「Unityではさらにパワフルなゲームが動くようになりました。」Unityエンジニア黒河優介氏【GTMFミニインタビュー】

ゲーム開発ツール&ミドルウェアの祭典「GTMF(Game Tools & Middleware Forum)2018」
の展示者にお話を聞く本企画。第二弾はユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのディベロッパーリレーションズマネージャー/エンジニアの黒河優介氏にお話をうかがった。

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ゲームエンジンとしては国内外で完全に浸透したUnity。GDCでは2018年のロードマップを公開し、多岐にわたる方向性に力を入れていることをあらためて表明した。その中のひとつが、ハイエンドへの注力だ。次のレベルのレンダリング技術実現を狙うUnityは、具体的にどのような機能を武器にしようとしているのか。

――まずは自己紹介をお願いします。

黒河氏:
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの黒河優介と申します。主にモバイルタイトルのサポートをしております。私自身、長い間ゲーム業界にいたので、その経験を生かしてお客様のタイトルをサポートしています。

――今担当されている業務というのは、主に大型タイトルのサポートになるのでしょうか。

黒河氏:
はい、大型タイトルのサポートエンジニアをやっております。

――Unityというと、インディータイトルに強いというイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。そんな中、大型タイトルを支えるエンジニアとして、そしてUnityとして、どういったところを売り出しているのでしょうか。

黒河氏:
いままでのUnityは結構ブラックボックスなところがありました。大きなタイトルになればなるほど人もたくさんいて、力のあるエンジニアさん、アーティストさんが数多くプロジェクトに関わっています。ですがUnity側の制約があるせいで、本当はもっとやりたいことがあるのに、ここから先はUnityの中だからいじれない、という限界をつくってしまっていたのです。そこで2018年からは内側の、これまでよくわからなかった部分というのをいじれるよう、皆様に開放しております。そのおかげで、より一層、Unityを使ってマシンのスペックを生かしたパワフルなゲームをつくれるようになりました。

――その一環として発表されたのが、スクリプタブルレンダーパイプライン(SRP)ということですね。

黒河氏:
はい、そうです。

※公式ブログによる説明
https://blogs.unity3d.com/jp/2018/02/21/the-lightweight-render-pipeline-optimizing-real-time-performance/

――改めて、こちらの概要を説明していただけますか。

黒河氏:
いままではUnityで描画するときに、Unity内で完結しているため、いじれない箇所というのがたくさんありました。例えばUnityでは基本的に不透明なものは手前から奥に向かって描いていくようになっているんですね。逆に半透明なものは奥から手前に描くというルールで、それらを変えることはできませんでした。

現在は半透明だけれども手前から奥に描くといったルールを自分で決められるようになっております。カスタマイズ性が高まったことですごいものがつくれるということを紹介するため、「Book of the Dead」というデモ用の映像コンテンツを公開しております。ものすごくリアルな森林が描写されていますよね。こちらのデモは、私たちがつくったSRPを私たちが使ってみて、Unityでここまで出来ますよ、ということを伝える目的でつくられました。

――このデモはGDCで公開されたものですよね。私も当時、「Unityでここまでできるのか」とびっくりしました。Unityの新境地という印象を受けました。たしかこのデモはPlayStation 4 Proで動いていましたよね。

黒河氏:
はい、PlayStation 4 Proでの映像ですね。デモ自体はPlayStation 4 ProやゲーミングPCで、ここまでリアリスティックな絵がつくれますよというサンプルなのですが、Unityはモバイルタイトルでも非常に多く利用されておりますので、SRP自体はモバイルタイトルの事も考慮して設計しております。

SRP自体はどなたでも好きなようにいじれるのですが、そのためにはたくさんのプログラミングを書かなくてはいけなくて大変です。そこで私たちの方でテンプレートを2つ用意させていただいております。ひとつは高画質版、さきほどのデモ映像のものですね。もうひとつはライトウェイト版です。モバイルやXR(AR/VR/MR)デバイス向けに、妥協しないグラフィックのクオリティを出しながらも、モバイルやXRのパフォーマンスを考慮したものです。これまでモバイルとハイエンドを一緒の世界で無理にやりくりしていたのですが、やはり無理があったのです。そのため開発者が自由にカスタマイズできるようにして、超高画質を目指す人と、モバイルでも綺麗な絵を出したい人、両者にフォーカスしています。

――うまくすみわけできるようになったと。

黒河氏:
すみわけできるようになっていますし、私たちが提供しているのはあくまでもプログラムのテンプレートなので、さらにカスタマイズすることが可能です。高画質版の一部を取り出してライトウェイトの方に持っていくといったように。開発者にとって妥協する必要がなく、モバイルの中でもハイエンドなものをつくることや、PlayStation 4向けに開発しているけれどこの部分だけは欲しいと思った箇所を拡張できるようになっています。すみわけだけでなく、自分の思い描いた世界をつくれるようになったのです。

――そういう意味でもカスタマイズ性が高まったのですね。

黒河氏:
はい、そのとおりです。

――なるほど。GDCで発表されたハイエンド向けのロードマップには、SRP以外にもさまざまな機能が含まれていましたよね。それらについても教えていただけますか。

黒河氏:
いろいろあります。画面のリッチさだけでなく、例えば無双系のゲームのように大量のキャラクターを出したいといったときに、Unity側でパフォーマンス上での問題を抱えていたのですが、そこを改善していきました。

ほかには、新しいEntity Component SystemとC# Job Systemがございます。こちらを使っていただくと、オブジェクトをたくさん出せるようになるだけでなく、Unity側の問題であったオブジェクトを新しくつくったり消したりするときに重くなるという問題が改善されます。
https://unity3d.com/jp/unity/features/job-system-ECS

――真の意味でハイスペックに対応できるようになったということですね。一方で2Dタイトル向けの取り組みというのも一部の方は気になるところかなと思いますので、そちらも少し伺ってよいでしょうか。

黒河氏:
2Dアニメーション用の新しいシステムをつくっていたりと、新しい仕組みを用意しています。豊かな表現というよりは、どちらかというと2Dゲームを開発しやすいように、いろいろな機能をつくっています。ぜひともご期待ください。

――Unityはいろんな方向に進化しているのですね。社内スタッフとして見た進化の秘訣はなんでしょうか。

黒河氏:
ひとつあげられるのが、「Hackweek」ですね。大規模で開発者が新しいものを作るハッカソンになります。500人以上のエンジニア、ときに社内だけでなくMozillaやGPUメーカーの開発者なども参加して200以上のプロジェクトが実施される大規模な開発合宿で、ここからUnityの製品につながったものも数多くあります。

――なるほど。一体感のある開発者向けのプログラムの充実が、アイディアを引き出していると。

黒河氏:
社内の動きについて、さすがにメディアの前に出るまでには知ることは多いのですが、「こんなことしていたのか!」と驚くことは多いですね。そこが面白いところでもあります。

――多方面に進化を続けるUnityの今後が楽しみです。ありがとうございました。

 

[聞き手/写真:Minoru Umise]
[編集:Ryuki Ishii]

GTMF
GTMF(Game Tools & Middleware Forum)はアプリ・ゲーム開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント。2003年にスタートし、今年で16年目。大阪会場は2018年6月27日に開催されており、東京会場は7月13日に開催される。

 

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