「これは僕の廃墟願望を満たすゲーム」 押井守、『ドラゴンクエストビルダーズ』に妄想の塔を建築す 前編

3/22 読者アンケートのプレゼント当選者さまにSteamキーをお送りしました。みなさまのご協力に感謝申し上げます。

映画監督、押井守。「THE NEXT GENERATION パトレイバー」「東京無国籍少女」「GARMWARS ガルム・ウォーズ」など、近年も精力的に作品を作り続ける彼は、それほど知られていないが、じつは年季の入ったオールドゲーマーでもある。その押井監督が最近ハマったと自身のメルマガなどで公言しているのが『ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ』(PS4/PS3/PS Vita)。その熱中ぶりは「自分の世界の写真集を出したい」と語るほどで、発売から数ヶ月経った現在も、忙しい合間を縫ってプレイし続けているという。

今回のインタビューではこの『ドラゴンクエストビルダーズ』を皮切りに、風景論、ドラクエ論、ゲーム論など、独自の視点から縦横無尽に語ってもらった。普段メディアでは映画やアニメについて語ることが多い押井監督にとって、ゲーム中心のインタビューは異色かつ貴重な場と言えるだろう。押井守は『ドラゴンクエストビルダーズ』でいったいどんな世界を作り上げたのか? 本人撮り下ろしのスクリーンショットとともにお届けする。

 

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――そもそも『ドラゴンクエストビルダーズ』(以下『ビルダーズ』)にハマったきっかけはどういったところから?

押井:
このところ少し時間があって『ビルダーズ』をやる前に『IV』『V』『VI』『VIII』をもう1回ずつやってたの。僕はゲームは昔からやってるけど、8割方はドラクエなんだよね。面白いかわからないゲームをやるよりはドラクエシリーズを繰り返しやってきてる。とくに『III』とか『IV』とかは7、8周やってる。やる度に違うテーマを探すんだよ。カジノに入り浸りとか、メンバー構成を全部変えてみるとか。

――とくに『III』は自由度高いですからね。

押井:
『III』は全員武闘家とか全員魔法使いとかひと通り試した。ほかのシリーズも5、6周やってると思う。でもそれが終わっちゃった。とくに『VIII』は相当終わらないように粘って、チーズ作りもかなりやったんだけど、ともかく終わっちゃった。ただ『X』だけはやってないんだよね。ネットゲームは嫌いなんで、僕にとってあれはドラクエ×(バツ)ってやつで、あとはドラクエのスピンオフもいろいろあったけど、正直あんまり面白くなかった。だから『ビルダーズ』にもそんなに期待してたわけじゃない。ただもうやるものなくなっちゃったし、次のドラクエが出るのはまだ当分先という話だからね。

――ちなみにお聞きしたところでは『VIII』は全員素手でプレイされていたとか……。

押井:
そうそうそう(笑)。武器嫌いなんで。というか物を持ちたくなくて、そういうのは片っ端から売り飛ばしちゃう主義なの。なるべく身軽が好き。で、レベルさえ上げれば武器も防具もあんまりいらなくなるから。

――ファミコン時代のドラクエは持ち物の個数制限が厳しかったですが、その頃からの癖ですか?

押井:
うーん、逆だね。(シリーズが進んで)物がたくさん持てるようになったら物に執着するのが嫌になったというか。普通はさ、みんないろんなアイテムを欲しがるじゃん?

――そうですね。アイテムコンプとか。

押井:
で、(使うと回復効果のある)「ちからのたて」とか確かに使える物もあるんだけど、基本的にはまず魔法が嫌い。

――魔法が嫌い(笑)。

押井:
ドラクエで魔法って回復のホイミ系と移動のルーラしか使ったことない。

――(笑)。じゃあ基本はレベルを上げて物理で殴る?

押井:
そうそうそう(笑)。やっぱり魔法を使ってるとテンポが遅くなる。RPGって戦闘メインか探索メインかで遊び方が全然違うじゃん。僕は戦闘自体がそんなに好きじゃなくて、あっちこっちほっつき歩くのが好きなの。で、ほっつき歩く行動の自由を得るにはそれなりにレベルを上げなきゃいけないから戦闘する。だからルーラは必要だし、あとはホイミさえあれば街に戻る必要もあんまりない。

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――冒険というか放浪なんですね。

押井:
わりとそう(笑)。やたら町にいたがる人もいるじゃん。でも僕は町に興味がないというか、外をフラフラしてるのが好きなんで。だからこの『ビルダーズ』をやってても最近はほとんど町に戻らなくなった。

――『ビルダーズ』の場合、拠点に戻らなくてもそんなに困らないですからね。

押井:
町に戻るのは食料の補給と、あとはブロックを壊すトンカチ(おおかなづち)が足りなくなったときぐらい。いつもトンカチを16本持って出かけるんだけどさ、これをあっと言う間に使い潰しちゃう。

――このゲームで16本ということは装備欄のマックスまで全部トンカチ。

押井:
トンカチ以外何もない。

――裸にトンカチ(笑)。

押井:
さすがに裸はかわいそうなんで「かわのよろい」か何かを着させてるんだけど、盾も甲冑もつけてなくて、トンカチだけ。それと高いところから飛び下りても大丈夫な「メルキドグリーブ」という靴。あれがないと話にならない。僕はタワーというかモニュメントを建てるのが好きなんで、限界までの高さのモニュメントを建てて回ってるんだけど、メルキドグリーブがないと高いところから落下死してきりがないから。

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――『ビルダーズ』はドラクエであると同時に『マインクラフト』に代表されるサンドボックスゲームの要素が大きいわけですが、『マインクラフト』という存在は前からご存知でしたか?

押井:
名前は知ってた。僕が通ってる空手の道場にゲーム会社にいる友達がいて、買う前にその彼に「今度の『ドラクエビルダーズ』ってどう?」って聞いたんだよ。そしたら「要するにあれ『マインクラフト』のパクリですから」ってあっさり言われて(笑)。

――身も蓋もない(笑)。

押井:
彼はゲーム一筋で、日曜日になると秋葉原に行ってファミコンのソフトを探してるようなオールドゲーマー。「ゲームセンターCX」をボックスで買って、昔のカセットテープのPCゲームをやりたくて、そのリーダーを買ったりとかさ。で、いまもとある会社でゲームを作ってて、その男に言わせると『ビルダーズ』は『マインクラフト』のパクリなんだけど、僕に言わせると全然違う。

――『マインクラフト』がレゴだとすると『ビルダーズ』は説明書付きのプラモぐらいのプレイ感の違いはありますね。

押井:
『マインクラフト』って要するに大工みたいなゲームじゃん。『ビルダーズ』でもYouTubeでずいぶん動画を見たんだけど、みんなやっぱり町作りが好きなんだよね。どんな町を作ったかは山ほどあるんだけど、町以外の映像ってほとんどない。でも僕は町を作る情熱はあんまりなくて、やってるのは単純に言うと世界の改造なの。風景を作ることが楽しい。

――ちなみに押井監督がアニメや実写映画で描きたい風景がある場合は、どういった形で固めていくものですか?

押井:
最初にデザイナーに言葉で「だいたいこんな感じ」と伝えたり、自分でつたないラフ絵を描いたりとか、そういうことだよね。あとは上がってきたものを見て「ここはもう少しこうなんだけど……」ってやり取りのなかでだんだん近づけていく。だからまあ、手間暇はかかるよ。最終的には色までつけなきゃいけないし、劇中でどういうときにそれが出てくるのかも考えなきゃいけない。朝なのか夕方なのか夜なのか、雨が降っているのか、風があるのか。

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――なるほど。今回の『ビルダーズ』はサンドボックスゲームを日本人向けにかなり遊びやすくアレンジしている印象ですが、ドラクエの要素はやはり欲しかった部分ですか?

押井:
そうだね。たぶんそのバランスはね、作り手も相当考えたであろう痕跡が随所にある。建てるだけじゃなくてドラクエらしいミッションがいっぱいあって、町の人から「あれして、これして」って言われるし。で、町のレベルを上げてミッションを全部クリアするとボスが出てきて……とそこで章が終わるようになってるわけだ。でもさ、そこで次の章にべつに行かなくてもいいんだということに気づいちゃったわけ。

――(副題が)『アレフガルドを復活せよ』なのにアレフガルドが復活しない(笑)。

押井:
興味ないし(笑)。途中からメルキドをいじり始めたら、ストーリーにまったく興味なくなっちゃって、モニュメントを建てたら風景が変わっちゃったので「あ、絶対こっちのほうが面白いわ」って。

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――サンドボックスゲームの一番中毒性のあるところですね。フリービルドモード(知られざる島)もありますけど、そちらはプレイされないんですか?

押井:
僕もね、1回そっちに行ってみたんだけど、なんかピンとこなかった。だから(次章の)リムルダールでは疫病で病人がウンウン唸ってるんだけど、リムルダールは全部ほったらかしで、とにかくメルキド改造に専念することに決定したの。

――住民は困ってるけど、押井監督の満足はアレフガルドの復活と別のところにあると(笑)。その世界を改造する感覚は、例えば『シムシティ』のようなシミュレーションゲームともまた違う感覚ですか?

押井:
ちょっと違う。『ビルダーズ』では町の上に空中庭園みたいなのを作ったんだけど、そこから見渡したときにどういう風景が見えるかとか、海岸の向こう岸がどう見えるかとか、そういうことを考えて風景の改造をやるんだよね。向こうの山の稜線にのろし台をたくさん作ってみたりとか、モニュメントを建てて、その高さが出るように全部周囲をえぐって地平線を下げたりとかね。そうするとひとつの情景が演出できる。それを眺めて「なんていい画なんだろう」と悦に入るのが好きなんで(笑)。このゲームはアングルが全部で自分で決められるんで、一番画になるアングルを探すんだよね。僕は質感じゃなくてシルエットで勝負してるんだけど、黄昏れ時の情景をメインに考えてるんだよ。で、最初の章のメルキドは落日がすごく綺麗にできるんで、いまだに延々とやってる。

 

――そこはやはり映画監督ならではというか。確かにメルキドってもともと城塞都市って設定ですし、昔文明があったであろう場所というシチュエーションですよね。

押井:
そうそうそう。そういうコンセプトでやってるの。だから僕がやってるのは先史文明の廃墟を自分の手で作り出すこと。建築の途中で崩れかけたようなところをあえて作ったりとか、先史文明のパターンを自分で考える。いわゆるドラクエの中世ヨーロッパの世界とはちょっと違う様式で、あちこちに垂直のモニュメントを建ててる。

――オベリスクみたいな?

押井:
うん。オベリスクを山ほど作って、これだけは作るのがうまくなった(笑)。目もくらむ高さで高所作業をすると、最初は手が震えちゃって何度も落っこったんだけど、もう慣れたね。そういう先史文明のパターンを作り出して、原初の情報量が残っている周囲の山とのマッチングを考える。で、その先史文明の連中はとっくに滅んじゃって、かなり文明のレベルが後退した世界の中で遺跡だけが放棄されてる、そういう世界を作ってるわけ。あとは水が引っ張れるところには引っ張りまくって、ありとあらゆるところを水没させまくった(笑)。最近ちょっと水没のパターンにはまってて、これがいいんだよね。石畳を敷き詰めて、そこに水を引いて、周囲に白いタワーが積んであって、夕方になると水面に写り込んで、これがすばらしく綺麗で。そこにいるのはスライムがパチャパチャしてたり、ドラキーが飛んでるぐらいで、無人の哀切な感じがものすごく出てる。

 

――無人の風景とは言え、やっぱり動物ぐらいはいたほうがいいですか。『ビルダーズ』の場合はモンスターですけど。

押井:
うん。ドラキーがいるだけで全然違う。遺跡感が出る。本当は鳥がいたらもっといいんだけどね。

――『ビルダーズ』の場合、鳥らしい生き物ってキメラとかですからねえ。

押井:
まあ、スライムとドラキーだけでもいい。がいこつとかは邪魔なんで出ないでほしい。あと作業中に次々とモンスターが出てくるわけなんで、これと戦いながら作るのがなかなか大変。アクションは苦手だけど剣とかに持ち替えるのはかったるいんで、だいたいトンカチで叩き殺す。だからトンカチの消耗がすごくて、いま鉄不足。

――『ビルダーズ』の本編で鉄鉱石って有限なんで、どんどん掘っていくとハンマーが壊れて、そのハンマーを作るための鉄がなくなるんですよね。

押井:
そうそうそう。そういう理屈なんだよね。銀とか金とかも掘れるけど使い道ほとんどないしさ。金は掘り尽くしちゃったけど、メルキドで金って「えっちなライト」以外に使い道ないから。

――使い道が増えるのは後半の章ですね。

押井:
でも先の章にはアイテムを持ち越せないじゃん。なのに銅鉱石とかあると、よせばいいのについつい掘っちゃうんだよ。だから銅のインゴットが気がついたら何百本もあってさ。倉庫ふたつ丸ごと銅のインゴットなんだよ。

――(笑)。鉄鉱石になるモンスターもいないですからね。資源管理が必要なゲームじゃないですけど、倉庫に大量に溜め込んでたりするとつい資源問題まで考えちゃうようなゲームですよね。

押井:
それはある。途中で気がついたんだけどこれはエンパイアビルダーズ、つまり帝国主義なんだよ。拠点の島以外に旅の扉で行ける島がいくつかあるけど、要するにこれは植民地だよね。そこに行って野生のモンスターを倒しまくって、資源を収奪して帰ってくる。それで町をリッチに作り上げる。「あ、要するにこれは帝国主義なんだ」と。エンパイアビルダーズというのは、かつてイギリスの植民地を作ったジェントリたちの総称で、有名なオックスフォード大学とかは、もともとエンパイアビルダーズの養成校なんだよね。途中でそういうゲームなんだと気がついて「これは帝国主義者になるしかないな」と。

――帝国主義者になるしかないと(笑)。

押井:
で、徹底的に収奪してやろうと。でも収奪していくだけでは満たされないんで、じゃあ何をするかなんだけど、町を作ることの限界にはすぐ行っちゃったわけ。このゲームの町ってある限られたエリア内に決まってるから、どんなにリッチに作ったって知れてるわけだ。広げて作る意味があんまりないんだよ。

 

――つまり手付かずの自然が残る植民地があって、そこから文明を築く喜びを経て、その文明が滅んだ後までも自分の思うままにしてしまえるという、人類が何千年もかかって駆け抜けてきたものを『ビルダーズ』で体験しているわけですよね。

押井:
僕が魅力を感じるのもたぶんそこだろうね。つくづく人間って貪欲にできているなというか、僕にとっては廃墟願望を充足させるためのゲーム。だからとりあえず資源が尽きるまでやってみようかなというさ。

――じゃあまさにかつて西洋人がアメリカやアフリカを制服していった歴史のような。

押井:
本当にだから収奪者。コンキスタドール。征服者。だってそういうふうにしか見えないもん。ばくだんいわはダイナマイト(まほうの玉)の材料にしか見えないし、そういう意味で言えば徹底的に帝国主義の尖兵になるしかないの。じゃないと楽しくない。そこの自然環境のことなんて考えてもさ。だからそれこそ宮さん(宮﨑駿)が見たら激怒するような……(笑)。

――(笑)

押井:
もう片っ端から木を切り倒してるからさ。木を見たらただちに切り倒すからね? だから原木も余っちゃってるんだけどさ。

――ジブリアニメで言えば、大自然を全部ラピュタの雷でぶっ壊してるみたいなもんですからね。

押井:
そうそうそう。だから「(天空の城)ラピュタ」で言えば『ビルダーズ』はあのラピュタ自体を作った連中の話だよ。ただあんまり木を切りすぎると風景が単調になっちゃうので、最近は残すようにしてるんだけど、最初は切って切って切りまくったから。草のブロックを刈るとドラキーが湧いてこなくなるかなという心配もしたんだけど、それはなかった。ドラキーが湧いてくる現場も見ちゃったし。食料はキメラのたまごで目玉焼き作ったりとか、アルミラージでステーキを作ったりとか、モンスターからある程度食料に変換できる。だけど鉱石はなくなる。深刻なのは鉄鉱石がなくなったら終わりなんでさ。鉄の需要がすさまじくて、まず真っ先に鉄鉱石が切れそう。最初は資源を掘るのもそのまま穴を掘ってたんだけど、これが結構危ない。出てこれなくなったりするんだよ。だから最近やってるのはいわゆる露天掘り。山を丸ごとすり鉢状に掘っていく。そうすると風景が変わっちゃうんだよ。山が低くなったりとか丘が消えちゃったりとかね。そのときハタと気がついたわけ。風景を改造したほうが面白いなと。で、露天掘りが一番楽で、掘ると膨大な土くれが溜まるわけだ。「どうすんだこれ」ってなるんだけど、世界の(ブロックの)総量をあまり変えたくないなと思って、最初は倉庫に残してたの。でも最近は容赦なく削除してる。

――倉庫にブロックを99個ずつスタックしても限界がありますからね。どんどん押井監督の世界から物質が消失していっているという(笑)。

押井:
そうそう(笑)。

――タレントの伊集院光さんも『ビルダーズ』にハマって、最後は地形を更地にして、すべてのブロックを無にする作業に没頭し始めたそうで(笑)。

押井:
(笑)。だからね、世界の改造。情景を作り出す。で、ブロックの種類がもっとあったらいいかと言うとそれはべつかもしれない。ブロックの積み上げ、切り崩しだけで、ある程度ブロックを置ける高さも決まってるから、高さを出すために下のところを全部掘り下げて、水を引いたらもっといいなとかね。あとこのゲームをやっててわかったのは山の上に乗って遠くを見渡すときに何が邪魔になるかってさ、高さなんだよね。

――高さですか?

押井:
みんな単純に高いところに登れば眺望がよくなると思ってるわけだよね。これはとんでもない間違いで、むしろ(高さは)下げなきゃダメなの。下げなきゃ視点は広がらない。だから断崖はどんどん下げる。そうすると眺望がどんどんよくなる。そのことに気がついてから、山のてっぺんはどんどんフラットにしちゃった。そのほうが画になるアングルがどんどん増える。

 

――そういう情景をとらえる感覚は過去の映像作品とも共通するものですか?

押井:
あるんじゃない? 結局はレイアウトのセンスで、個々のディテールをどう作るかより全体のレイアウトをどう仕上げるかがメインだから。アニメでロケハンするときもそれはもちろん考える。「(GHOST IN THE SHELL /)攻殻機動隊」はその典型だったけど、香港にロケハンに行ったときにたまたま夕方すごい豪雨が降ったの。そのときに「この道路が全部運河だったらどう見えるんだろう?」と思ったんだよね。それでああいうベネチア化した香港みたいな世界にした。僕の場合アニメのロケハンってそういうもので、実写映画のロケハンともまた全然違う。実写映画のロケハンはそこで実際の撮影をする段取りのためにやる。この場所だったらどこに電源車を停めるかとか、どこに撮影許可をもらいに行けばいいかとかね。でもアニメのロケハンというのは妄想の依代を求めて行ってるわけだから、常に目の前の風景を頭の中で改造して見てるわけ。写真もたくさん撮るけどモノクロで、カラーじゃ絶対に撮らない。だって色はあとで変えなきゃいけないというか、変えて当たり前だからね。

――「ここをモデルに使おう」という場所で頭の中でぐるぐるカメラを回して情景を探ってるわけですよね。

押井:
そうそうそう。必要ならヘリも飛ばすけど「上から見たらこう見えるだろうな」というのもその場である程度想像する。夜はどうだろうというのも、実際に夜に行くことも大事だけど、想像するほうはもっと大事。そこで存在しないものを加えてみたり、あるものを引いてみたりする。それはだからその風景、山なら山に実際に登ってみないと、ここをどう改造しようかというアイデアは出てこない。都市開発みたいに設計図を考えて作ってるんじゃなくて、その場に立ったときのインスピレーションで「じゃあここに何を置こうか」と考えるわけだからね。『ビルダーズ』でもタワーのシルエットがどう並んで見えるかはそのタワーに近い場所では確認できないから、シルエットがどう見えるかは町に戻って確認する。「ああ、ちょっと足りなかった」とか「あそこの稜線はもっと下げてもいいな」とかね。そこからまた現場に走っていって、また崩して、またキメラの翼で町に戻って確認して……というその繰り返し。カメラの高さをどこにしようかとか、人物をどこに置けば画になるかとか、ここにちょっとシルエットが欲しいんだとかね。で、それは時刻によっても刻々変わっていくから。断崖に建てたモニュメントも岩だけで作っちゃうと夜は何も見えない。これは照明を作らないとダメだというので、モニュメントの裏側の崖にたいまつをダーッと並べてたの。そうすると間接照明が当たってそのモニュメントが浮かび上がってくる。そういう仕掛けというか、照明も考える。だから結構いまはね、たいまつの需要が激しい(笑)。

 

――最近のゲームにはアップデートもあるので、実現するかどうかはさておいてスクウェア・エニックスへの要望がもしあれば。

押井:
やっぱり金とか銀とかあまり使わない鉱石の使い道を考えてほしいんだよ。特殊なアイテムとかはいらない。銀のハンマーでもなんでもいいから、とにかくトンカチが絶対的に足りない。あとはできることならスクリーンショットの写真集を出したい。書籍じゃ無理だと思うからデータでもいいんだけど。だってもったいないもん。それで売っちゃったりするとスクエニ的に問題になるだろうから、例えばどこかネットで公開するとかね。

――そうですね。今回の記事にスクリーンショットの一部を掲載するので、まずは読者のみなさんに押井監督の世界の一端を感じてもらおうと思います。

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引き続き後編では押井監督のドラクエシリーズへの思い入れのほか、度々押井作品の劇中にキーワードが登場する『ウィザードリィ』、また自ら制作に携わったRPG『サンサーラ・ナーガ』の思い出などについても聞いていく。

 

[聞き手 Tomohiro Noguchi]
[写真撮影 Shuji Ishimoto]
[協力 Production I.G、押井守メールマガジン編集部]

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