人気沸騰中のゲーム『Hole.io』に“アイデアを盗られた”と主張するインディー開発者が嘆きの声。「穴になる」というコンセプトが酷似

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モバイルゲーム『Hole.io』が、全世界で話題沸騰中だ。日本やアメリカ、カナダやイギリスやイタリアなど世界の主要国にて、無料ダウンロードランキングでトップ5圏内にランクインしており、世界的に人気を博している。意欲的なコンセプトが評価され、多くのプレイヤーに遊ばれているようにも見えるが、今回のヒットの背景には複雑な問題が絡んでいるようだ。

『Hole.io』

『Hole.io』はVoodooから配信されている、iOS/Android向けの基本プレイ無料のモバイルゲームだ。プレイヤーは、“穴”となり街中に存在するさまざまなオブジェクトを飲み込んでいく。ゲーム開始時点では穴は小さく、人や消火栓といったコンパクトなオブジェクトしか飲み込めない。しかし、これらのオブジェクトを飲み込むうちに、穴は拡大されていき、たちまち車や家など巨大な物も飲み込めるようになる。オブジェクトの大きさによってポイントが決まっており、大きな物を飲み込むほどポイントが高まり穴も大きくなっていく。ゲームにはリアルタイム対戦が採用されており、他プレイヤーもまた穴を大きくしようとしている。彼らと競いながら、どれだけ穴を拡げポイントを稼げるかというのが本作の目的となる。

実際にプレイしてみたが、穴を落としていくプロセスはシンプルに爽快だ。ちょっとした物理演算の要素も導入されており、傾きを変えることで無理やり大きなオブジェクトを飲み込むこともできる。ひとつのオブジェクトを穴に入れることも、多くのオブジェクトを飲み込んでいくのも等しく楽しい。Voodooタイトルということで、広告山盛りな点は若干気になるものの、ひたすらオブジェクトを飲み込んでいくゲームプレイはシンプルに楽しい。ただ、この「穴に物を落とし大きくしていく」というテーマは、以前にもほかの作品が注目を集めていた。

注目を集めたタイトルとは、インディーゲーム『Donut County』だ。『Donut County』とは、個人開発者Ben Esposito氏が2012年より開発する「穴」になるアドベンチャーゲーム(関連記事)。PS4/Xbox One/PC/モバイル向けの発売を予定している。プレイヤーは穴となり、移動しながら物・人・木々・建物を飲み込んでいく。物を飲み込むことで穴は広がっていき、さらに大きな物を飲み込めるようになる。穴に飲み込んだものは吐き出すことも可能で、物同士を組み合わせてパズルも解くこともある。こうした説明を聞いてもわかるように、『Donut County』と『Hole.io』のコンセプトは酷似している。2015年のGDCにて正式に発表されて以来、『Donut County』は数多くのゲームメディアに取り上げられ、脚光を浴びた。このタイミングでリリースされた同じコンセプトのゲームが、『Donut County』を知らないとは考えづらい。

こうした事態を受け、『Donut County』の開発者Esposito氏が自身のTwitterにて声明を出した。氏は、自身のタイトルのクローンゲームである『Hole.io』がApp Storeのトップを飾っていると報告。5年をかけて人々に訴求してきたアイディアが盗作されたことに無念さを見せつつ、自分にできることは『Donut County』を完成させることであると述べている。また、『Hole.io』とコンセプトは似通っているものの、こちらはカジュアルゲームであることに対し『Donut County』はストーリーベースのパズルゲームであると違いがあることも強調している。5年かけて作っているユニークでユーモアにあふれ、苦しみながら生み出している手作りは真似できないだろうと、“本物”であることに自信を見せている。

一方で、氏は『Hole.io』について語るつもりはなかったとしながら、Voodooがこうした動きを見せていることを懸念している。Voodooは、ゴールドマン・サックスから200億円の出資を受けた大手パブリッシャーだ。シンプルながらとっつきやすい無料アプリを大量にリリースし、広告収入やユーザーの行動トラッキングなどで大きな利益を得ている。企画案を積極的に出し、継続率をテストして、ゲームをパブリッシュするという、彼らのアルゴリズムに基づいた開発アプローチは、たくさんの成功作品を生み出している。だが、こうしたアプローチは、『Hole.io』のような模倣品制作を他の開発者に推奨することにもなると、Esposito氏は不安視しているのだ。

プレイヤーが穴となり、物を飲み込む。そしてそれを大きくしていくという考え自体は、Esposito氏だけしか発案できないアイディアとはいえない。しかし、『Donut County』は少なくとも「穴」というアイディアをゲームに落とし込み、多くの注目を集めて需要があることを証明した。同じようなコンセプトの“後発”作品である『Hole.io』が世界的なヒットを記録しているのを見れば、Esposito氏が複雑な心境を抱えるのは理解できるだろう。ただ、『Hole.io』自体は極めてシンプルなゲーム性となっており、飽きが来るのは比較的早い。『Donut County』が多くのプレイヤーを魅了したシステムを掘り下げているなら、うまく差別化しアピールできるかもしれない。

近年、インディーゲームの盗作とされる事例が多く生まれてきている。『Yandere Simulator』では、同じようなアセットを使った、美少女が学校で暴れるというテーマのモバイルゲームが数多く生まれており、開発者の気を滅入らせている。『Death Trash』開発者もまたSteamゲーム『FukTopia』に世界観や設定を盗用されたと訴えかける事件があった(関連記事)。ただし、『Hole.io』も含めて、法廷で決着をつけなければ、正式に盗作を認定することはできない。ユニークなアイディアで注目を集めたインディー作品の開発が長期化すれば、似たコンセプトの作品がリリースされる可能性は高まっていく。Esposito氏が決意として語ったように、そうした作品においては、完成させることこそが最大の盗作対策になるのだろう。

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