サウンド制作だけでなく、UE4で実装までサポート。株式会社プラスシグナル大久保悟氏が語る。GTMF 2017 Meet-Ups

ゲーム開発ツールミドルウェアの祭典「GTMF(Game Tools & Middleware Forum)」内で開催される「Meet-Ups」の登壇者にフォーカスを当てインタビューするこの企画。第二弾は株式会社プラスシグナルの代表取締役の大久保悟氏にお話をうかがう。

大久保氏が提案したのは、サウンド制作だけでなく、サウンドに付随する技術的な部分でのサポートだ。ゲームサウンドの提供に加えて、そのサウンドをゲームに組み込むところまでできるというもの。さらに大久保氏は、サウンド制作とUnreal Engine 4を使った実装の両面のサポートに自信を持つ。新時代のサウンドクリエイターに求められるものとはなんなのか。大久保氏に語っていただいた。

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――自己紹介お願いします。

大久保悟氏(以下、大久保氏):
株式会社プラスシグナルの代表取締役、大久保悟と申します。ゲームサウンドを作るサウンドデザイナーをやっています。大手2社を経て起業しました。これまでに30タイトル以上のサウンドディレクションを担当していまして、昨年のUnreal Fest 2016にて「実は強力Unreal Engineのオーディオ機能」というテーマで登壇し、そちらがきっかけで今日のMeet-Upsの機会をいただきました。

――本日のMeet-Upsのおさらいをしていただけますか。

大久保氏:
テーマとしては、ゲームエンジン時代にむけたサウンドの発注の提案というものです。ちょっと仰々しいですが(笑)。内容としましては、ゲームエンジンがどんどん普及しており、中小の新規デベロッパーが生まれていますし、大企業でも少人数チームが編成されることもあります。そんな中で、サウンドのアウトソーシングというのが重要になっているんじゃないかなと思います。小さい会社でサウンド職のスタッフを雇うのはリスキーですよね。仕事の量が不安定ですし、それに機材費がすごく高いんですよね。なので、アウトソーシングはとても有効なんです。

ゲームエンジンが普及している今、アウトソーシングを活用したサウンド発注をされる方も増えているんですが、問題点もあります。「BGMや効果音を何曲作って」とか「有名作曲家を起用したから大丈夫」だとか、「移植だからサウンドスタッフはいらない」とか「フリー素材集でいいか」といった状態になっておられるところもあると思うんです。音を用意して、それをどうするのかというところを考えられていないんですよね。ミキシングバランスがおかしいだとか、サラウンドが機能しないだとか、サウンドを単純にオーディオファイルとしか受け止められていない時にこうした問題が発生するんです。フリー素材だと知的財産でのリスクもありますよね。

こういった問題をクリアできていないと、過激な言葉になりますがコンテンツに「B級感」ができてしまいますよね。ゲームサウンドはオーディオファイルだけではなくて、音そのもの以外の要素も多くんあるんです。これらの要素の多くは、ゲームエンジンを使ってサウンド担当者自ら設定できるようになっている。特にUnreal Engine 4の場合はアセットが多く充実していて、自分で設定して活用できるようになっているんです。そこで「ゆるくアバウトに相談しませんか」と提案したいんです。

たとえば、相談していただければ、最適な技術や機能を紹介します。インタラクションの提案設計実装もおこないます。いろんな作り方があるので、期間と方法などを相談しながら進めていくこともできるんです。そこまで含めたサービスを提供していきます。だから、「ゆるくアバウトに相談してみてください」というわけです。私個人インハウスに在籍した20年の間に様々な経験をすることができましたし、Unreal Engine 4のようなゲームエンジンや各種オーディオミドルウェアにも対応で可能です。パートナー作家が3名いるんですが、みんなインハウスを経験しています。教育機関とも連携していて、神戸電子専門学校さんと連携し、学校のスタジオを使わせていただいたり、学生の実習の音声収録をしていたりとか、手広くやっています。

もうひとつのポイントとしては、Unreal Engine 4といえばブループリントですよね。弊社ではUnreal Engineにおいては、ブループリントでサウンド再生用の関数やコンポーネントを制作するところまでサポートしています。弊社が用意した簡単な関数を呼び出すだけで、ゲーム内の変数を参照し、ゲーム内の状況を見て制御できます。サウンド開発者が内部をさわれるようになると、プログラマーを起用するコストが減りますし、イテレーションや作り直しの仕様変更にも強くなります。気になる方はお声をかけてくださいという感じです。

――そう聞くと、ある種のコンサルティングにも似た業務ですよね。

大久保氏:
自分としてはそこを目指しているんですが、まだ会社を立ち上げたばかりなので、前述した「BGM何個作って、効果音何個作って」という発注が多いですね。案件を紐解いていくと「実はUnreal Engineで作っていて、VRタイトルで」みたいな話が多くて、それなら任してくれればもっと細かい調整までできたといった事例もあるんですよ。まだまだそこまで含めて発注して頂けるケースがないんです。

――Unreal Engineに強いという自負があるように思います。

大久保氏:
Epic Games Japan様にサポートしていただけているのは大きいですね。Unreal Engine 4にはブループリントというビジュアルスクリプティングシステムがあるのですが、これはプログラマー以外の人でもプログラミングのようなことができるというコンセプトなんです。他のゲームエンジンだとC#などでスクリプトを書くことになるんですが、それだとプログラマーの人以外はさわってはならないというような職種の壁が存在してしまう。Unreal Engine 4は職種の壁がないんです。音を作って、さらにそこからゲーム内の変数を参照するといったことができるのはUnreal Engine 4だけかなと思っています。それができる人は、仕事のスピードが3倍ぐらいになります。

――これまでは作曲家が曲を作って提供するのが基本的なプロセスだったと思います。プラスシグナルさんがやられるのは、効果音や楽曲を作って、それを実装するところまでやられるということですよね。

大久保氏:
そうです、そうした提案をさせていただいています。この前関わったプロジェクトでは、完成したゲームのプロジェクトのファイルをまるごといただきました。動いているモーションなどに音をつけて、キャラクターの位置によって音の大きさが変わるようにオーバーライドして、お返ししました。

――プログラムまでさわれるサウンド屋というのは、新しい時代の形ですよね。

大久保氏:
Unreal Engine 4があってこそできるというのはありますね。勿論オーディオミドルウェアでもかなりの所まで詰めていけるのですが、and/orといった一部のプログラム的なフロー制御などは、プログラムに近いところをさわらないとやりにくいんです。そこはUnreal Engine 4が解消してくれました。それを使って、「音のないゲームにここまで音をつけました」といったサンプルも用意しています。

――Unreal Engine 4を使ったサウンドとプログラムの組み合わせを提案できると。一方で、音作りにおいては、プラスシグナルさんは何を武器にされていますか

大久保氏:
そこは難しくて、昔から自分は器用貧乏で、なんでもやるというところがありますね。自分が担当してきたゲームは、スポーツだったり、アニメだったり、格闘だったり、アクション、推理、時代劇、なんだってありですし、見事にジャンルはバラバラです(笑)。

――ファンタジーが得意な方はずっとファンタジーをやる、みたいなところはありますよね。

大久保氏:
運がよかったのか、様々なジャンルを担当することができました。ああ、ひとつ得意なジャンルがあります。これは自信があります。実は今Unreal Engine 4で動く実況システムを作っています。いわゆるスポーツゲームなどで存在するアナウンスみたいなものです。以前スポーツ実況シリーズに携わっていて、ノウハウがあるんですが、あの時に制御できなかったこと、もしくはできそうなことが多くあって、Unreal Engine 4は結構高機能で、やってみたら作れちゃったんです。リアルタイムにどんどんボイスをつなげて再生していって、ゲームの状況について実況してくれるんです。

――実況があるだけで、スポーツゲームの没入感、臨場感は違うものになりますよね。あのシステムはまだ進化できると。

大久保氏:
そうですね。Unreal Engine 4だとオーディオの状態を今残り何秒だということを把握できるんです。それを観察して今喋っているセリフは何秒だから終わってから喋りましょう、今残り10秒ならセリフ切って再生しましょうなど、ゲームの状況のタイミングに合わせるシステムを自前で作りました。

――そういったシステムも、システムだけではなくゲームに組み込まれた状態で納品してもらえると。

大久保氏:
そうです。キャラクターが死んだら、「何回死んだの、どこのフロアで死んだの、どの場所で死んだの」という情報を自分が作ったコンポーネントが拾いに行って「ああー、このフロアでは4回目の死亡だー」といった実況をやってくれる。勿論コンポーネントや関数の部分だけを提供して自前で実装して頂くことも可能ですよ。

――そのゲーム、やりたいです。(笑)

大久保氏:
まだテックデモの段階ですので(笑)。普通は実況が入っていないというジャンルのゲームにも、実況を入れることができます。

――今は場面や状況によって鳴る音楽が変わるといった演出をおこなうゲームは増えてきていますよね。おっしゃった実況も含めて、ゲーム内のインタラクションが増えるというのはゲームサウンドのひとつの未来という感じはします。

大久保氏:
色々試してみたんですが、Unreal Engine 4でやると一番うまくいきました。そもそも興味本位で自前で実況システムのようなものを作ってみようという人自体が少ないんじゃないかと思いますが(笑)。

――ゲームサウンド全般的に対応できるし、実装面でもサポートしてもらえると。

大久保氏:
そうです。ほかにも、開発する側が時間もお金も足りないという状況はよく生まれます。そういう方たちの相談にも乗っていきたいですね。フリー素材しか使えないなら、それをちょっと加工したり、録り直したり、様々なサポートの仕方を提案できます。

――そういった局面で対応できるのは、やはりキャリアの長さゆえのものだと。

大久保氏:
そうですね、自分が在籍した2社では制作文化が大きく異なっていたのですが、そのおかげで様々な作り方や考え方を学ぶことができました。今日の結論としては「ゆるくアバウトに相談してください」というわけです。ちょっと悩んでいる程度で話しかけていただいて大丈夫です。

――ゲーム作りとサウンド作り両方ともお好きなんですね。

大久保氏:
ゲームエンジンをせっかく手に入れたので、自分でもゲーム作ってみたいし、ゲーム作りの知識があったほうが、サウンドをインテグレートする時に役に立つんです。それと自分でミニゲームなどを作れないと、機能検証もできないんですよ。自分で壁を立てたりとか、ステージを作って、操作できるキャラクターを置いて、実際に動かしてこのシステムちゃんと動くんだってわかるんです。サウンドをしっかりやろうとしたら、そこまで出来る方が便利なのかなと思います。

――Unreal Engine 4があるからこそ、ですか。

大久保氏:
(もしUnreal Engine 4がなかったら)働き方もやりたいことも変わっていたと思います。ここまでサポートできますと強気でいれるのも、ブループリントがあるからこそです。ブループリントは様々な職種の人が触れるというコンセプトで作られていますからね。職種の壁を超えられるのは、Unreal Engine 4があるからこそですね。

――ブループリントさまさまですね。ありがとうございました。

[聞き手: Minoru Umise]

[写真: Shinji Sawa]

GTMF
GTMF(Game Tools & Middleware Forum)はアプリ・ゲーム開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント。2003年にスタートし、今年で15年目。大阪会場は2017年6月30日、東京会場(事前登録受付中)は7月14日に開催。

 

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