ご存知の方もいるはずだ。筆者は「トゥルーライズ」に激ハマりしていた時期があるので、『デイドラス』をプレイした時は「もしや!」とテンションが上がったのだ。しかも吹き替えを担当している声優は、「ドラゴンボール」のブルマ役で有名な鶴ひろみ。(ちなみにZackの声優は、「デビルマン」の不動明や「ドラえもん」の先生役でお馴染みの田中亮一)

クリアまでのプレイ時間は約3時間ほどで、ちょっと長めの映画を見ている感じだ。インタラクティブ要素はささやかなもので、簡単なパズルを解いたり、ポイントアンドクリックで気になる箇所を調べることがメイン。はっきりいって、ゲーム性は低い。

とはいえ、実写取り込みの美麗な映像は、当時としては目を見張るものがあったし、16bitマシンであるスーパーファミコンやメガドライブには決して表現できないグラフィックスは、3DOを始めとするCD-ROMマシンの特権だった。例にもれず筆者も、実写でバリバリ動くキャラクターには少なからず胸が踊ったものだ。

もともとはPCゲームに多く存在していたジャンルだが、スペックの向上により、コンシューマにも降りてきたFMVは、CG技術がまだまだ発展途上だったあの時代だからこそ成立したジャンルとも言える。しかし、ゲームに俳優や女優が出演する、という「龍が如く」や「鬼武者」に近いスタイルが一足早く成立していたという事実も興味深い。

3DOと言えば、松方弘樹主演の『西村京太郎トラベルミステリー 悪逆の季節』も忘れられない。ゲームのスタイルを変え、ドットグラフィックスが当たり前だったあの時代に、多くのユーザーに衝撃を与えたFMVが筆者は大好きだ。最近では名作『ナイトトラップ』がPS4/Xbox One向けに発表されたりと、FMVを含む実写ゲームのムーブメントが押し寄せているのではと、過剰な期待もしてしまう。今後もFMVの動向に注目したい。