『TINY METAL』×「Unreal Engine 4」。インディーチームでPC・コンソール対応3Dゲームを発売するために何をしたか?Epic Games河崎氏が訊く

Epic Games Japan代表の河崎高之氏を聞き手とし、Unreal Engine 4を採用したタイトルの開発者にお話をうかがう対談企画第三弾。今回お迎えするは、『TINY METAL』を手がけたAREA 35のプロジェクトメンバー。

スポンサーリンク

TINY METAL』はターンベースの戦略シミュレーションゲームだ。3Dにて構築されたフィールドにて、巧みにユニットを動かし各地に存在する都市を掌握しながら、戦場の制圧を目指す。ユニットは15種類以上用意されており、幅広い戦術での攻略も可能。頭を捻り場面を打開していく、手強いシミュレーションタイトルだ。おもちゃのようにキュートなグラフィックもひとつの特徴である。特筆すべきは、小さなチームでこのようなビジュアルの作品を、PC(Steam)およびPlayStation 4、そしてNintendo Switchにて同時にリリースしたこと。少人数チームはUnreal Engine 4をどのように使い『TINY METAL』を作り上げたのか。今回は2名の中心スタッフにお話をうかがった。

河崎高之氏(以下、河崎氏):
まずは自己紹介をお願いできますか。

由良浩明氏(以下、由良氏):
ディレクター兼プロデューサーを務めている由良と申します。業界ではオーディオから携わっておりまして、担当した作品は『ディアブロ3』や『戦場のヴァルキュリア』シリーズ、『ソウルキャリバーV』などですね。ほぼサウンドオンリーでやってきました。今回Unreal Engine 4で開発しました『TINY METAL』が、私にとっての初のゲーム制作になります。

由良浩明氏

河崎氏:
由良さんはヴァイオリニストでもいらっしゃると。

由良氏:
もともとヴァイオリニストなので。『エルシャダイ』をプレイすれば、僕のヴァイオリンが聞こえてくると思います(笑)。

河崎氏:
ヴァイオリンが弾けるプロデューサーはなかなかいらっしゃらないですよね(笑)。ではダニエルさん、ご紹介お願いします。

ダニエル・ドレスラー氏(以下、ダニエル氏):
私はダニエルと申します。カナダから移住してきました。『TINY METAL』に携わる前のゲームプロジェクトは、モバイル向けの『Hearthstone』のようなタイトルで、サーバーサイドのゲームルールを作っていました。僕はもともと日本のゲームが大好きで、大学の時はインターンで、マイクロソフトで働いていました。

由良氏:
将来的にはとてもいい給料を保証されていたけれど、日本に来たんだよね。

ダニエル氏:
そうですね。日本でゲームが作りたくて……。子供の頃はほとんど日本のゲームで遊んでいました。

河崎氏:
なるほど。それでは『TINY METAL』の開発のきっかけをお聞きできればと思います。

 

4人の主力スタッフで走りきった

由良氏:
最初からUnreal Engine 4で作っていました。ダニエルがもともと「バトルコア」という『ファミコンウォーズ』のようなシステムを開発していて、それをベースに「もっとしっかり日本のゲームとして作りたいよね」という話になり、制作が決まりました。

そもそも、ダニエルは『Project Phoenix』(※)の制作のためにチームに入ってきました。『Project Phoenix』はもともとほかのエンジンを使って開発していたんですが、アーティストツールが不親切なところがありました。そこでアーティストがいじれるツールが充実しているUnreal Engineを選びたいとドイツのAirborn Studios(※)から要請があり使ってみよることになりました。

※『Project Phoenix』
由良氏がプロデューサーを務める開発中のタイトル。Kickstarterで大きな成功を収めたが、現在は発売延期中。

※ Airborn Studios
ベルリンに拠点を構えるゲームスタジオ。アートに特化しており、『オーバーウォッチ』などさまざまな作品のヘルプをしている。

そこからUnreal Engine 4を使った『Project Phoenix』の簡単なプロトタイプを作ってみたんですが、思ったよりもすんなりとできました。プロジェクトを続ける上では、アセットを作り直したいと思うようになるなど、いろいろやりたいことができまして、すぐにはこれで『Project Phoenix』を続けることはできないという形になったんですね。そこでダニエルの持っている『ファミコンウォーズ』のような後継作のプロジェクトを広げようという流れになり、『TINY METAL』が生まれました。

ダニエル氏:
私が開発したシステムは、もともとWEB上でHTML5とWebGLを使用して開発していました。そのため、コンソール上でもWebGLを使用して開発を行おうとしたのですが、コンソールがWebGLをサポートしていなかったため、もっとちゃんとしたツールを使わなければいけないと思いました。

ダニエル・ドレスラー氏

河崎氏:
最初にお会いした時は2年前の虎ノ門だったと思うんですが、あの時点で『ファミコンウォーズ』的なものは見せていただきましたよね。あの時はもうUnreal Engine 4で作られていましたか。

由良氏:
そうですね。僕がダニエルと知り合った時点で、もうUnreal Engine 4でプロジェクトが進んでいました。

河崎氏:
『TINY METAL』には、最終的に何人ぐらいのスタッフさんが関わられたんでしょうか。

由良氏:
声優さん・ローカライズスタッフ抜きのデベロッパーと呼べる人たちの人数でいえば36人ですね。ただ、純粋にフルタイムでやってもらったのは、ダニエルと高濱くんのみです。私はプロデュースやディレクションをやったのですが、開発としては2名を中心に回した感じですね。アートディレクターをしていただいた、森賀さん(※)という方がいて、ほかにもモデラー・アニメーターさんが3・4名いたんですが、実装していたのはモリガさんでした。シネマティックはエラスマスというドイツにいるスタッフが、Unreal Engineを使用したリアルタイム・レンダリングで作ってくれました。そう考えると、エディター使っていた開発の実働スタッフは4人になりますね。

※ 森賀宏治氏
京都在住で、アグニフレア所属のクリエイター。

河崎氏:
アメリカ在住のスタッフさんもいると聞きました。

由良氏:
はい、いますが広報などを担当しているので開発スタッフではないですね。

河崎氏:
その少ない人数でUnreal Engine 4を使おうとした時に、不安などはありませんでしたか。

由良氏:
まあ、ダニエルが大丈夫だと言ったので(笑)。

河崎氏:
(笑)。どちらからいうと、Unreal Engine 4は大規模制作のイメージが強いのではないかなと。

由良氏:
僕は前述したように、『Project Phoenix』のプロトタイプを作るのにUnreal Engine 4を少し経験しています。その時は、そこまでツールとして難しいとは思わなかったんです。アートとゲームデザインをしっかりしていれば大丈夫かなと思っていました。

一方で、Unreal Engineに対する恐怖感については実感しているところもあります。これまでにUnreal Engineで動いているプロジェクトに多く関わってきたので……。「Unreal Engineが怖い」というディレクターや「お金がかかる」というプロデューサーも見てきたのですが、僕としてはそういう印象は持ちませんでしたね。ダニエルからは作業量が多いという文句はありましたが、Unreal Engineがどうこうという内容のものはなかったですし。

開発画面

河崎氏:
メインの4人の方で、もとからUnreal Engineをさわったことがあったのは……。

ダニエル氏:
森賀さんが少しあります。私は個人として6か月間趣味で使っただけですね。

由良氏:
エラスマスもUnreal Engineの知識がとても多くあるんですが、彼も元々はCrytekのCineboxを使っていたので、スペシャリストではありませんでした。

河崎氏:
みなさん『TINY METAL』で覚えながら作られたんですね。どれくらいで使えるようになりましたか。

ダニエル氏:
使いながら詳しくなり、いいやり方を見つけつつ、学んでいます。ラーニングカーブといえばいいんでしょうか。ただし、ある程度難しい点はありました。PAN、GEMOやGAMESSといったツールとコントローラーはどう組み合わせるべきか。特にマルチプレイヤーの基本作業など、はっきり指定しないと実装できないことはたくさんあります。

河崎氏:
みなさんはUnreal Engine 4を使っているうちに慣れていったと思ったんですが、一方でどのように4人の知識のレベルを上げていきましたか。

由良氏:
まず森賀さんは、アートのみなのでレベルを上げるのは、比較的簡単だったと思います。また、エラスマスはシーケンサーだけでした。どっぷりやっていたのが、高濱くんとダニエルですね。ただ、日本での開発で問題だと思っているのは、日本人は英語が読めないという点ですね。国内のデベロッパーの人たちには、ネット上のリソースにアクセスできない方が多いのではないでしょうか。

たとえば、ダニエルはお昼ご飯を食べながらGDCの講演を見られますよね。普通の日本人だとそれができないのではないかなと。聞き取れても、それを読み取って解釈してというのを素早くはできない。そこの打開策は見つからないんですよね。ただ高濱くんは好きなことをするためになんでもする子なんですよ。彼は「Warhammer」が好きで、ルールブックはすべて英語ですが内容を理解できる。そういう姿勢があったので、ダニエルが教えることで彼のUE4への理解はどんどん深まっていきました。Unreal Engine 4が、情報を可視化できるツールだというのも大きいですね。高濱くんは新入社員でゲーム開発経験がないんですよね。それでもできるようになってきました。

河崎氏:
おっしゃるとおり英語だとラーニングリソースが豊富で、情報を集めやすいんですけど、日本語が足りていないというのは我々の責任なので、襟を正す思いです……。

河崎高之氏

由良氏:
(笑)

河崎氏:
ということは、基本はラーニングリソースを使って学習した感じでしたか。

ダニエル氏:
基本はツールを使って、別のコードを見ながら学びました。Unreal Engineは、どう使うかというのもわかりやすいとは思いますね。勉強会などもありますし。英語については私は検索する時は、実はすべて英語ではなく、日本語を使っている時もあります。

 

海外技術と日本技術が融合

河崎氏:
グラフィックの話をさせてください。『TINY METAL』のグラフィックはユニークなタッチが実現できていると思うんですが、ゴールとして最初から見えていましたか。

由良氏:
ダニエルの落とし込みもあるんですが、デザインは高橋ゴウさんというトイロジックの方に作っていただきました。彼の存在は大きかったですね。彼はずっとニューヨークで、マーベルの下請けの会社に勤めていたんですよね。マーベルは大体下請けに投げちゃうので、彼は日本人だから絵が描けるだろと投げられて鍛えられたようです。それから彼は、アクワイアで働いていました。だから絵が「日本」だけじゃないバランスのいい絵になっているんです。日本人から見てもわかりやすく、外国人から見ても納得しやすいところをあえて狙いました。

河崎氏:
高橋さんのハンドスケッチがあり、コンセプトアート的に目指す場所になったと。

由良氏:
そのデザインをベースにして、森賀さんらアートチームによってモデルなどが作られた感じです。

河崎氏:
キャラクターだけでなく、戦車の質感や武器の質感がユニークで、すごく独特なシェーダーだと感じました。

由良氏:
ダニエルが調整したのと、森賀さんに対して細かくディレクションしました。最近は森賀さんとの契約も終わりましたので、たとえばカラーブラインドモードなどの調整は全部ダニエルがやっていますね。

河崎氏:
シェーダーを組まれていく上でのご苦労などはありましたか。

由良氏:
苦労した点はUnreal Engine 4と関係ないところが多かったです(笑)。たとえば僕らはカラーブラインドじゃないので、ギア(※)は少しカラーブラインドがあるので、彼に協力してもらわなければいけないというのはありました。

※ギア 
AREA 35のスタッフ。

河崎氏:
出したい色や質感はすぐに出せましたか。

由良氏:
すぐに出せました。心配したのは最適化の件なんですが、そこはダニエルに頑張ってもらうところでした。ツールとしては、やろうとすればしっかりできるという状況でした。

ダニエル氏:
苦労というのはないですね。ツールは、最近ではこの一か月間とても勉強なりました。昔の日本のライティングの方法はSun directional light(※)でした。Unreal Engine 4でそれをやると重いんです。なので、Unreal EngineにあるSkylight(※)を使ってひとつだけのdirectional lightにすればパフォーマンスと美しさが向上しました。元からあった機能なんですが、使い方を知らなかったんです。

※Sun directional light
太陽の自然な投射表現や反射表現を、複数のDirectional Lightsを使って擬似的に出そうする手法。Directional Lightは比較的重たいライトなので、それを複数使うと処理負荷に影響する。また、あくまで擬似的なのでクオリティが出しにくいという欠点もある。

※Skylight
空全体から降り注ぐ光をシミュレートするライト。太陽光をDirectional Lightとし、その他の空からの光をこのSkylightで計算することで、軽量かつリアリティのある絵を作ることができる。

河崎氏:
Unreal Engineの独特の機能に慣れるのには少し時間が必要だったと。

開発画面

由良氏:
こういった作業は、普通テクニカルアーティストがやる問題なんですが、うちは予算の関係上人員を増やせなくて(苦笑)。

河崎氏:
ダニエルさんがリードプログラマーでもあり、テクニカルアーティストでもあると。完璧超人ですね。

ダニエル氏:
ライトを使う例は、日本の会社では意識されていないものだと思います。どの人も「サンかけしよう」と言っています。海外の人はSkylightとGlobal Illumination(※)の技術を使っている。日本は10年前のやり方をやっていると感じますね。

※Global Illumination
CG用語で、主な光源からの光の直接照射だけでなく、周囲の物体からの反射光や照り返しまで計算して描画するライティング手法を意味する。

河崎氏:
日本のアニメ調のグラフィックを表現する上では、キャラクターのここにライトを仕込んでピンライトを当てたいというニーズが未だに高いので、そうしたやり方とUnreal風のリアルな照明をどう組み合わせるかというのは、サポートの方でよく問い合わせがありますね。

由良氏:
ダニエルはサウンドもやったよね。

ダニエル氏:
サウンドシステムは、必要な機能は全部入っているという感じですね。

由良氏:
Unreal Engineのサウンドは初歩的なシステムだと思われるかもしれませんが、サウンドディレクターとしてはあれで十分だと感じました。ほかの部分は音の作業員がいればなんとかなります。ループする時にフェードアウトしなければいけないという人もいるんですが、ハードループで作曲すればいいんです。マーカーをつけなくてもできるんです。別の曲を先にイントロだけで先に流して、途中でつなげればいいんです。音のつなぎは作曲家の方がやればいいんです。工夫さえすればUnreal Engineの機能で、作業していけます。

河崎氏:
Unreal Engineのサウンドシステムは使いづらいと言われるんですが、神戸にプラスシグナルというサウンドに特化した会社があるんです。大久保さんというカプコンやコナミで働かれていた方がやられているんですが、彼はUnreal Engineのサウンドツールが大好きで、2年前のUnreal Festで「もっとUnreal Engineのサウンドを使って!」と言ってくださりました。サウンドに詳しい方にそのようなことを言ってもらえると、嬉しかったりします。

由良氏:
ぜひお会いしたいですね。ちなみにフランジングというと、同じ音がズレたりすると雑音みたいなものが入るんですよ。「ブオオオオオ」という音ですよね。少しズラしただけで出ちゃうんですよね。ブランジング対策をするのには、コードを書けばすんなりと対応できるので、そんなに難しいツールだとは思わなかったですね。

 

目指すべきイメージは最初からあった

河崎氏:
少し話は変わりますが、ゲームデザインの方を聞かせていただきます。シミュレーションゲームなので、敵のAIやイベント処理などをする必要があると思うんですが、そのあたりはブループリントでやられましたか。

ダニエル氏:
敵のAIも含めて、ほとんどのものはC++で作りました。プレイヤーがコントロールしている時にはブループリント。全てのフレームにおいてプレイヤーが何もさわっていなければ、ブループリントは動きません。全部C++です。延長が必要で、アニメーションがやりたいならブループリントがおすすめです。ただ全てのフレームが動くとなるとブループリントは早い段階で重くなります。なので、使いませんでした。プレイヤーがボタンを押しているといろんなブループリントが動きます。 UIとプレイヤーのインプットは全部ブループリントで、システムは全部C++です。ユニットの数やユニットの位置、ユニットのアニメーションですね。バトルコアはUnreal Engineと関係ないもので作られています。

河崎氏:
なかなか少人数規模のインディータイトルで、AIを全部C++で書けてしまうチームは少ないと思うんですけど、そういう意味ではダニエルさんの存在が大きかったんでしょうね。ゲームバランスのところでも、AIのソースをいじりながら調整していかれたんですか。

由良氏:
そのためのライブデータ(調整用に作られたツール)になるんです。高濱くんがそれを使って調整をひとりでやってくれました。ツールを作ったのはダニエルで、それで高濱くんが調整を進めてくれた形ですね。

ダニエル氏:
ゲームの中には、ふたつのAIがありました。Behavior AIとPlanning AIですね。『TINY METAL』にはBehavior AIがあまりありませんでした。ただ、finite state machine(有限状態機械)のアニメーションを使っています。Planning AIはいじる時があまりなく、ちゃんと計画を作っていれば、プランナーが変更する部分はないですね。

由良氏:
ユニットの強さとかの変更は、高濱くんができるんですが、AIの調整はダニエルの方になりますね。

ダニエル氏:
AIの調整が必要のない期間も長かったです。AIはゲームのシステムを知っているので、ユニットのステータスを判断してデータから反映させています。

河崎氏:
会話シーンや特定のマスに到達すればイベントが発生するといった処理は、ブループリントですか。

ダニエル氏:
その処理はダイアログシステムの上で、半分はC++、UIはブループリントです。何を見せたいのかの判断はC++でやっていますね。

開発画面

河崎氏:
ほかのゲームと比べると、相当C++でカバーされたエリアが広いんですね。

ダニエル氏:
アニメーションとUIとサウンド以外はC++です。Unreal Engine上でUMGを使用するとコントロールをサポートするシステムがないのでC++を使用しています。

河崎氏:
ゲームとしては完成形のイメージが最初からあったんですか。

由良氏:
ゲームシステムとしては『ファミコンウォーズ』というイメージありました。かといって実際に『ファミコンウォーズ』と同じというわけではなく、いくつかの点では大きく異なっていまして、たとえば演出がそうですよね。3Dならではのセンスが求められるので、そこは全然違います。

河崎氏:
システムの面はベースがありましたが、演出面ではトライ・アンド・エラーがあったと。

ダニエル氏:
由良さんはイメージをしっかり持っていたんですが、私はビジョンがなかったです。なので、途中で「ちゃんと動いてないし、画質はひどいし」と文句を言ってしましたし、不安を抱えていましたね。

由良氏:
「これはできないよ」というのは言われていましたが、特にパッチの後は自分の思ったとおりにはなっていましたね。最初はアルファ以前にプロトタイプのデモ版なども配信していましたが、そこからゲームプレイは変えました。

あの時は今とは別にディレクターがいらっしゃっていて、少しごちゃごちゃっとしていたのでシンプルにしました。僕が軽く引き継いで、そこからダニエルにゲームプレイのデザインを任せました。なぜなら僕たちは考え方が結構違うので、喧嘩しちゃうんです(笑)。Kickstarterの後からスムーズにいった形ですね。前のゲームプレイは一度解体しました。前のゲームプレイはタクティクス型のゲームのように全ユニットにタイマーがありました。どれぐらい早く動けるかを計算していて、それはまさしくタクティクスでした。イメージしていた『ファミコンウォーズ』のような作品ではなかったんですよね。今はもっと『ファミコンウォーズ』に近いデザインになりました。

ゲームとしては、パッチでこれまでに6マップを追加しています。『近日解禁』予定のマルチプレイももうすぐ解禁され、マルチプレイ用のマップも追加される予定なので、盛りだくさんで遊んでいただけると思います。

河崎氏:
最初の素の状態でも、かなりボリュームがありましたね。

由良氏:
素ではキャンペーンが19で、スカーミッシュは53。今は70ぐらいあります。全部高濱くんがやってくれています。少人数での制作を実現するために、ダニエルがマップクリエイションのツールを作ってくれたことで、プランナー1人でも十分なマップを作ることができました。

河崎氏:
ちなみに、Unreal Dev Grants(※)に応募して受賞されましたよね。あの時申し込もうと思われた背景や、賞金をどう使われたかお聞きしていいですか。

※ Unreal Dev Grants
アンリアル エンジン コミュニティに価値ある貢献をした優秀なデベロッパーに対して、付帯条件がなく無条件で使用できる資金を提供する基金。

由良氏:
当時は、いろんなところからお金をもらわないといけないという状況でした。そういう理由でUnreal Dev Grantsは、開発初期にダニエルに申し込んでもらいました。すぐ申し込めて、フォームを書いて、ビルドとビデオを提出しました。だいぶ前なので記憶が曖昧ですが…。しばらく返事がなかったので、だめだったのかなと思ったんですが、PAX Westの直前に連絡がありまして、Dev Grantもくれるし、Dev Grantだけでなく70万~80万円レベルのブースも貸してくれると言ってもらえました。資金はスタジオの維持費に使いました。

河崎氏:
ハワイに豪遊しにいったということはないんですか(笑)。

由良氏:
ないですね……。ただ、本当に助かりました。プロジェクトはどうなるかなと悩んでいた時期に、受賞して次の週とかにすぐに支払いもしてもらえたので。ありがとうございます。

河崎氏:
今では日本でもお申込みいただいて、受賞される方もいらっしゃるんですが、『TINY METAL』の頃は初ぐらいでしたね。

――Dev Grantsの資金によってスタッフの待遇が上がったと。

由良氏:
そう言いたいんですが、生き延びられたというのが正しいですね。我々小さなスタジオにとっては死活問題なんです。

――日本のインディーデベロッパーで、フルでやられているのは珍しいのではないかと。

由良氏:
あまりいらっしゃらないですよね。大体が土日ですよね。そういう意味で、土日で進められている方はすごいですよね。同人の方も好きでやられていますが、どこか底力を感じます。そうした底力を出せるようにうちも広いペースを用意して机なども発注しました。ダニエルも小さい机だったら嫌だって言ってましたし(笑)。

河崎氏:
Epic Gamesの本社でゲームを作ってる人は、ひとりにつきモニター4つが用意されていますね。Unreal Engineで作業するには、1モニターは厳しいんです。

では、そろそろまとめに入らせてください。小さいチームがUnreal Engineを使うという経験をまとめていただけると。

由良氏:
大きな問題が起きないので、安心して使えましたね。心配事もそれほどないので、ゲーム作りに専念できたというのが大きいですね。厳しいことをいうと、ゲームエンジンを使う上ではゲームエンジンにはそういうものであってほしいと思っています。そして、それができるのがUnreal Engineなのかなと。僕たちからするとAAAではないので、ロイヤリティのシステム(※)もいいかなと思ってるんですよ。前金もお渡ししなくていいですし、成功すればEpicさんも喜ぶというのはとてもいい取引だと思います…。まあタダだったらもっといいんですが(笑)。

※ ロイヤリティのシステム Unreal Engine 4の収益システム。同エンジンを使った商品から得られた粗収入については、暦四半期ごとに、プロジェクト1 つにつき 3,000 米ドルを超えた分に対して 5% のロイヤリティが課せられる(Unreal Engine 公式より)。

河崎氏:
インディーのスタートアップの方にはそう言っていただけるんですが、一度大ヒットすると途端にロイヤリティに不満を持たれますね。1%が1億円とかのレベルになると…。

――最初はEULA版(無料)だったんですよね。途中でサポートをつけたという形でしたか。

河崎氏:
そこは、サポートはうちの方から提案した形ですね。最初はどうパブリッシングするかも決められてなかったので、途中で僕がお話させていただきました。最終的にどこかしらのパブリッシャーとお話がつくなと思ったので、カスタムライセンスの評価版をお渡しして、サポートさせていただく形になりましたね。

――サポートというと、大きいパブリッシャーの方が受けるイメージなんですが、小さなスタジオでもいけると。

河崎氏:
もちろん、カスタムライセンスの場合だと最初にライセンス料が発生するんですが、そこをカバーできる手当てがあればうちのサポートをご提供できます。やっぱり、コンソールの最後のサート回りになるとサポートがあるといいかなとは思います。

――ちなみにコンソール対応・最適化にはどれくらい時間がかかりましたか。

由良氏:
そこはですね、元からコンソールをやると決めていたんです。やはりデザインする時点で最初から考えて、たとえばスイッチのコントローラーなども想定しつつ開発を進めていました。体感的にわかるように前もってやったので、なんの問題もなかったですね。

河崎氏:
実はそこは大事なポイントなんです。PCでフルで作り、最後にコンソールの実機に持っていこうとすると破綻します。お客様にも言っているんですが、早い段階で開発機やテストキットで試してもらうことを勧めています。よくあるのが、PS4想定のPCで進めて破綻するというケースですね。細かく実機でチェックして進めるのが重要になります。それをやられていた感じですよね。

由良氏:
まさしくそうですね。簡単に言えば、キーボードとコントローラーを同じというイメージで作っていました。コントローラー設計を担当するプランナーもいないので、工夫しました。それがちょうどよかったのかなと。もう少し人がいればファンシーできたのかなとも思いますが(笑)。

――たとえば、『TINY METAL』はお話されていたようにビジュアルが豪華ですが、そうしたビジュアルでもニンテンドースイッチにスムーズに導入できましたか。

由良氏:
できました。ただ、開発しながら最適化はかなりしましたよ。

ダニエル氏:
最初動かした時、ニンテンドースイッチ版は7fpsでした。ただし今だとPCとPS4用と同じレンダリング機能で、30fpsで動いています。

由良氏:
これはうちの問題なんですが、スクリーンが小さいと漢字が読みづらい問題があって、それで大きくすると、一方で他のハードウェアでの文字が大きくなりすぎるので、適切なサイズを探すのに時間をかけましたね。

河崎氏:
ドックモードと携帯モードで大きく変わるので、字についてはほかの開発者さんも気にされていますね。

由良氏:
そういう意味でも、ハードごとにそれぞれ手間がかかるんですが、しっかりとやりきれました。原則残業しないという形で進めましたし。Blizzardが「出せる時に出す」というやり方でやっているように、うちもマルチプレイは4月中に出すといっているんですが、4月は超えると思います。というのも、4月に出すために取り組めばどこかでダメージを受けると思うんです。

僕たちの1.07がリリースバージョンでして、それはうまくいったんですが、あとになっていろいろ入れればよかったかなと思います。うちはアップデートをずっと続けてきましたので、ほかのソフトとは違うんですよね。今度の1.1はかなり大きなアップデートになっていて、マルチプレイの導入を中心にゲームがガラッと変わります。それもファンには喜んでもらえているようです。

河崎氏:
インディーゲームで無料アップデートを続けるというのは、珍しいですよね。ほぼDLCですね。最初からそのように考えていましたか。

由良氏:
最初から考えていました。パッチはあてなきゃいけないものですし、コンテンツパッチも出せる範囲で出したいと思っています。中国パッチを入れた時は旧正月をテーマとした万里の長城をイメージしたマップなどを作りました。

――それをする余裕はどうできましたか。

由良氏:
余裕はないんですが、私達はやらなければいけないと思っているので、やっています。ちなみに今は、他社さまの外注を受けながら開発を進めています。Unreal Engineでやり方がわからないといってうちにくる案件も増えてきました。おかげさまです(笑)。

河崎氏:
こちらこそですね。ありがとうございました(笑)。

『TINY METAL』はPC/PlayStation 4/Nintendo Switch向けに販売中。記事内にもあったように、今後もアップデートが実施されるとのことなので、シミュレーションゲーム好きや気になった方は、手にとってみてほしい。

ニュース

Indie Pick

インタビュー

レビュー・インプレ

Devlog