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引き続きGTMF 2016大阪会場Meet-Ups特集をお届けする。第3弾は、株式会社ヒストリア代表取締役・佐々木瞬氏にフォーカス。

 

Unreal Engine 4専門会社のツールセット大公開

株式会社ヒストリア代表取締役 佐々木瞬氏
株式会社ヒストリア代表取締役 佐々木瞬氏

プレゼンの準備を光の速さで済ませ「できる男」っぷりを披露した佐々木瞬氏は、ゲーム制作のかたわらコミュニティ活動も積極的におこなう株式会社ヒストリアの代表取締役。株式会社ヒストリアはUnreal Engine 4を専門に扱っている開発会社であり、実績数の多さと知名度の高さはみなさまご存知のとおり。

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プレゼンでは「Unreal Engine 4専門会社のツールセット大公開!」と題して、UE4専門会社がどのツールを使い、どのような開発環境なのかについて語った。社内のコミュニケーションツールは「Slack」、逆に社外向けにはセキュリティ面や実績などで「Chatwork」を選んだそうだ。ナレッジマネジメントのための社内Wikiとして「Confluence」を使い、知識をためるだけではなく、履歴・通知・コメントといった機能があるためプロジェクトの仕様書自体も書いているという。

Unrealにおいてはバージョン管理ツール「Perforce」を使っており、その理由としてEpic Gamesも導入しているということと、バイナリに強いという特徴をあげた。そして、タスクマネジメントには「Trello」、CI(継続的インテグレーション)には「Jenkins」、モバイルでは「DeployGate」を利用していると説明し、本当にツールセットの紹介だけで佐々木氏はプレゼンを終えた。

[パートナー企業: 株式会社東陽テクニカ]

プレゼン終了後、「髪の毛を切ったら重心がずれて体が疲れるようになった」と語る佐々木氏にお願いし、最近の株式会社ヒストリアについてのお話をうかがった。

 

VRはコンテンツとビジネスで勝負をするフェーズに

――今日のヒストリアさんは、あまり自社のアピールをされなかったように思います。

佐々木瞬氏:
ああ――そうですね、しなかったですね(笑)

 
――Meet-Upsのプレゼン内容には、使用しているツール群の紹介と書いてありましたが、本当にそれだけなんだと(笑)

うちはいつも商売っ気ない感じでやらせてもらっています(笑)主催でイベントをやっても、求人の話とかほとんどしないですよ。

 
――イリンクスさんのプレゼンと内容がかぶってしまったという。

そうなんですよ。あちらのほうが面白かったという声をいただいて、うちは前座としての役目を果たしたのかもしれません(笑)

 
――そこでですね、ほかに伝えたかったことがあったのではないかと思ったんですが。

そうですね。会社をアピールしないと広報さんに怒られちゃう……。

 
――いまVRの案件は増えていますか?

増えてます。いまVRで動かしている人数だと6割ぐらいかな。

 
gtmf-2016-osaka-meet-ups-historia-002――ノンゲームのほうが多いですか?

半々ですね。そもそもノンゲーム案件もほぼゲームだったりして、ゲームとノンゲームで分けるのは難しいんですが……案件数だと規模が小さいノンゲームのほうが多いです。ゲームはやっぱりまとまった規模でないと、まとまったものにならないので。VRの世代がいままで「驚かしコンテンツ」だったと思うんですよ。VRってこんなのができるよってやって、うわーっとか。そこを脱する時期にきていると思っていて、ゲームならばちゃんとお金の回収を考えて、コンテンツ力で、ビジネスで勝負をするフェーズに入ってきたかなと。

 
――ついにですね。

そうですね。驚かし系のコンテンツはローンチにあわせてけっこう出ると思うんですけど、今から作るんだと、それだとやる意味がなくなってきてるのかなという気はしています。

 
――ここからが本当の。

ここからが本当のビジネスとしての土台になって、次にVRで語られるとしたら、こういう方法でビジネスをまわしているとか、これだけしっかりしたコンテンツを作っただとか、VRは長時間というところが難しいのでそこをどう考慮してゲームデザインしたかとか、そういう話が増えてくるんじゃないかなっていう気はしていますね。

 
――新しくVRのコンテンツの発表があると、ヒストリアさんの名前を見ることが多いです。VRについての研究など、どれぐらいの期間やられているんですか?

ありがとうございます。じつはそんなに「VRやるぞ」という感じではなかったんです。最近ちょっと考えるようになりましたけど。案件を受けていたら2年間VRずっとやってたみたいな。もちろん好きだからやっているんですけど、ビジネスとしてはリスキーだなと思っていたこともあって。いままではうちみたいな小さなスタジオがオリジナルで、うちの完全受託で好きにやれるのはモバイルかなと思ってモバイルに注力してたんですけど、VRの案件がずっと続いていてすでに商業ベースで4本リリースしているんです。考えてみたら、そういう企業って日本でも数少ないなと。

 
――Unreal Engineのヒストリアさんから、VRのヒストリアさんになりつつあるのかなと思ったり。

うーん……まったくそんなことないんですけどね(笑)ただ最近はビジネスになりそうなにおいを感じてきたので、であればこっちに振るのもありかなと。なにより作っていて面白いですし、うちの会社の少人数でハイエンドコンテンツを作るという方向性ともマッチしてます。

 
――今年のアンリアルフェス大阪ではVRのお話をされましたよね。

『アーガイルシフト』ですね。

 
――ヒストリアさんの経験が生きたお話のように感じました。

Unreal Engine 4実装における技術と実装レベルの細かい気づかいに関してはまさにその通りです。ゲームデザインに関してはバンダイナムコエンターテインメントさんだったので、もともとのVRの知見がバンナムさんにあったので、うちがゲームデザインを語るのは違うかなと思っています。

 
――バンナムさんもVR強いですよね。

推してますね。『サマーレッスン』から始まる一連の取り組みは、本当に素晴らしいと思っています。

 
――そういえばヒストリアさん、『ネコぱら』のエイプリルフールのVRコンテンツがありましたよね。

ありましたありました。あれは短期間で作り上げました。モデルとかはいただいていたので。『ネコぱらいぶ』にはHMD版と360度動画版があるのですが、そこはノンゲームで得た知見が活きています。うちが建築用のデモを出したときに、モバイルでという要望がすごく多くて、なぜかというと販売員さんが持ってるのはiPadが多いんですよ。でもモバイルとPCって作り方がぜんぜん違いますし、モバイルだと絵の品質を出せないですよと。でもそれは嫌だと。もうっ!となって、よくよく考えるとウォークスルーしたいんじゃなくて見回したいってことだったら、360度動画でいいんじゃない?と。PCはウォークスルーができて、それをレンダリングして360度動画にしたものはモバイルで見回せますと。同じリソースで二つ作れますから、『ネコぱらいぶ』がまさにそうですね。Oculusとか持っている人はフルの体験を、あとは歩き回れたりもするんで。キャラの下にもぐりこんだりもできるんですけど、持っているユーザーが少ないので建築の方法で360度動画を。それがひとつのソリューションだなと思って作る方法は研究していたので、『ネコぱらいぶ』でもそういうふうにやりましょうと提案をして、ビルド版と360度動画版をやりました。

 
――どちらかという硬派なイメージがあったヒストリアさんだったので、『ネコぱらいぶ』は本当にびっくりしました。

社内に萌え系を好きな人間がいて、自分も嫌いじゃないですし、案件がきたときに「大変な時期だけどやりたい?」って聞いたら「やりたいです」という声があがって、まかせていたら要件にない機能をぶっこんでたり(笑)まあこれが理想の開発なのかなと。そんな感じで楽しみながらやりました。

 
――スタッフは全員で何人ぐらいですか?

いまだと社内は18人ですかね。外部の常駐をあわせて20人ぐらいですね。

 
――もっといらっしゃると思ってました。

よく言われます(笑)今年の10月で三周年なんですよ。最初は一人で始めたので、一年前とかで10人やっと超えたぐらいですよ。それでもこれだけの本数の実績を出せました。リリースした本数には自信がありますね。

 
――ところでヒストリアさんの競合といいますかライバル会社ってあるんですか?

Unreal Engineで同じような取り組みをしている会社という意味では、ない……と思います。Unreal Engine専門会社というニッチを拾っていると思っていただければと。Unreal Engine自体はメジャーになりましたが、専門会社となると他にほとんどないですからね。そこに絞っているからこそ、Unreal Engineを一番うまく使える会社でありたいとは常に思っています。

 
――では「ライバルなし」とだけ書いておきますね。

やめてください(笑)そもそもうちの会社はUnreal Engine専門会社ではありますが、自分たちのことを技術者集団だとは思っていません。Unreal Engineを使って面白いゲームやコンテンツを作る会社のつもりです。そういう意味では、一般のゲームデベロッパー全般がライバルだと思っています。

 
――ヒストリアさんの求人を見たときに、ノンゲーム担当のメンバーを募集されていました。

なかなか苦戦しています。応募はあるんですけど、なかなか応募者と採用側のマッチングが難しくて……。いままで業界になかった職種なので、難しいのは当然なのですが。ノンゲームで別枠にしているのって、ゲームを作りたい人ではなくてエンタープライズがやりたい人を募集しているんですよ。ノンゲームの専任としてゲームを作りたい人を入れちゃうと、横でゲームを作ってるスタッフがいるわけじゃないですか、そうなるとあまりよくないですよね。そうはしたくないなと。

 
gtmf-2016-osaka-meet-ups-historia-003――ノンゲームの時代ですか。

時代は来ますよ。ゲームの技術がいま方々から求められています。ひとつがゲームエンジンの登場によりコストがガクッと下がったためです。ゲームエンジンが普及していなかった頃はノンゲームの案件で何かをやろうとすると「じゃあ数千万から」みたいな話だったので。また、もうひとつは、リアルタイムレンダリングの技術が現実と見間違うくらいまで進化したことが要因です。

インタラクティブコンテンツってリアルタイムレンダリングの技術で、それをガチでやってるのってゲームしかないんです。ゲームの技術がほかの業界でも必要とされているんだけど、それを使って何をできるかというところまで発想が及んでいないし、発想が及んだとしても誰が作れるの?と。ゲームを作りたい人はゲームを作るから、なかなかこっちには食いついてくれない。でも、ここが面白いと思っている人が絶対にいて、やりたいと思っている人もいる、そこには市場があるはず。

ノンゲームっていうくくりですけど、面白い案件ばかりなんですよ。前にうちが出しているものだと、レゴブロックを置いて家を作ろうという「GRID VRICK」です。レゴを置いて間取りを作るとUnreal内で家が出来上がるんです。この色のブロックを置くとソファーが設置されるとか、けっこう面白いですよ。NEXTさんっていう賃貸のHOME’S(ホームズ)っていうウェブサイトをやっているところの新規事業として企画されて、Unreal部分はうちが制作に関わっています。

そうやってゲームの技術が社会の役に立つコンテンツに使われ始めているので、そこには市場があるけどやる会社もなくてできる会社もない。ゲーム会社以外が作ると技術力の差があるというところで、ノンゲーム事業を打ちたい。っていうのを最近提唱しています。

 
――お話を聞くと、たしかにノンゲームの時代がこれから来そうです。

ゲーム以外で日の目を見るというか生活に役立つところで花開く境目にいるなと。

 
――今後ゲーム業界からノンゲームに転職していく方が増えるかもしれないですね。

転職者が増えるかはわかりませんが、そこに興味がある人は今がチャンスというのは間違いないと思います。ゲームの人たちって楽しませるのが好きだし、ゲーミフィケーションって言うじゃないですか、そっちの感覚がある人がそういうのを作っていくと、世の中もっと変えていけるんじゃないかなと思うんですよ。そこをうまくできれば、一般のアプリとかももっとスタイリッシュになるだろうし、もっと気をつかったUIになるだろうし、3Dもたくさん入ってくるからできることも増えるし、って思うんです。

 
――ポテンシャルがありますね。

ぱっと見て現実と見まごうものがさっと作れるということは、シミュレーション系での活躍の場が広がったということです。建築系のウォークスルーなんて最たるものですよね。現実と見まごうものがすぐに作れるから価値がある。これがショボかったら価値がないです。現実の再現がバーチャルでできるようになった。しかも低コストで。というところに価値があります。

 
――最後にアピールしておきたいことがあればお願いします。

うーん、なんだろう……先週誕生日でした(笑)

 
――佐々木さんの写真がプリントされたケーキが、バラバラに切られてましたね……

「佐々木さんの右目いるひと~」みたいなことになっていました(笑)

 
――求人の話とかはいいですか?

あ、忘れてた(笑)この話を聞いて興味を持ってくれる人がいればHPの求人ページまでお願いします。

 
――これからもヒストリアさんが作り出すコンテンツに期待しています。ありがとうございました。

 

[聞き手: Shinji Sawa / Minoru Umise]

[写真: Mon Gonzalez]

 

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GTMF(Game Tools & Middleware Forum)はアプリ・ゲーム開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント。2003年にスタートし、今年で14年目。大阪会場は2016年7月6日、東京会場(事前登録受付中)は7月15日に開催。