VRをどのようにビジネスにしていくか、株式会社クラウドクリエイティブスタジオ秦泉寺章夫氏は語る。GTMF 2017 Meet-Ups

ゲーム開発ツール&ミドルウェアの祭典「GTMF(Game Tools & Middleware Forum)」内で開催される「Meet-Ups」の登壇者にフォーカスを当てインタビューするこの企画。第七弾は株式会社クラウドクリエイティブスタジオ秦泉寺章夫氏にお話をうかがう。

クラウドクリエイティブスタジオは京都に拠点を構える開発会社だ。同社は
『NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム4』や『ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン』といったサイバーコネクトツーの手がける格闘ゲームのネットワークチューニングに携わる傍ら、アーケード向けのVRプラットフォーム「V-REVOLUTION」を立ち上げようとしている。別ジャンルを同時に進めようとする意図、そしてVRをビジネスとして成功させるためにどのような試みを見せているのか。秦泉寺氏に語っていただいた。

スポンサーリンク

――自己紹介の方をお願いします。

秦泉寺章夫氏(以下、秦泉寺氏):
株式会社クラウドクリエイティブスタジオの代表取締役の秦泉寺章夫です。職種はプログラマーで、約20年この業界にいます。前職がSNKプレイモアで、『THE KING OF FIGHTERS』の12作目と13作目のディレクターをやりました。それと並行して中国タイトルのプロデューサーをやり、起業しました。もう7年目ですね。

――起業されたきっかけは。

秦泉寺氏:
当時SNKではオンラインゲームを作らないという話だったので、僕はオンラインゲームの設計ばかりやっていたので、スマホゲームが流行る前ぐらいの時期で、そっち系のゲームをUnityを使って作りたいと思い起業しました。

――講演した内容を軽く振り返っていただけますか。

秦泉寺氏:
弊社は今VR事業を進めています。昨年のBitSummitでもVRが流行っていた印象があって、VRのゲームを1年ほど作っていました。ですが、モバイルだとiPhoneやAndroidといった配信プラットフォームがあるじゃないですか。でもVRでゲームを出すとなるとSteamになりますし、Steamの国内の販売数はかなり少なく、スマホのマーケットと同じような環境ではないと感じました。ゲームを作っても体験会止まりで、VRはビジネスにはならないよねと悩んでいました。

同じぐらいの時期にバンダイナムコエンターテインメントさんがお台場でVR zoneをやっていて、ハードウェアを普及させるうえではアーケードだろうなと考えていました。ちょうど私も昔アーケードゲームを作っていて、ロケーションにいってロケテストするのが楽しかったんです。なので、そういった方向性でゲームを作っていたんですが、やっぱりどこに配信していいかわからない。じゃあそれを配信できる仕組みを作ろうかというところから始まってVRロケーションというものが生まれました。

――VRをどうビジネスにしていくかというのは、VRコンテンツ開発者にとっては悩みですよね。そんな中でクラウドクリエイティブスタジオさんはヒントを見つけつつあると。

秦泉寺氏:
そうですね。今ゲーム業界の方って、スマホのようにVRを一般人に広める、というイメージされている方が多い気がする。そうでなくて、店舗さんと話をすると「VRに興味があるけどどうしたらいかわからない。」「展開はしたいけど連絡先もわからないし、どれを選んだらいいのか」「初期投資がどれくらいかかるのかわからない」といった声が多いんです。今のアーケードは最初に何百万という筐体を買って、回収していかないといけない。うちの場合は、初期投資はVRの機器だけですし、レンタルという選択肢もありますよね。毎月いくら払うというレベニューシェアをやろうかなと。どうすればいいかわからない店舗さんを助けるように切り込んでいける状況にあるのかなと思っています。実際に今大手のアミューズメントパークの人と具体的に話しています。

――クラウドクリエイティブスタジオさんが、そういった事業を単独でやられる予定ですか。

秦泉寺氏:
そうですね。突撃感覚でいったんですが、受け入れてもらえたんです。ナムコさんもタイトーさんも老舗ですが、アーケードという点ではそれほどVRに力を入れているわけではないのかなと。そこだけ、空いていたという感じです。

――ゲーム作って売り込んでお金にするという点では、開発や営業などいろんな役割をひとりでやられているんですね。

秦泉寺氏:
一応社内にはもうひとり売り込んでいる人がいて、僕が突撃した後はその人が店舗さんとメールしてくれていたりしていますね。まあ、増えていけばどっかで破綻するとは思っていますけど(笑)ただ、今の状況だと小回りが効くんじゃないかなと。大きな企業さんだとそうはいかないですよね。ソースが少ない分早く動いている感じです。

――経歴を聞くと開発の最前線で活躍されていた印象があるんですが、今はパブリッシングにも似たことをされているんですね。

秦泉寺氏:
今でもゲームは作っていますよ。(笑)

――作りながら売り込んで、お金にまでしてしまうと。

秦泉寺氏:
それこそUnity道場とか、Unity主催のイベントで講演したりもしています。全部自分がやりたいので、やっています。

――お忙しそうですね。秦泉寺さんが何人いても足りないぐらい。

秦泉寺氏:
そうですね、少なくとも寝る時間はめちゃめちゃ減りました。(笑)どれしている時もめちゃくちゃ楽しいです。

――これまでの実績を考えると、たとえば
『NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム4』のオンライン対戦のチューニングをされていて、そういった方向でも十分勝負できるように思います。そこでなぜVRに行ったんだろうというのは気になります。

秦泉寺氏:
ゲーム開発者全般的にいえることだと思うんですけど、面白いことをやりたいんですよ。オンライン対戦を採用したVRゲームなども作っていますし、そういうやり方もしていますよ。

――VRだけ、オンライン対戦だけじゃなくて、そのふたつをかけあわせたものが考えられるのは、キャリアがなせる技ですよね。

秦泉寺氏:
そうですね。オンラインと対戦ゲームを絡めるというのはみんな考える事だと思うんですけど、僕らはそれを実現させようと動いています。アーケードゲームとして考えた場合も、店舗さんも一台置くよりも複数台置いたほうが、回転率もいいのかなと。複数人で回せたほうが楽しいですし、(店舗もプレイヤーも)お互いWin-Winだと思います。VRならパソコンとヘッドマウントディスプレイで機材も安く済むので、店舗的なリスクは低いですし、そうしたやり方は増えてくるのかなと思います。

――話を聞く限り、クラウドクリエイティブスタジオさんは自分たちのサイクルを自分で持たれていますよね。

秦泉寺氏:
でも、僕らとしては、受託が欲しいんですよね。受託は受託で、新しいことを教えてもらえるんです。そのせいでコストがかかることもあるんですが、成長できるんですよね。それが次につながるし幅も広がる。うちはやりたいことはやるんですが、外側の影響を受けてやらないと、先細ったり凝り固まっていくんじゃないかと思っています。それこそ世間知らずになりますよね。

――受託には視野を広げるメリットがあると。

秦泉寺氏:
かなりありますよ。自社でやると挑戦しにくいことも多いんです。自社でやる場合は、自分の知ってる範囲のことをやった方がいいですよね。逆に挑戦もできるんですが、調べてこないといけないですしね。受託だと教えてもらえることが多いんです。

――受託するうえで、クラウドクリエイティブスタジオさんはどういうところが強みだと思われていますか。

秦泉寺氏:
今は現時点ではリアルタイム、P2Pなどオンラインのチューニングです。そっちで話をしていただけることが多いですね。通信の部分だけでもいいから、と。

――通信に関しては、どんなジャンルでも対応できますか。

秦泉寺氏:
もちろんです。やったことないことに関しては「やったことないっすよ」と言っちゃいますけど(笑)。通信というベースの部分はそこまで変わらないんで、そこから突っ込んでどういうゲーム性にするかという点では僕らにできることも多いと思います。

――格闘ゲームのネットワークを専門とされていたのなら、なんでもできそうですよね。

秦泉寺氏:
そうですね、一番リアルタイムの調整できついジャンルです。ワンフレームの遅延と戦っていたんで。

――そうした武器があるにもかかわらず、別ジャンルであるVRに行くというのは、不思議です。武器を増やそうとしているんですか。

秦泉寺氏:
やりたいことをやってるだけです(笑)Nintendo Switch、VR、Hololens、ドローン。新しい物が出たらとりあえずなんかやろうという感じです。面白そうなものはやります。うち会社には、プログラマーしかいないんですよ。

――プログラマーしかいないんですか。

秦泉寺氏:
そうです。だから絵なんか絶対に描けない。デザインは知り合いの方にお願いしてます。

――どうやってそんなにプログラマーを集められたんですか。プログラマーは業界でも人手不足だと思うんですが。

秦泉寺氏:
むしろプログラマー以外の集め方を知らないんです。僕はプログラマーですし、社員もプログラマーです。プログラマーしかとれないんですよ。多分、そこに一点集中している分、プログラマーが好きな環境を用意できているのかなと思います。普通のところだと、機材ひとつ買うのも手続きが大変だと思うんですが、僕はなんでも買うんで、必要な書籍、機材は用意する。「社長室に新しいものがきたから何か始まるぞ」と社員に言われてます。(笑)

――破天荒に聞こえますけど、実はそういう部分も社員さんを喜ばせるための秦泉寺さんの気配りであると。

秦泉寺氏:
喜ぶところも同じなんじゃないかなと。プログラマーって同じようなタイプなんじゃないかなと思います。そうならざるを得ない。似た者同士ですよね。

――プログラマーが20名以上いて、みんな専門知識があるならば、すごく成長できそうですね。

秦泉寺氏:
それはありますね。うちはずっとサイバーコネクトツーさんからオンラインの仕事をいただいているんですが、おかげでそのノウハウが溜まっています。本当にありがたいですね。ゲーム会社の方は、ゲームのグラフィックの特化にこだわる方が多いように思うんですよ。オンライン対戦部分はオプションで終わる方が多いと思うんですけど、うちはそこでオンラインでの提案ができるかなと思っています。Photonさんとかもうちは早めに採用していますしね。

――関西の盛り上がりを期待VRもオンライン対戦も、どちらも次世代を見据えたコンテンツですね。

秦泉寺氏:
たまたまです。(笑)

――最後にメッセージをお願いします。

秦泉寺氏:
今VRのゲームは、VR zoneだとかハウステンボスだとか、関東が多いんですよ。関西には全然ないんです。関西は何かと半年遅れや一年遅れじゃないですか。そういったところの熱量を上げていきたいですね。ものを作るだけでなく、作れる環境や、売れる環境を育てたいです。

――ありがとうございました。

[聞き手: Minoru Umise]

[写真: Shinji Sawa]

GTMF
GTMF(Game Tools & Middleware Forum)はアプリ・ゲーム開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント。2003年にスタートし、今年で15年目。大阪会場は2017年6月30日、東京会場(事前登録受付中)は7月14日に開催。

 

ニュース

Indie Pick

インタビュー

レビュー・インプレ

Devlog