ビデオゲームにおける3Dプリントの活用事例とは、株式会社カブク 事業責任者 清水篤彦氏。GTMF2016 Meets-Ups

7月15日、「秋葉原UDX GALLERY NEXT THEATER」にてGTMF東京が開催された。大阪会場に引き続き、プレゼンイベント「Meet-Ups」に登場したプレゼンターへのインタビューを掲載する。第12弾は、株式会社カブクの事業責任者である清水篤彦氏。

 

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3Dプリントで低コストの“ものづくり”を

東京都新宿区に位置する株式会社「カブク」は、ここ数年国内で大きな注目を集めているスタートアップ企業の1つだ。3Dプリントを活用した事業を主軸に、数億円規模の調達に何度も成功している。同社は「ものづくりの民主化」をテーマに、3Dデータや3Dプリンタを活用した“デジタルものづくり”を提供していると清水氏は説明する。3Dプリントを使ったものづくりの活用例は幅広く、金型を使って作るようなものよりもコストが低く抑えられる特徴があるそうだ。

GTMFはゲームの開発ツールやミドルウェアのイベント。ゲーム業界と3Dプリントは、どのような関わりを持っているのだろうか。清水氏は「ゲームにいっぱいお金や時間を使っても、結局最後になにが残るのか」というユーザーの疑問を投げかけ、カブクのソリューションを使えばそれを解決できると説明した。たとえばゲーム内で育てたキャラクターの3Dデータを使い、樹脂や石膏のフィギュアをプリンタでつくり上げる。長期間のやり込みで集めた自慢の装備品が、そのまま形となってユーザーの手元に残る。ゲームの枠を超えて、ユーザーの愛着や成果を“もの”として残すことができるというわけだ。また量産することができないような自社IPのキャラクターフィギュアなども、受注生産で在庫リスクなしに販売できるメリットが3Dプリンタにはあるという。

 

国内外で拡大する3Dプリント市場

――今回「Rinkak」という名でプレゼンしましたが、こちらはブランド名で、運営会社が「カブク」という認識でいいんでしょうか。

清水 篤彦氏:
そうですね。わかりやすくいうとそうなります。

――面白い会社名だと思います。“カブク”に込められた意味とは。

清水氏:
歌舞伎から来ています。むかし歌舞伎をしていた人たちは傾奇者と呼ばれていて、当時は文化としては成立していなかったんですよね。それを傾奇者の人たちが大衆向けにパッケージングをしていって、それが文化になり歌舞伎になった。我々も特殊なことをしているので、それを文化にしていこうよという意味合いを込めて、カブク。

――かっこいいですね。素敵な名前だと思います。

清水氏:
ありがとうございます(笑)

――カブクさんは、「Rinkak」がメインの業務となるんでしょうか。

清水氏:
かなり幅広くいろいろやっています。我々ITベンチャーなので、コストと在庫リスクもあって、モノづくりって簡単じゃないんですよね。そこをコストと開発費を低減して、在庫リスクをなくしましょうということで、3Dプリンターや金属造形複合加工機、ほか工作機械を活用した事業をやっております。3Dデータを解析して、世界中にある数百の工場へと適切に差配して消費者にお届けする、という一連のプラットフォームです。そのなかで我々の強みは、3Dデータの自動生成のエンジン、製造最適化エンジン、そういった機能を内製して提供している企業なんですね。

――日本だとまだまだ馴染みがないように思えますが、3Dプリント事業は徐々に広まりつつあるんでしょうか。

清水氏:
3Dプリントで作れるモノの幅がかなり広まってきました。たとえば我々は、法人向けにプラットフォームのシステムをカスタマイズしながら提供しているんですね。ロフトさんと組んで全国3店舗で「ロフトラボ3Dフィギュアスタジオ」というのをやっています。360度から写真を撮ると、それが3Dフィギュアとしてできあがるというサービスです。アバターソリューションでは、『星のドラゴンクエスト』にAPIを提供しています。装備情報を反映させたキャラクターを3Dプリンター用にデータ変換していて、それでフィギュアが作れるようになります。

ほかにも死んでしまったペットの写真1枚から、ペットのかつての姿を3DCG化したりとか。あとは歯科医療領域や人工関節領域、建築領域、コンテンツ領域、などさまざまな領域で3Dプリンタほかで造形物をアウトプットするカスタマイズプラットフォーム提供をしています。

さらにTOYOTAさんとは、車をカスタマイズしてお届けする「Open Road Project」というものをやっているんです。TOYOTAの「i-ROAD」というパーソナルモビリティがあるんですが、とても特殊なデザインをしてますよね。こういったパーツの3Dデータを弊社で可変して、自由にユーザーが選択し注文することができる。3Dプリントでボタンを押すとユーザーの選んだパーツが工場に届けられて組み立てられる。

こういったモノづくりの生産工程において、いろいろな企業やクライアントと領域を変えながらビジネスしているというのが我々ですね。その1つとして、『星のドラゴンクエスト』のようなゲームのアバターソリューションというものがあります。

――自分でカスタマイズしたキャラクターがフィギュアになる、というのは楽しそうですね。

清水氏:
フィギュアって、メーカーから市場に提供されたものを自分たちで買うということしかできなくて、選択の幅が狭かったと思うんですよね。でもいまは顔や装備を変えられるゲームがたくさんあって、できあがった3Dデータを変換してフィギュアにすることができる。モノとして手に入れることができる。今までのモノづくりの仕方よりも、相当選択の幅が広がることになると思います。

――3Dプリンタの設備や機材はとても高いという印象もあります。そういう面でコストは低く抑えることは可能なんでしょうか。たとえば先ほどのフィギュアでいえば、一体いくらぐらいに。

清水氏:
いま産業用3Dプリントの基本特許が2014年から切れ始めていまして、日本の企業も開発競争に参戦し始めている状況なんですね。どんどんコストが下がっています。たとえばフルカラーの石膏とフルカラーの樹脂がフィギュアを作るのに必要な素材なんですが、石膏のフルカラーフィギュアだとだいたい1体1万円以内。最近でてきたフルカラー樹脂だと、だいたい2万円ぐらいの価格帯でフィギュアを販売することができます。

家庭用の3Dプリンタの特許が、だいたい2009年に切れたんですね。そこから開発競争が起きて、5年間で価格が100分の1ぐらいに下がってるんですよ。いまはさらに2014年から産業用の3Dプリンタの特許が切れ始めていて、そこからさらにコストも相当落ちてくるだろうと予想していますね。

――さらに価格が下がって、3Dプリンタが身近なものになるのも近い。

清水氏:
フィギュアでいうと1000円とか、そんなレベルになるんじゃないかと。

――もはやキン消しみたいな感じに。

清水氏:
そういう身近さで、自分でカスタマイズしたものが手に入ると思いますね。

――ほかにもゲームで3Dプリンタを活用した事例はありますか。

清水氏:
『Minecraft』さんと組んでやっていますね。『Minecraft』って基本ドットデータなんですけど、そのデータを引っ張ってきてプリントアウトするということもやってますね。ゲームの事例でいうと『星のドラゴンクエスト』と『Minecraft』の2点になります。

――今後さらにゲーム分野において3Dプリンティングを活用した事例を増やしたい?

清水氏:
そうですね。特にアバターソリューションは非常にわかりやすいソリューションだと思っています。いまのゲームって、最初は無料だけど着せ替えで課金させるというのがほぼ主流ですよね。自分の満足のいくアイテムを揃えられた時点で消費者は満足すると思うんですけど、その満足した時点でそれを記録に残しておきたいという需要があるなと。それが数多くのゲームタイトルで成立すると感じています。

さらに進化すれば、自分の写真を撮ってそれを3Dデータ化すると、その顔をゲーム内にはめ込んで自分がゲームに参加するような領域までくるかなと思っています。

―話を聞いていると、「Rinkak」はかなり幅広いプラットフォームですね。

清水氏:
我々には3つの事業領域がありまして、「Rinkak」はそれらを総合したプラットフォームだと思っていただければいいと思います。先ほどお伝えしたような法人向けのソリューションであれば、歯科医療や自動車や電気メーカー、あるいはウェディングなど、いろんな業界向けにカスタマイズしてサービスを行っています。

もう1つは「B to Factory」つまり製造工場向けに提供しているサービスですね。全世界で登録している数百の工場があると言ったと思うんですけど、その製造工場に対して業務支援型のクラウドシステムを提供しているんですね。3Dプリンタ工場がより生産性を高くし、効率よく仕事ができるようにするための支援ツールなんです。これを工場に入れてもらって、3Dプリンタ工場をよりよく活用できるような体制を作るためのソフトを作って提供しています。

あとはマーケットプレイス。これはCtoCのマーケットプレイス、つまり個人売買ができるプラットフォームになります。消費者がマーケットプレイスに3DCDデータをアップすれば、在庫を持ってなくても商品として販売することができる。購入者が商品の購入ボタンを押した段階で、我々がネットワークしているどこかの工場に差配されて作られてお届けされるというシステムになっています。モノを作らなくても売買できる時代になりましたね。

――マーケットプレイスを見させていただきましたが、ユーザーが投稿したデザインがそのままモノとして商品になる、というのは魅力的に感じました。

清水氏:
車も電気も雑貨も、アイディアを20個作るとか商品企画を1年ぐらいかけて、ようやく1つを市場に投下するわけですよね。そうすると市場の多様なニーズに応えていけないんですよ。欲しいモノは千差万別なので。千差万別の商品ニーズに応えるには、商品開発サイクルを短くして、いろんなユーザーに応えられるようカスタマイズできるようにしていくべきだなあと思っています。個人単位ではこのマーケットプレイスをやっていますし、法人向けにはいろいろカスタマイズしてモノがお届けできるようなプラットフォームを生みだしています。

――GTMF2016ということで、ゲーム開発関係者やミドルウェア企業の方々が数多く集まっています。そういった方々とはどのようなパートナーシップ関係を結びたいと思っていますか。

清水氏:
3Dデータ自体の活用方法はいろいろあるんです。3Dプリンタは足し算と引き算を合わせるといろいろなデザインのモノが作れるんですが、そのモノにする前の3Dデータは存在している。そこからどういう風に市場にモノとして投下するのかというのとは別に、そのままデータを使うということもできます。たとえばVRとかアニメーション、あるいは広告とか。モノにする前の3Dデータを保管しておいて、その先のアウトプットを探した時に、GTMFに参加している開発企業さんたちとパートナーシップが組めればいいという風に思っています。

――ありがとうございました。

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[聞き手・写真撮影 Shuji Ishimoto]

gtmf-profGTMF
GTMF(Game Tools & Middleware Forum)はアプリ・ゲーム開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント。2003年にスタートし、今年で14年目。大阪会場は2016年7月6日、東京会場は7月15日に開催。

 

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