開発者の誤対応により大量のネガティブレビューが投下されたインディー作品、償いの無料配布によりプレイヤーが急増する

ここ数年のうちにインディーゲームと呼ばれる作品の配信数が加速度的に増えたことを受け、業界関係者の間ではインディー市場の現状についてIndiepocalypse(インディーポカリプス)と表現されることがある。これから名を広めようと考えているインディースタジオとしては、頭角を現すことが日に日に難しくなっていく厳しい時代に突入しているわけだが、そうしたなか、直前まで同時接続プレイヤー数1人以下であった無名のインディータイトルが、いきなり同時接続10万人以上の大盛況ぶりを見せるという異例の事態が発生した。

突如注目を集めたタイトルの名は『Evolvation』。2017年2月よりSteamで販売されているマルチプレイ・アリーナ対戦型のスペースコンバットゲームだ。オランダの2人組開発者HyperReutsが手がけるUnreal Engine 4製の作品であり、低スペックPCでも楽しめる、ハイクオリティのマルチプレイ・スペースコンバットを体験してもらうというのが開発陣の目標となっている。機動力が高いかわりに耐久度が低いHighspeedや、攻撃力が高めでバランスの取れたFighterなど5種類の機体クラスから選択し、個人もしくはチームでのマルチプレイ対戦に挑む。

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開発元HyperReutsのEric Ruts氏は、Steamニュースページにて、プレイヤー数が急増した経緯について説明している。同氏はゲームを活性化させるため、Steamキー1万部の無料配布を決行。しかしながら、配布したキーの大半はゲームをプレイするためではなく、不正な売買目的で使用されていることに気づき、対策に乗り出す。そこで、まだ有効化されていない(取引が繰り返されている最中であろう)Steamキーを無効化しようとしたのだが、誤って有効化済みのキーまで無効化してしまった。

開発者のもとには、急にゲームを遊べなくなったプレイヤーからの批判的なコメントが殺到し、Steamストアではネガティブレビューが増加。ボタンの押し間違えによりゲームの活性化プランを棒に振ってしまったと最初のうちは心を痛めていたが、コミュニティに向けて経緯を説明し、状況を正すためにできるかぎりのことをすると発信していくうちに、開発者を支援・応援してくれる人が増えていったという。

そしてValveに対するSteamキーの再発行もしくは再有効化の依頼が失敗に終わり、他の選択肢を模索。マネタイズすることよりも、ゲームを遊んでもらうことの方が重要であると判断し、ゲームの一時的な無料配布に踏み切ったという。10月8日の無料配布前には9.99ドルで販売されており、リリース当初から平均同時接続プレイヤー数1人未満の状態が続いていた(2018年3月以降は平均0.1人と、マルチプレイゲームとして機能していなかった)。ところが10月8日の無料配布がうまくSNSを通じて拡散され、同日のピーク時同時接続数は17万人に到達。10月10日には5000〜6000人台にまで落ち着いているが、つい先日までほとんどプレイされておらず、開発者いわく売上は100ドル以下という無名のインディータイトルであったことを考えると、異例の盛り上がりぶりと言える(SteamDB)。

同時接続プレイヤー数の推移。Image Credit: SteamDB

『Evolvation』を起動すると、開発者からプレイヤーに向けたメッセージとして、小さなスタジオであるがゆえに大きなプレイヤーベースにリーチすることが難しく、他のプレイヤーを見つけにくい場合があると説明される。ひとまず今のところは、そうしたプレイヤー不足を気にする必要がなくなったわけだ。

とはいえ、それまでほとんどプレイヤーが存在しなかったゲームであるがゆえに、18万人近くの同時アクセスは想定されておらず、当然サーバーが処理しきれずパンク。多くのプレイヤーがゲームを遊べない状態が続いた。サーバーのアップグレードに向けて対策を始めてはいるが、先述したように本作の総売り上げは雀の涙ほどしかなく、大規模なアクセスに耐えうるサーバーをセットアップする資金は残念ながら無いとコメントしている。ただ今ではプレイヤー数が落ち着いてきていることもあり、ピーク時よりは安定してプレイできる。

起動画面

冒頭で述べたIndiepocalypseというワードについても開発者は認識しており、そのIndiepocalypseの真っ只中でゲームをリリースすることになったことから、プレイヤー人口を集めることに苦戦していると述べている。Steamキーの大量無料配布および失敗談も、そうした過酷な状況の中でなんとかプレイヤー人口を増やそうという試みの中で生じたものだ。開発者自身が皮肉なことだと認めているように、これまで誰もゲームを遊んでいなかったのに、開発者の誤対応を機にこれまで考えられなかったほど多くのプレイヤーに興味を持ってもらうことができた。一連の騒動が起きなければ、無料配布および大幅な人口増は起きなかったかもしれない。

Ruts氏はコミュニティに向けて感謝の意を伝えるとともに、誤対応について「たくさんの否定的な言葉を受け取り、それらに対処していくうちに深い悲しみに包まれていきましたが、誠実に対応することで、これほど多くのポジティブなフィードバックをいただけるようになるとは、予想だにしていませんでした」と自身の想いを述べている。「ぜひゲームを遊んでみてください!ただ、とても難しいゲームであることは忘れないでね」。

『Evolvation』は10月9日に大型アップデートを配信しており、パフォーマンス改善、パッケージサイズの200%減、大量のバグ修正などが盛り込まれている。今後も2つの新マップと新ゲームモードの追加、Linuxサポートなどを予定。現在もゲームは無料配布中。配布期間は未定なので、気になった方は今のうちにインストールして試してみよう。なお開発者をサポートしたい方向けには、公式サイトにてPayPalリンクが掲載されている。

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