不思議な魅力が垣間見えた中編に引き続き、弊社代表イバイを交えた山岡晃氏のインタビューをお届けする。後編では、山岡晃氏のクリエイティブへのこだわりや、世界についてのお話をうかがった。世界を周るようになって、考え方に変化がおとずれたという。山岡氏は、手塚プロダクション×弊社アクティブゲーミングメディアの新プロジェクト『アトム:時空の果て』に、コンポーザーとして参加している。

 
イバイ:
ところで、須田さんとはいつからのお付き合いなんですか?

山岡氏:
僕がグラスホッパーに入ってから5年ぐらいで、須田とはもう十数年ずっと知り合いではいました。仕事をしたことはないですけど、プライベートでご飯を食べたりとかはしていました。

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――山岡さんと須田さんって、意外と合わないんじゃないかな?と思うんです。どちらもすごく強いじゃないですか。

山岡氏:
そんなことはないですけど、言いたいことはわかります。でもけっこう話をしますよ。仕事以外の話もしますし。ぶっ飛んでる感というか、クリエイターらしいクリエイターというか、なかなかあの人と会話できる人はいないかもしれない(笑)。

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――山岡さんの「REVOLUCION」がすごく好きなんです。歌詞がすべてスペイン語で、ほかの作品と比べてすごく独特だなと感じます。あれはメキシコのイベントで生まれたんですか?

山岡氏:
メキシコは毎年、いろんなエージェントから何かしら呼ばれるんですよ。なぜかわからないんですけど、メキシコに行くとやたらもてはやされて、何かお返ししなきゃいけないなと思ったんです。そこで、一番いいのはメキシコのために曲を作ることかなと。「REVOLUCION」はメキシコ革命の歌で、「Day of Death」は死者の祭、それと「Reality」という3曲をスペイン語で作りました。メキシコの人たちのためだけに作りました。

メキシコは世間的には麻薬カルテルとか怖いイメージがありますけど、実際はそんなことなくて、すごくあたたかい。そういう場所に行ってないからというのもあるかもしれないけど。

あと、11月にはフランスツアーに行きますよ。

 
――なぜ自分が海外で支持されるか、その理由はご自身でわかりますか?

山岡氏:
これはですね、本当にわからない(笑)。

 
――『サイレントヒル』がきっかけ?

山岡氏:
『サイレントヒル』も大きいんですけど、なぜかわからないですね。

イバイ:
海外では本物しか通用しないですし、受け入れられないです。そういうことなんじゃないですか?

 
――知らない国に行くというのは怖くなかったですか?

山岡氏:
サウジアラビアは最初は不安がありました。でも行ってみると大丈夫だなって感じました。最近は、なんとでもなるのかなって思うようになりましたね(笑)。

 
――なんとでもなる(笑)。世界を周られることが増えて、音楽を作るとか自分のやりたいことに変化は起きましたか。

山岡氏:
自分が作ったものを、絶対に誰かが聴いてくれているんだっていう確証みたいなものをつねに感じるようになって、聴く人の表情がつねに浮かんでくるようになったのは大きいですね。自分がこうしたいというのではなくて、この人が聴いてくれるだろう、この人が遊んでくれるんだろうって考えるようになって、責任感みたいなものが生まれました。適当なことは絶対にできないですよね。その気持ちが自分をステップアップさせてくれてます。

 
――やはり世界を見ると変わるんですね。

山岡氏:
そうですね。『サイレントヒル』を通してでも、自分にしかできないチャンスというか経験なので、それを僕じゃない誰かに共有したいと最近思います。『LET IT DIE』の100バンドもそうなんですけど、できるよってことを伝えたい。

 
――100バンドの方々だけじゃないと思うんですけど、そういうことを共有してもらって、また次の人たちに共有して、世界に飛び立つ人が現れたり。

山岡氏:
世界に飛び立つのか、まったく違う発想で物を作るのか。教えてあげるというわけではなくて、感覚でそういうことができればいいなと思っています。

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イバイ:
話が変わりますが、先日とあるイラストレーターさんと話をしていたとき、イラストの仕事の依頼方法が、詳細なディテールの説明もなく、とてもずさんだということを聞きました。音楽も難しいと思うんですけど、どのような仕事の依頼の仕方なんですか?

山岡氏:
音楽もずさんですよ。音楽を口で説明できてしまうと、音楽っていらないじゃないですか。たとえばドラマとかだと、「東京トイボックス」とか、その前に「名探偵の掟」とかいくつかドラマをやってきたんですけど、そのときに監督さんは、「今回のテーマは、ドーンといって、シャーッといこう」って、何を言ってるんだかまったくわからないんですよ。わからないんだけど、ある程度会話をしていると、その人の性質がわかってくる。そうなると、「ドーン」とか「シャーッ」を自分なりに翻訳できるようになって、それを当てるということが楽しい(笑)。

イバイ:
(笑)

山岡氏:
それって、人間同士の会話のひとつみたいな、お互いのクリエイティブを出し合う楽しさがあるんですよ。詳細な説明付きで依頼されるよりも、「ドカーン!ドバーン!って行きたいんだよね」って言われて作って、相手が「そうそうそう!」ってなってくれるときの楽しさ。

イバイ:
そうやって作っていただいた山岡さんの曲を聴いた開発メンバーが、口を揃えて「何回聴いても当たり前の展開が来ない」とコメントしていました。

山岡氏:
ゲームって遊びが中心なので、ゲームをやっているときに「飽きない」とか「退屈しない」とか「耳障りにならない」ということを意識しています。どんなジャンルの音楽であっても、ゲームありきですから。

※こちらの音楽はデモ版であり製作途中のもの

――何曲くらい作られたんですか?

山岡氏:
今回のプロジェクトのマスターの日ぎりぎりまで作り続けようかなと。

 
――そんなにたくさん作れるものなんですか。

山岡氏:
ああいう作風がずっと好きだったんです。80’sというわけではないけど、シンセサイザーのロックというか、そういうのが大好きなんです。古いシンセサイザーを倉庫から持ってきて、修理に出しましたよ。

 
――わざわざ修理まで。

山岡氏:
いまどきソフトウェアでもできるんですけどね。でもやっぱり当時の雰囲気をちゃんと出したいなと思って。作り手の気持ちも違うんですよ。ソフトで代用するよりも、本物を触って作ると、作り方だとかスタンスも違いますから、結果もまた変わってくるんですよ。

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イバイ:
才能の女神に見捨てられたらどうしようという不安とかってないんですか?

山岡氏:
ぜんぜんないですよ。音楽を作ることが自分のミッションだとは思っていないので。もちろん音楽の仕事ができて幸運なんですけど。

「自分はこうなんだ、こうじゃなきゃだめなんだ」って考えて、それがフラストレーションになることってあるじゃないですか?それって無駄なことなんじゃないかなって思うので。

イバイ:
勝負曲ってありますか?これから頑張るぞというときに聴くような。

山岡氏:
勝負曲っていうわけじゃないんですけど、Visageの(ヴィサージ)の「Moon Over Moscow」が好きで、何かをしようというときにはよく聴きますね。

イバイ:
そういうときに自分の曲を聴くことは?

山岡氏:
ないですね。

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イバイ:
自分の曲を自分で聴くって、不思議な感覚になりませんか?

山岡氏:
ある程度出来上がったときに2~3時間聴いて、「なんてかっこいい曲なんだ」って思うときはありますよ。早く作らなきゃいけないんだけど、聴き入ってしまう(笑)。

イバイ:
(笑)。今まで作った曲の中で、一番出来が良かったのは?

山岡氏:
なんだろう――「Theme Of Laura」は、どこの国に行ってもみんなに良いって言ってもらえるので、特別なのかなって思います。でも、どうやって、あんなふうにできたのかっていうのは、いまだに僕もわからないんですよ。このフレーズすごいなって思いますよ、今でも。どうやって作ったんだろうって、覚えておけばよかったって(笑)。

イバイ:
まだまだキャリアは長いと思いますけど、今後は何を求めていますか?

山岡氏:
何かを作るとは思いますけど、それが音なのか、もしかしたら別の何かかもしれないです。自分が動くことによって誰かが動いたり、何かがその人から生まれたり、そういうことをやれればいいなと考えています。音楽のキャリアというものは、ぜんぜん意識していないですね。もしかしたら先生みたいな立場になるかも。わからないですけどね(笑)。

 
――ありがとうございました。

[聞き手: Shinji Sawa]
[写真: Mon Gonzalez]

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山岡晃氏も参加する、手塚プロダクション×弊社アクティブゲーミングメディアの新プロジェクト『アトム:時空の果て』は現在、MakuakeKickstarterにてクラウドファンディングを実施中。日本が誇るクリエーターがリデザインした手塚治虫作品のキャラクターを、ぜひ一度見てほしい。

 

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山岡 晃
音楽家、作曲家、プロデューサー。

SILENT HILLを代表とするビデオゲームの作曲、音響監督を行っている。

また映画「SILENT HILL」では音楽だけでなく製作総指揮も務め、全世界興行収益NO.1を獲得した。

活動の幅は広く、ビデオゲーム、映画、テレビドラマ、アニメなど多数のジャンル、プラットフォームで活躍している。

国内ではDIR EN GREYなどへのRemix提供、さらに海外のアーティストとの繋がりも深く、Nile Rodgersを始めとしたプロデューサー、昨今ではFlying Lotusとのコラボレーション、また彼自身が監督を務める映画への楽曲提供など活動の幅は広い。

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